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2013.04.10

vol.118 「ドミノ骨折」を運動で予防しよう

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ドミノ骨折って何?

Vol.118 「ドミノ骨折」を運動で予防しよう 歩いていて、理由もないのによろけたり、つまずいたりしたことはありませんか。あるいは、靴下をはこうとしてバランスをくずしたり、階段の途中で足が痛くなったりしたことは?
もしそんな経験があったら、転倒による骨折、そしてドミノ骨折に注意する必要があります。ドミノ骨折とは、一度の骨折をきっかけに次々と骨折を起こすこと。しかも、背骨や大腿骨(太ももの骨)といった、日常生活をおくる上でもっとも重要な骨が、気づかないうちに骨折の連鎖を起こすのです。
背骨や大腿骨が折れているのに、気がつかないの? そう驚かれる方もいるでしょう。でも、骨粗しょう症による背骨の骨折では、3人に1人が痛みを感じることなく知らずに骨折しています。
しかも高齢者の場合、背骨や大腿骨を骨折すると、3人に1人が1年以内にまた背骨や大腿骨を骨折する、つまりドミノ骨折を起こしていることもわかってきています(※1)。
ドミノ骨折を起こすと、ある日突然からだが動かなくなることも少なくありません。日常生活に介護が必要となり、さらには寝たきりになる可能性も高くなります。先進国の中でも高齢者の多い日本では、近年ドミノ骨折が目立つようになり、その予防が重視されています。
「でもドミノ骨折は、高齢になってからの話でしょう」…中年世代には、そう思う方も多いかもしれません。たしかに骨折そのものは高齢者に多いのですが、その兆候はすでに中年期に始まっています。
どんな人がドミノ骨折を起こしやすいのか、予防のためにはどんなことが大切なのかを知っておきましょう。

(※1)東京慈恵会医科大学外科臨床研究班(骨代謝班)、日本整形外科学会などの調査による。

運動機能の状態を知るには

中高年の骨折の原因といえば、だれもがまず「骨粗しょう症」を思い浮かべるでしょう。骨粗しょう症は骨折の要因ですが、もっと直接的な原因があることをご存知でしょうか。
それは「転倒」です。
転倒すると、筋肉の圧力や床などに倒れた衝撃力により、骨には非常に大きな外力が加わります(※2)。その外力の大きさが、骨の強度を上回ると、背骨や大腿骨のような太い骨でも簡単に折れてしまうのです。
そのため、転倒をいかに防ぐかが、最初の骨折、そしてドミノ骨折を予防する重要な要素であることが指摘されています。
その転倒との関係で注目されているのが、「運動器不安定症」です。運動器とは、私たちが活動するときに使う骨、関節、筋肉、腱、神経などの総称です。これらの一部になんらかの障害があると、立ち居振る舞いや歩行などが不安定になりがちです。たとえば骨量が正常であっても、筋力や神経機能が低下しているとバランスをくずして転倒しやすくなります。
運動器の機能は、加齢とともにゆっくり低下するため、自分では気づきにくいのが難点です。転倒したり、骨折して初めて「運動器不安定症」と診断されることも少なくありません。
そこで最近、自分の運動器の状態を知る目安として推奨されているのが、「開眼片足立ちテスト」です。目を開けた状態で片足立ちの姿勢をとり、15秒以上できない場合は筋力やバランス感覚の低下が疑われ、転倒・骨折のリスクが高いとされます。このテストは自宅でもできますが、高齢者の場合はよろける危険性があるので、手すりのある場所などでやるようにしましょう。

また、次のようなケースも、運動器の衰えのサインとなります。
・椅子から立ち上がるとき、机などに手を添えないと不安(よろける)。
・階段を早く下りるのが不安(足がもつれる)。
・小さな段差や平地でつまずくことがある。
・歩く速度が遅くなった。

(※2)転倒時に骨に加わる外力は、転倒する方向やその人の体型などによって異なります。たとえば大腿骨と転倒方向の関係では、後方に倒れると全体の外力(筋肉の圧力や衝撃力などの総和)が大きくなりますが、側方に倒れて床などに太ももや腰が直接当たると、衝撃力が非常に大きくなります。また、倒れるときにひねりが加わると、骨にかかる外力はさらに複雑なものとなります。

骨や筋肉を強化し転倒を予防

転倒や将来のドミノ骨折を予防するには、どのような運動が効果的かを知っておきましょう。
加齢による運動器の機能障害には、大別すると「骨の老化、筋力の減衰、バランス感覚の減退、柔軟性の低下」などの要因があります(※3)。

■骨の老化を予防する
骨は、負荷(体重)をかけることで骨量が増え、強化されます。ウオーキングやジョギングでも一定の負荷はありますが、縄跳びや階段昇降を加えることで効率良く骨の強化を図ることができます。
ただし、縄跳びは膝や足首などへの衝撃が強いので、運動経験の少ない人は縄を使わず、軽くからだを上下(ジャンプ)させることから始めましょう。当初は10回程度、目標は50回程度(運動経験がある方は100回~200回程度)です。
60歳以上の男性、更年期以降の女性は、骨量や骨質の検査を受けてから始めるほうが安心です。高血圧などで縄跳びに不安がある場合は、階段を上り下りするだけでも骨に負荷をかけることができます。
骨に負荷をかける理由は、カルシウムの沈着をよくするためです。したがって、食生活でも乳製品や小魚類をしっかり摂ることを忘れずに。

■筋力を維持する
筋力は、運動をしないでいると加齢とともに衰えます。たとえば、膝関節の周囲にある膝進展筋群の筋力は、20歳代を100とすると40歳代・50歳代では80%に、60歳以上では60%程度にまで減衰します。すると膝痛を起こしやすくなり、バランスをくずしたときなどには痛みに耐えられず転倒することも少なくありません。
下半身の筋力を維持するための簡単な運動は、スクワット(屈伸運動)です。スクワットは、膝を曲げる角度や回数などで運動強度を加減できるので、どの世代にも適しています。また高齢であっても、筋力を維持する効果がみられるので、続けておこないましょう。
スクワットのコツは、膝を曲げるとき前かがみにならないこと。両手を前に伸ばして水平を保ちながら、ゆっくりとした呼吸に合わせて膝を曲げ伸ばしします。中年の方なら50回程度、高齢の方なら30回程度を目安に、朝晩2回やるようにします。慣れてくると、100回程度はできるようになります。膝痛や腰痛がある方でも、スクワットはリハビリになりますが、痛みが強い場合は無理をしないことも大切です(※4)。

(※3)その他に神経や腱、内臓などの機能低下によるものもありますが、ここでは自分で鍛えやすい要素を中心に紹介します。

(※4)肥満にともなう膝痛の場合は、スクワットが逆効果になる可能性もあります。医師に相談し、食事療法などと一緒に自分に適した運動をする必要があります。

バランスや柔軟性で転倒を予防

転倒のきっかけは、よろけたり、つまずいたりすることです。その背景には、加齢によるバランス感覚や柔軟性の低下があります。

■バランス感覚を高める
バランス感覚には、内耳や脳の器官、視覚、皮膚感覚、自律神経などさまざまな要素が複雑にからみあっています。それらを1つ1つ鍛えることはできませんが、転倒予防のための簡単なバランス運動があります。それは2章で紹介した、「開眼片足立ち」をくり返し練習することです。
運動器不安定症のテストでは、開眼片足立ちは15秒以上が目安ですが、バランス感覚を高めるには1分間以上を目標にします。膝の力を抜いて、左右2~3回ずつを朝晩2回続け、少しずつ時間を延ばしていきましょう。ふらつく場合は、壁などに軽く手を添えてもかまいません。
それができるようになったら、次は閉眼片足立ち、つまり目を閉じて片足立ちの練習をします。これも15秒、30秒というように目標を延ばしながら、バランス感覚を高めていきます。

■柔軟性を向上させる
関節や筋肉の柔軟性が失われると、ちょっとしたことでバランスをくずしやすく、また転倒時の衝撃も大きくなります。とくに股関節や膝関節の柔軟性が低下すると、転倒や骨折につながりやすいので、ストレッチ(伸縮)運動で予防しましょう。
簡単なストレッチは、足を伸ばして仰向けに寝た姿勢から、片足を曲げて、膝をゆっくり胸元まで引き上げる運動です。両手で膝を抱えるようにして胸元に引きつけ、3秒程度キープしたら、足を伸ばして元の姿勢に戻ります(この間、息を止めずに静かに呼吸)。左右の足を交互に、5回程度くり返します(朝晩2回)。
相撲のシコの姿勢も、効果的なストレッチ運動です。足を広めに開いて立ち(足先は外めに)、手を膝に添えながら膝を両側に開くようにして腰をゆっくりおとします。膝と同じ高さまで腰をおとしたら、その姿勢を3~5秒程度キープし、足を伸ばして元の姿勢に戻します(この間、息を止めずに静かに呼吸)。この運動はストレッチだけでなく、太ももの筋肉強化にも役立ちますが、それだけ足腰に大きな負荷がかかるのでやり過ぎないように注意し、最初は5回程度から始めましょう。

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