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2016.09.09

vol.159 健康常識の数字に惑わされるな

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Vol.159 健康常識の数字に惑わされるな

「この食材はビタミンが豊富ですからたくさん食べなさい」などといわれる食品があります。確かに食品成分表などで確認すると、摂りたい栄養素が豊富に含まれており、それが常識として知られています。しかし、なかにはその食品で十分な栄養素を摂ろうとすると、どれだけの量を食べなければならないか、疑問に思えるものもあります。それはどうしてでしょうか?

海苔(のり)は栄養豊富です。でも……!?

私たちの体を健康に保つためには、たんぱく質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維といった栄養素をバランスよく摂取することが基本です。そのうえで、自分に必要と思われる栄養素を加えることがポイントと考えられます。

貧血の対策として、食事から摂ることが重要なのが、鉄分に加えてビタミンB12と葉酸です。葉酸はビタミンB群の一種。赤血球を作り出すのに必要な成分で、「造血ビタミン」とも呼ばれています。また、葉酸は胎児の発育にも重要だといわれています。妊娠を計画している女性は、葉酸を1日400μg摂取することが望ましいとされているほどです※1。
そんな葉酸に関して、健康情報番組などで「葉酸は海苔に“桁違い”なほど豊富に含まれているから、積極的に摂るといい」といわれることがあります。確かに食品成分表では、焼き海苔100gあたりに含まれる葉酸は1900μgと示されています※2。葉酸だけでなく、ビタミンAやカリウムなどのミネラル分も豊富に含まれており、それが常識として知られています。しかし、そこで再確認しなければいけないのは、先ほどの数値はあくまで焼き海苔100gに含まれる栄養素の量だということです。
海苔1枚の重さは3g程度。なかには2g少々のものもあります。つまり、海苔で1900μgの葉酸を摂ろうと考えると、30枚以上を食べなければいけないことになります。普段の食事で味付け海苔や焼き海苔として食べているのは2分の1枚か、多くても1枚程度、つまり1.5gから3g。1.5gに含まれる葉酸の量は約30μgです。妊活中の女性は、海苔だけで推奨される400μgの葉酸を摂ろうと考えると、1日7枚前後を食べなければならないことになります。

海藻類でいえば、生わかめ100gあたりに含まれる葉酸は29μg。乾燥わかめを水で戻したものに含まれる葉酸は46μg※2。わかめは1回の食事で50g以上を食べることは難しくありませんから、海苔が“桁違いに葉酸を多く含む”とは言い過ぎかもしれません。

もちろん、海苔に栄養がないというわけではありません。効率よく葉酸を摂るには有効ですし、満腹感にほとんど影響を与えないので、食事にプラスアルファすると効果的でしょう。ただ、1回の食事で食べられる量は限られますし、同じものが毎回食卓に上がるのでは飽きてしまいます。だから海苔にこだわりすぎるのではなく、ほかの海藻類や野菜などと併せて摂るなどの工夫を考えるほうがいいでしょう。

栄養豊富な大豆。なかでも、きな粉が格段に栄養豊富ってホント?

大豆はたんぱく質をはじめ、栄養豊富な食材です。なかでも「きな粉に含まれているたんぱく質は、豆腐に比べて5倍以上!」と、記事などで取り上げられることがあります。
100gあたりに含まれているたんぱく質は、きな粉が36.7~37.5g(豆の種類による)なのに対して、木綿豆腐は6.6g、絹ごし豆腐は4.9gです※2。確かに数値を見る限り、5倍以上です。
しかし、スーパーマーケットで販売されているきな粉1袋の多くが100g前後。ということは、まるまる1袋を食べて、やっとたんぱく質37gを摂ることができるというわけです。“小分け袋”で販売されているものは、小袋1つあたり20g程度。つまり1回の食事で使用するのは20g程度と想定されているわけです。それに対して店頭に並んでいる豆腐は1丁350~400g。1回の食事で100gどころか、簡単に200g以上を食べられます。計算すればおわかりのとおり、きな粉20gに含まれるたんぱく質は、絹ごし豆腐150gに含まれている量とほぼ同じなのです。

「高野豆腐には、木綿豆腐に比べて7倍のたんぱく質が含まれています」といった報道もよく耳にします。事実、100gあたりの高野豆腐には50.5gのたんぱく質が含まれています※2から、その差は7倍以上です。
しかし、店頭で見かける高野豆腐は1切れ約16g。つまり6切れ以上を食べないと、50gのたんぱく質を摂取することはできません。これに対して、高野豆腐の水煮に含まれるたんぱく質は100gあたり10.7g※2。実際、食卓に用意されているのは、だし汁でもどした高野豆腐ですから、豆腐に比べての差はわずかだと考える方が妥当でしょう。

ここで注意したいのは、海苔、きな粉、高野豆腐とも、乾燥した食品であるということです。「日本食品標準成分表」はあくまで100gあたりの栄養素を示していますので、水分の少ない食品は栄養素が多く示されてしまいます。
100gあたりの水分は、焼き海苔が2.3gなのに対して生わかめは89gです。きな粉が3~6gなのに対して豆腐は85g以上が水分です。高野豆腐は乾燥した状態で7.2gなのに対して、水煮は79.6g。つまり、「栄養素が豊富」と報じられるケースのある食材は、水分が10%以下のものがほとんどなのです。
もちろん、海藻類や大豆製品が栄養豊富であることには変わりはありません。海苔やきな粉ばかりを選ぶ必要はなく、いろいろな食材を選べばいいということです。

ひじきの鉄分は「鉄釜」が理由だった?

ひじきは昔から鉄分が豊富といわれてきました。しかしその理由は、鉄釜で煮ることだったという報道がされて、注目を集めました。
食品標準成分表によると、鉄釜で煮たあと乾燥させたひじき100gあたりには、58.2㎎の鉄分が含まれていますが、ステンレス釜で煮たあと乾燥したものには6.2㎎しか含まれていません。また、乾燥ひじきを水で戻した後にゆでたものの鉄分を比較すると、鉄釜を使用したものは2.7㎎、ステンレス釜を使用したものは0.3㎎※2。つまり、鉄釜の鉄分が煮汁に溶けだし、それをひじきが吸収したため、鉄釜で煮たものでないと鉄分豊富とはいえないのではないか、というのです。

しかし、これには異論もあります。日本ひじき協議会によると、国産のひじきは確かに鉄分6.2㎎との差異は少ないものの、ステンレス釜を使用して加工された韓国産のひじきには47.6㎎、同じ条件の中国産では47.7㎎の鉄分が含まれているというのです。さらに国内で流通している乾燥ひじきの多くは「煮た」ものではなく「蒸した」あと乾燥させているため、釜の材質による違いはないと推測されるというのです。
この点に関しては、引き続き研究が続けられるということですので、今後に注目しましょう。

抗酸化作用があり、肝臓の機能を高めたり、アンチエイジングの効果が期待されている成分がゴマリグナンです。これはごまに含まれる貴重な成分で、その仲間で一番よく知られているのがセサミンです(ほかにセサモリン、セサミノールなど)。
また、ごまに含まれている不飽和脂肪酸には、コレステロールや中性脂肪を下げる働きが期待されています。ほかにもカルシウムや鉄分、食物繊維が含まれているため、健康食材として注目する人も少なくありません。
しかし、問題なのは消化・吸収の面です。ごまは硬い殻に覆われているので、そのまま食べると、ほとんど栄養分が吸収されません。それに対応するには、ごまをすることです。「すり鉢」と「すりこぎ」を使う昔懐かしいやり方でもいいですし、ごますり器を選んでもいいでしょう。酸化しやすいため、食べる直前にするのがいいという専門家も多いようです。
するよりも、もっと消化・吸収の面で優れているといわれているのが、ゴマのペーストです。自宅でペーストに加工しようとすると大変な労力を要しますが、ごまペーストとして販売されている商品もあります。おひたしに加えるなど簡単に利用できますので、お勧めです。

玄米は健康にいい?

玄米はミネラル分が豊富であるなど、昔から健康食といわれてきました。玄米ご飯100gに含まれているカリウムは95㎎、カルシウムは7㎎、マグネシウムは49㎎、リンは130㎎。それに対して精白米では、カリウムが29㎎、カルシウムが3㎎、マグネシウムが7㎎、リンが34㎎※2と、歴然とした差があります。
しかし問題なのは、栄養素の吸収率です。玄米の栄養素の吸収率は白米より低いのです。カルシウムを例にとると、玄米には白米の2倍以上のカルシウムが含まれていますが、玄米を食べることによって体内に取り入れられるカルシウムの量は、精白米の3分の1に過ぎないという専門家がいます。つまり、白米のご飯を食べるより、栄養効率では劣ってしまうことになります。さらに、胃腸の弱っている人は、消化に難のある玄米を避けたほうがいいと指摘する専門家も少なくありません。あまり玄米ご飯にこだわらず、主食選びをすることをお勧めします。

そんななかで注目されているのが、発芽玄米です。発芽玄米とは、玄米をわずかに発芽させたもの。芽を出すために必要な栄養素が蓄えられた状態のため、栄養価が高いのが特徴です。また、発芽とともに糠が柔らかくなるので、精白米に近いくらい食べやすくなるのもポイントです。
発芽玄米ご飯100gには、カリウム68㎎、カルシウム6㎎、マグネシウム53㎎、リン130㎎が含まれています※2。このように発芽玄米は、精白米と比べてミネラル分が豊富で、玄米より消化・吸収の面で上回ります。とくに胃腸の調子が悪いときなどに、見逃せないアイテムといえます。

主食に関連した情報をもう一つお伝えします。「1日2ℓの水分補給をしましょう」という話を聞いたことがある人も多いでしょう。この「2ℓ」には但し書きがあって、「食事を含めて」の数字です。
和食で主食となるご飯には約60%の水分が含まれています(精白米、玄米、発芽玄米とも)。うどんやそうめんは約70%が水分です。一方、食パンの水分は約40%、パスタは約60%です。和食の主食はもともと、水分が多めに含まれていることがわかります。そんな食事に汁物を加えると、1日0.5ℓ前後を食事から摂っていることになります。

もちろん汗をかく季節や運動後などは、1日あたり2ℓ以上の水分補給が必要ですが、そうでない場合は1日1.5ℓ前後の水分補給で十分ということになります。
また、汗をかいたときなどは、水分だけでなくミネラル分などを補給すべきだということは、さまざまな「熱中症対策情報」でご存じの方も多いでしょう。そんなケースでは、経口補水液を活用するのも一つの方法です。「以前に経口補水液を試したけど、おいしくなかったのでやめた」という人もいらっしゃるでしょう。でも、ここ数年の間で味がリニューアルされた経口補水液も多く、おいしく飲めるようになったという意見もありますので、試してみてはいかがでしょうか。

ある特定の栄養が「格段に豊富」といわれる食材も、本当に1回の食事でそれだけ摂ることができるのか、再確認してみましょう。さらに、「健康のために多くの人が食べている」という食品であっても、偏りはよくありません。多くの種類の食材を摂ることでバランスを心がけることが、健康的な食事の基本といえるのです。

※1 厚生労働省「妊産婦のための食生活指針」より

※2 文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より


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