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2006.08.10

vol.38 旅行と薬...上手に付き合うために

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自分の薬の名前を知っていますか

Vol.38 旅行と薬...上手に付き合うために 夏休みから秋の行楽シーズンと、旅行が多くなる時期です。海外旅行はもちろんですが、国内旅行であっても、食事や睡眠の時間などがふだんとは違うため、薬の飲み方や管理方法などに影響を与えることが少なくありません。旅行に出かける前に、しっかり準備を整えておきましょう。

例えば、自分がいつも飲んでいる薬の名前を、言うことができますか。病院でもらっている薬の名前を正確に知っている人は、案外少ないものです。

もし旅行中に薬を紛失したり、切らしたりしたら、どうしたらいいでしょうか。また急病や事故などの場合も、日ごろどんな薬を飲んでいるのかが、重要になります(※1)。

国内旅行の場合には、自分が使っている薬の名前や量をメモし、財布などに入れておきましょう。薬剤薬局で薬をもらう時に、種類や名称などを記したメモを渡されたら、それを携帯しておくと便利です。メモには、かかりつけ医の名前や連絡先なども記入しておくようにしましょう。

海外旅行の場合には、医師に依頼して英文の診断書を作成してもらい、携帯するようにしましょう(詳しくは、後述の海外旅行の章をご覧ください)。

(※1)阪神・淡路大震災の折、医薬品が救護施設に届けられても、患者さんが自分の薬の名前を知らないために、すぐに渡せない状態が多発しました。日ごろから、自分の薬の名前などを知っておくことは、緊急時に自分の身を守るうえで大切なことです。

薬を飲み忘れた場合の対処法

旅行中は時間に追われたり、ほかのことに気をとられ、つい薬を飲み忘れてしまうこともあります。薬を飲み忘れた場合には、原則として気が付いた時に飲むようにします。ただし、次の飲む時間が迫っている場合、短時間に続けて飲んだり、一度に2回分を飲むことは絶対にやめましょう。

ふだん飲み慣れている薬でも、一度に、あるいは短時間の間に2回分を飲んだりすると、効きすぎて体調をくずすことになりかねません。とくに高血圧、心臓病、糖尿病などの薬は、短時間に続けて飲むと危険なこともあるので、十分に注意しましょう。
一般的に、薬を飲む間隔は最低でも2時間以上、できれば4時間以上あける必要があります(※2)。薬の種類によっても対処法が異なるので、飲み忘れた場合にどうしたらいいかを、事前にかかりつけの医師にたずねておくといいでしょう。
また、空腹状態で薬を飲むと胃にも影響しやすいので、飲み忘れた場合でもクラッカーを1枚食べるなどしてから、飲むほうが安心です。

(※2)薬が効いている時間(有効時間)は、種類にもよりますが、一般に4~6時間程度です(飲み薬の場合)。したがって薬を飲む間隔は、4~6時間あけるのが理想的です。薬には、毎食後に飲むタイプが多くみられますが、これは胃を保護する目的と、適当な間隔をあけるという2つの目的があります。

ペットボトルの水を携帯する

旅行中は身近に水がなく、お茶や牛乳、ジュースなどで飲んでしまうこともあるでしょう。お茶やコーヒーにはカフェインが含まれているため、睡眠薬や精神安定薬などは効果が出にくくなります。牛乳にはカルシウムが含まれているため、抗生物質や骨粗しょう症の治療薬、便秘薬の中には効きにくくなるものがあります。またコーラは、アスピリンなどの薬の効き目を遅くする傾向があることが知られています。

とくに注意したいのは、グレープフルーツ・ジュースです。苦味の成分であるフラボノイドには、血圧の薬(カルシウム拮抗薬)やアレルギー治療薬の働きを強める働きがあります。そのため薬が効きすぎてしまい、思わぬ副作用が出やすくなります。
やむを得ない場合を除き、薬は水かぬるま湯で飲むのが原則です。旅行中は、水の入った小さなペットボトルを携帯するようにしましょう。

また、旅行中は開放的な気分になり、アルコールを飲む機会が増えることもあります。
一般にアルコールと薬を一緒に飲むと、薬が強く効く傾向がみられます(※3)。とくに鎮静薬や精神安定薬などは、アルコールと一緒に飲むと危険な状態に陥ることもあります。市販の風邪薬などでも効きすぎることがあるので、薬を飲む場合にはアルコールには十分な注意が必要です。

自分が飲んでいる薬がアルコールの影響を受けやすいかどうかを、かかりつけ医に確認しておきましょう。

(※3)アルコールと薬を一緒に飲むと、肝臓はまずアルコールを分解します。薬の分解が遅れるため、血液中の薬の濃度がふだんより高くなり、強く効くという状態が起こります。

海外旅行では英文証明書を持参する

最近、アメリカへ旅行する日本人が、入国時に睡眠薬の不法所持で事情聴取を受ける例が増えています。時には、いきなり逮捕されるケースもあります。アメリカ(ハワイも含む)では、睡眠薬の多くが麻薬取締法の対象となっているためです。

アメリカの場合、テロ対策などと関連して、とくに入国時の審査が厳しくなっています。しかし、それ以外の国でも、持参した薬の内容がわからなかったり、量が多かったりすると、長時間にわたって質問を受けることが少なくありません。こうした入国時のトラブルを防ぐためには、薬の種類や使用法などを明示した「英文証明書(旅行用診断書)」を持って行くのがベストです。

英文証明書の作成は、かかりつけ医にまず相談してください。かかりつけ医以外では、日本旅行医学会のホームページなどから認定医を探し、書いてもらう方法もあります(いずれも有料)。

また旅行代理店の中には、高血圧などの持病のある中高年を対象に、「安全カルテ」を配っているところもあります。一度、たずねてみるといいでしょう。

日本旅行医学会:http://www.jstm.gr.jp/

高血圧や糖尿病はきちんと自己管理を

旅行中は、どのような病気でも薬の自己管理が大切ですが、とくに注意したいのは高血圧や糖尿病などの生活習慣病です。

旅行中に、心筋梗塞や脳卒中で亡くなる人は少なくありません。高血圧などが原因でもともと動脈硬化を起こしている人が、旅行先で環境が変わり、疲れなどもあって発作を起こす例が多いと考えられています(※4)。高血圧の場合、ふだんは血圧管理ができていても、旅行中に疲れによる発熱や下痢による脱水症状を起こすと、体調をくずすことになりがちです。薬をきちんと飲むことはもちろんですが、小型の血圧計を持参し、旅行中も血圧測定をするようにしましょう。

糖尿病の場合には、薬の調整と管理が大切です。とくにインスリン治療を行っている場合は、食事時間の変化に合わせて調整する必要があります。 旅行中は食事時間や食事の量が不規則になり、運動不足にもなりがちなため、血糖値が上がりやすい傾向がみられます。旅行前に医師と相談し、スケジュールに合わせた薬の調整方法や、緊急時の対処法などを確認しておきましょう。

海外旅行の場合には、インスリンと器具は貨物室に預けると破損の恐れもあるので、手荷物で持ち込むほうが安心です。インスリンと器具の機内への持ち込みと、機内食を糖尿病食に変更してもらうことも、旅行代理店や航空会社に事前に確認することを忘れないようにしましょう。

海外旅行中にインスリンなどを切らしたり、低血糖を起こした場合などに備えて、英文の「糖尿病カード」や「糖尿病IDカード」を用意しておくことも大切です。カード類の詳細は、(社)日本糖尿病協会のホームページ内の「療養グッズ」などでも知ることができます。

(社)日本糖尿病協会:http://www.nittokyo.or.jp/

(※4)生活習慣病がある人が海外旅行をするときの一般的な注意については、バックナンバー『Vol.26 海外旅行…「持病」の備えは大丈夫ですか』をあわせてご覧ください。

ミニコラム

もともと持病のある人が、海外旅行先で症状が悪化して治療を受けた場合、通常の海外旅行保険では補償されないケースが少なくありません。事前に補償内容を確認し、保険会社に持病向けの保険がないかどうか、たずねておくことも忘れないようにしましょう。


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