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2017.08.10

vol.170 血管を健康に保とう

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Vol.170 血管を健康に保とう

血管の健康を保つことは、体全体の健康につながります。血管の老化というと、動脈硬化を思い浮かべる人も多いでしょう。もちろん動脈の健康を保つことは重要ですが、最近では毛細血管が健康であるかどうかも大きなポイントだとされています。毛細血管に問題があると、シミやしわの原因になるだけでなく、冷え症になりやすかったり免疫力が低下したり、そのほかの病気につながりかねないからです。では、どんなことに気をつければいいのでしょうか。そのヒントをお伝えします。

動脈硬化はさまざまな疾患を引き起こす

医学教育に大きな貢献をしたウィリアム・オスラー博士の有名な言葉に「人は血管とともに老いる」があります。加齢とともに血管の老化が動脈から起きるということで、動脈硬化を意味しています。
動脈硬化の原因はさまざまですが、血圧が常に高い状態であることも原因の一つです。血圧が高い状態では動脈に圧力がかかり続けているため、血管の細胞や弾性繊維が発達してしまいます。そのため血管壁が厚くなり、内腔が狭くなってしまうので血液が流れにくくなるのです。また、動脈にかかった圧力によって血管内皮細胞が傷つくと、その部分にコレステロールなどが入り込み、粥状動脈硬化を起こすリスクも増えます。また、これらが原因で血管の内腔が狭くなるとさらに高血圧が進行するため、動脈硬化と高血圧は“表と裏の関係”にあるといえます。
高血糖や脂質異常(LDLコレステロールなどが多い状態)も血液をドロドロにするため、血管内皮細胞を傷めます。そこに活性酸素による酸化ストレスが加わると、さらに動脈硬化が進行します。そしてこれらひとつだけでなく、複数の要因が重なるとことで動脈硬化をさらに進行させてしまうのです。
動脈硬化は、高血圧だけでなくさまざまな疾患の原因となります。ほかにも心筋梗塞や狭心症、脳卒中、閉塞性動脈硬化症、大動脈瘤や大動脈解離といった疾患も動脈硬化が原因の一つです。

動脈硬化の治療の基本は、生活習慣の改善です。
たばこを吸っている人は、まず禁煙からスタート。そして食事の面では、総摂取エネルギー量や飽和脂肪酸摂取量を抑えるなどの見直しを行うことです。また、運動量を増やして太りにくい体をつくり、メタボリックシンドロームにならないように適正体重を維持することも重要です。※。

※「動脈硬化の病気を防ぐガイドブック」(日本動脈硬化学会)より

毛細血管の重要性

近年、動脈と同様に健康度が重要視されているのが毛細血管です。
血管の総延長は約10万㎞で、地球2周半の長さです。約100億本あるといわれる毛細血管は、血管の99%を占めています。動脈と静脈の間に位置し、細胞に必要な酸素や栄養を届け、不要となった二酸化炭素や老廃物を回収するのが毛細血管の役割です。そのため、毛細血管はあらゆる細胞と0.03mm以内にあるとされています。逆にいえば、約37兆個といわれるすべての細胞の至近距離にまで、毛細血管が張り巡らされているのです。

毛細血管には小さな穴が開いており、適度に漏れることで周囲の細胞に酸素や栄養を届けることができます。しかし、加齢などが原因で過度に血液が漏れやすくなったりすると、その先に血液が届かなくなってしまうことがあり、その状態が続くと、その先の血管が消滅してしまうのです。この状態を「ゴースト血管」といいますが、最近テレビや雑誌でもたびたび取り上げられている現象です。毛細血管が減ってしまう原因の一つは加齢。毛細血管は40歳代から減りやすいといわれており、20歳代に比べると、60歳代では4割前後減ってしまうという報告もあります。そして、高血圧や高血糖、脂質異常などが重なると、ゴースト血管化をさらに加速させてしまいます。

毛細血管が減るとどうなる?

毛細血管がなくなってしまうと、その先にある細胞に酸素や栄養が届きません。それが皮膚に近い場所で起こると肌のシミやしわの原因に、頭皮近辺で起こると薄毛や白髪の原因になるといわれています。また、酸素や栄養が届かないと、心臓は「もっと強い力で血液を送り出さないと」と判断してしまうため、高血圧になりやすくなり、動脈硬化を進行させることにつながり、心筋梗塞や脳卒中のリスクも増えてしまうのです。

血液は酸素や栄養だけでなく、白血球も運びます。体のすみずみまで白血球を届けることで免疫に寄与しているのです。ゴースト血管によって白血球が行き届かなくなる場所があると免疫力が落ち、風邪をひきやすくなるなど感染症のリスクが高まります。また、薬を服用しても届かない場所があると、効き目が悪くなってしまうと指摘する専門家も少なくありません。さらに、一定の温度の血液を運ぶことで、体温を維持するのも毛細血管の役目です。そのため血流が途絶える場所があると、その先に冷え症が起こることもあります。
また、毛細血管が減ることで、アルツハイマー型認知症や骨粗鬆症のリスクが増すという見解もあります。エネルギーが消費されにくくなるため、糖尿病のリスクも心配しなければいけません。

毛細血管の減少を抑制するには?

毛細血管のゴースト化を防ぐには、血流が不足しないようにすることが一つのポイント。血管の中を流れる血液を“流れやすい状態にする”ことは、その第一歩です。
例えば脂質異常にならないよう、食事のバランスに気を付けることです。また、食後高血糖にならないよう、野菜から食べ、よく噛み、大食いを避けるなどのことを実行しましょう。抗酸化成分が多く含まれている食品を積極的に取ることも、LDLコレステロールの酸化を防ぐ意味でも重要です。
また、副交感神経を優位にすることで、末梢の毛細血管まで開かせて血流をよくすることが効果的だという見解もあります。交感神経が優位な状態では、毛細血管が収縮して血圧が上昇してしまいます。その状態ばかりが続くことは、毛細血管にとってよくありません。規則正しい生活や質の高い睡眠、リラックスタイムをきっちり取ることなどで、副交感神経が優位になる時間帯をつくるようにしましょう。
「耳やふくらはぎをもむことで、毛細血管に刺激を与えるといい」、「静脈マッサージが効果的だ」、「血流に悪影響を与えるブーツやハイヒールは、あまり長時間履き続けないほうがいい」など、専門家によって異なる意見があります。しかし、血流をよくすることが毛細血管の健康に役立つことは共通しています。

毛細血管の健康を保つために、ルイボスティーを勧める専門家もいます。紫外線の強い地域で生産されるルイボスティーには、抗酸化成分が豊富に含まれているだけでなく、血液が漏れない毛細血管を作るのに重要な物質Tie2(タイツー)を活性化する成分が含まれているからです。
シナモンやヒハツに含まれる成分も、Tie2を活性化すると考えられており、健康な毛細血管を維持したり、傷ついた毛細血管を修復できる可能性があるといわれています。ただし、シナモンを取り過ぎると肝障害を誘発するリスクがあり、特に妊娠中の女性は控えたほうがいいという専門家もいます。ヒハツはコショウ科の植物で、スパイスとしても使用されていますが、過剰に摂取すると胃に負担をかける恐れがあるなど、注意が必要です。

本来、毛細血管には「血管新生」という機能があります。これは、血流が悪くなった箇所にある細胞が酸素や栄養素を必要とすると、毛細血管が枝分かれして伸びていく働きです。それなら「毛細血管が伸びれば伸びるだけいいのでは」と思うかもしれませんが、実はマイナス面もあるのです。異常な毛細血管が増える「もやもや血管」の場合は、ひざや肩の痛みを引き起こすことも報告されています。関節リウマチの人でもやもや血管が見られるケースも少なくありません。また、がん細胞は血管を増やすことで増殖しようとし、転移にもつながります。そのため、やみくもに毛細血管を増やすのではなく、いかに健康に役立つ血管を増やすことができるかがポイント。現時点では、どのようにして毛細血管がのびて行くのかすべてのことが明らかになってはいませんが、そのメカニズムについて、解明が進められているので、今後に期待しましょう。

適度な運動はもちろん、規則正しい生活や質の高い睡眠、高血糖や脂質異常にならないようなバランスのとれた食事は、健康な毛細血管を維持する基礎。そのうえで心身ともにリラックスできる時間帯を設けるなど副交感神経を優位にすること、毛細血管を丈夫にする食材を過度になり過ぎないようにしながら取り入れることなどが、ポイントといえそうです。


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