ニュースリリース

産学官の連携で仮設住宅居住者の健康づくりを支援住環境の変化による健康課題に対し、実績ある健康づくり支援プログラムを提供

経営/事業

国立大学法人筑波大学
Smart Wellness City 首長研究会
株式会社 つくばウエルネスリサーチ
オムロン ヘルスケア株式会社
特定非営利活動法人つくば臨床検査教育・研究センター
トッパン・フォームズ株式会社
日本アイ・ビー・エム株式会社
三菱化学メディエンス株式会社

筑波大学(学長山田信博)は、人間総合科学研究科、附属病院、アイソトープ総合センターが中核となって、Smart Wellness City首長研究会*の会員である福島県伊達市、新潟県新潟市、三条市、見附市、茨城県つくば市、民間のつくばウエルネスリサーチ(社長・久野譜也、筑波大学大学院人間総合科学研究科 教授、以下TWR)、オムロン ヘルスケア*、つくば臨床検査教育・研究センター*、トッパンフォームズ*、日本IBM*、三菱化学メディエンス*をはじめ、インテル*と協力し、仮設住宅への入居者における住環境や生活環境の変化で自宅内に閉じこもりがちになることにより発生する健康課題に対して、医と健康の両視点から「統合健幸ステーションを設置し、ICTを活用した遠隔による体調モニターと科学的根拠に基づく個別の健康づくり支援プログラム(e-wellness)を提供する事により、仮設住宅入居者の健康づくりを支援していきます。

また、放射線量蓄積に関する住民不安の払しょくについての取組に対しても併せて支援致します。

今回まず、福島県相馬郡飯舘村の方々を対象とした福島県伊達市*内に建設される仮設住宅に入居する126世帯の方々を対象に、入居が完了後(9月~10月)から健康支援を致します。具体的には、成人入居者全員に対して、筑波大学発VBのTWRが全国の自治体との健康づくり事業で体力年齢の若返りや、医療費の抑制効果に関するエビデンスを持つ新e-wellnessシステムを利用して、高齢な方や虚弱な方でも対応可能な運動と食事に関する個別プログラムを提供します。また、遠隔支援システムを使用して筑波大学スタッフが、入居者の血圧モニターを毎日行います。課題がある入居者が見つかった場合には、直ちに現地の専門スタッフに連絡をとり、ケアを行います。

仮設住宅内のコミュティ形成を重視し、入居者同士が相好に関わり合いながら健康づくりを進めていける環境をサポートします。さらに、月2回程度の居住者向けのセミナーや健康相談会を開催し、そこにはSmart Wellness City首長研究会のメンバーであり、総務省地域ICTプロジェクトで連携実績のある見附市、新潟市、三条市(以上新潟県)、茨城県つくば市が専門職員を派遣し、現地のニーズに対応していく体制をとります。また筑波大学も、現地のニーズに基づき、専門の教員やサポートするための学生を派遣します。既に開始していますが、放射線量蓄積に関する住民不安の払しょくについても、大学の専門の教員、スタッフがサポートしていきます。

背景

今回の仮設住宅への居住期間は長期に渡ることが見込まれています。そのため、早期に個々の住民の健康課題の把握と健康課題を生じさせないための長期に渡る健康支援システムの構築が危急の課題となっています。
仮設住宅入居者の多くは、長期に渡る避難生活による閉塞感や孤独感、精神的・肉体的疲労、また、生活不活発病(生活が不活発なことが原因で、心身の機能のほとんど全てが低下すること)の恐れなど多くの健康課題を抱えています。特に従来から健康不安があった住民や高齢者は、健康状態の把握や適切かつ持続的な健康管理や指導が必要です。

TWRは、健康推進の視点から、個別運動・栄養プログラム提供・管理システム「e-wellnessシステム」より、全国の自治体・企業健保等において約5万人に対してプログラムを提供し、すでに地域や職域の健康づくりでの成果を上げてきています。
また、平成21年11月に複数の先進的な自治体の首長と筑波大学が連携して「Smart Wellness City首長研究会」を発足させ、市民が生涯を通じて健康で生きがいを持って、安心・安全で豊かに暮らすことができるまちを目指し、ウエルネス(=健幸)を中心政策とした新しいビジョンづくりと社会実験を進めております。
本プロジェクトでは、これらの実績およびノウハウを活用し、ICTを活用した遠隔による血圧モニターとe-wellnessによる科学的根拠に基づく個別の健康づくりプログラムを提供する事により、仮設住宅入居者の健康づくりを支援し、二次災害死を防ぐだけではなく、住民の生活習慣予防及び寝たきり予防に貢献していきます。

健康づくり支援プログラムについて

今回、福島県伊達市内に建設される飯舘村の仮設住宅支援健康づくりプログラムでは、筑波大学人間総科学研究科の久野譜也教授がプロジェクトリーダーとして、支援スキームの構築を伊達市などの現地スタッフの協力を得ながら、「統合健幸ステーション」を設置し、総務省の地域ICT利活用広域連携事業の成果等を活用した、最先端の健康支援を行います。具体的には、統合健幸ステーションにICT機器を設置し、参加者がステーションにいる指導員や遠隔地にいる専門家より健康指導を受けることができるようにします。健康指導では、参加者の身体、体力の状況に応じて、科学的な根拠に基づいた個別の健康づくりプログラムの提供と継続支援を目指します。
また、筑波大学附属病院(病院長:五十嵐徹也理事) では、予防医療の観点で不安定な居食住、精神環境の中での血圧値異常による早期警告発信や、アイソトープ総合センター(センター長:松本 宏教授)が放射被曝への対応などを実践していきます。

主な実施プログラムは以下を予定しています。

1. 仮設住宅地域の設計アドバイスと統合健幸ステーションの設置

  • 健康維持のために自然と外出し、コミュニティが形成されやすい仮設住宅地域の設計をアドバイスします。
  • 以下の目的のために統合健幸ステーションを設置します。
    • -実際の健康・運動活動に関して住民同士の会話の場(コミュニティの形成)
    • -住民一人ひとりの健康指導の場(住民と健康コンシェルジュとの対話)
    • -健康の専門家より健康指導を実施する場
    • -健康、運動活動の記録の場(専用機器やIT活用の場)

2. e-wellnessシステムと機器の無償提供

  • グローバル標準であるコンティニュア規格に準拠した、歩数計、血圧計等を配布
  • e-wellnessを活用するために必要なIT機器、体重体組成計を統合健幸ステーションに設置
  • コミュニケーション用テレビ電話、インターネット接続環境、公衆電話等

3. 住民認証の仕組みの提供

  • 個人認証ツールとしてICカード、RFIDと標準化された近距離通信規格を用いてクラウドサービスを提供

4. 健康づくり支援プログラムの提供

  • 健康づくり支援プログラム開始時と6か月時に健診と健康相談を実施
  • e-wellnessシステムや遠隔血圧モニターシステムを活用して、日々の体調及び個別プログラムの進捗状況を遠隔(筑波大学とTWR)で観察し、定期的に現地専門職が個別指導を実施
  • e-wellnessを活用した健康教室の定期的開催、及び、月2回の保健師、カウンセラー、管理栄養士等による相談会を開催

協力団体・企業の役割

【インテル】
インテル株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:吉田和正)
コンティニュア準拠製品に関する支援や情報の提供

【オムロン ヘルスケア】
オムロン ヘルスケア株式会社(本社:京都市、社長:宮田喜一郎)
血圧計や体重体組成計、歩数計の提供

【トッパンフォームズ】
トッパン・フォームズ株式会社(本社:東京都港区、社長:櫻井醜)
個人認証ツールとしてICカードとRFID、NFC(Near Field Communication:複数の非接触ICカード技術の標準化された近距離通信規格)を提供

【日本IBM】
日本アイ・ビー・エム株式会社(本社:東京都中央区、社長:橋本孝之)
e-wellness向けのクラウド・システムの運用とデータ統合・解析技術を活用した個別の指導プログラムの提供を支援

【三菱化学メディエンス】
三菱化学メディエンス株式会社(本社:東京都港区、社長:吉原伸一)
下記、つくば臨床検査教育・研究センターとともに、筑波大学との産学連携による臨床検査拠点(つくば i-Laboratory)を形成し、この拠点を活用し、入居者の健康状態を客観的に把握するための定期的な健診で必要な血液や尿など、臨床検査の側面から支援・協力

【つくば臨床検査教育・研究センター】
特定非営利活動法人つくば臨床検査教育・研究センター(茨城県つくば市、理事長:鈴木悦)
(役割は上記、三菱化学メディエンスと同じ)

【福島県伊達市】
福島県伊達市(市長:仁志田昇司)
伊達市では、本年9月から10月にかけて、126戸の仮設住宅が建設される予定で、入居者の大半は、福島県相馬郡飯舘村の住民です。
伊達市は「Smart Wellness City 首長研究会*」に加盟し、「e-wellnessシステム」を活用した健康づくりに取り組み、大きな成果をあげています。

【Smart Wellness City 首長研究会】
Smart Wellness City 首長研究会(会長:久住時男、新潟県見附市長)
全国17市が参加し、個々人が生涯を通じて健康で生きがいを持って、安心・安全で豊かに暮らすことができるまちづくりを進めるため、ウエルネス(=健幸)をまちづくり政策の中核に置き、市民誰もが参加し、生活習慣病や寝たきり予防を可能とするまちづくりを目指す研究会。2009年11月に発足。
Smart Wellness City 首長研究会・発起人会共同宣言