vol.157 糖尿病患者ですが、ご飯を食べなければお酒を飲んでも大丈夫でしょうか?

生活習慣病Q&A
糖尿病患者ですが、ご飯を食べなければお酒を飲んでも大丈夫でしょうか?
いいえ。血糖コントロールや神経障害や肝機能障害など合併症の程度によって、医師より飲酒が許可されます。
アルコール依存症の人は「禁酒」、それ以外の健康な人では「節酒」が健康寿命を延ばします。この場合の「節度ある適度な飲酒」とは、1日当たり20g以下となります。
糖尿病患者さんの中には、「夜はお酒を飲むので、ご飯は食べない」という人がいます。これは、1回に摂取するカロリーで食事を計算している人にみられがちな勘違いです。アルコールを飲んでもよいかどうかは、血糖コントロールと神経障害など合併症の程度によって決まっています。血糖コントロールが悪い時(HbA1c7%未満)には飲酒は禁止です。また、アルコールを分解する際にビタミンと糖を消費します。インスリン注射を打っている人では、ワイン3杯など多量飲酒後は、翌日の午前中などに低血糖になるリスクが高まることが知られています。そのため、低血糖を予防するために適度な炭水化物を含む食品をとっておくことが大切になります。
次に注意してほしいのは神経障害などの合併症がないかということです。多量飲酒は神経障害を悪化させることが知られています。糖尿病神経障害があるかどうかをチェックしてもらって下さい。また、多量飲酒は肝機能障害の原因となり、血糖を悪化させます。

一方、糖尿病では体重管理が重要であることは言うまでもありません。アルコールは意外と高カロリーです。患者さんのなかには、お酒はそれほどカロリーが高くないと思われている方もおられますが、缶ビールは500mLで200kcal、焼酎は水割りコップ1杯で160kcal、日本酒は1合(180mL)で200kcalと、実際は高カロリーです。例えばオレンジジュースが200mLで84kcalであるのと比較すれば、お酒は倍以上のカロリーがあることがわかります。「アルコールは『エンプティカロリー』だから、カロリーのことは気にしなくてよい」と勘違いしている人もいます。この「エンプティー」とは「空っぽ」という意味なのですが、この「空っぽ」とは「カロリーがない」のではなく、「栄養素が乏しい」という意味です。
これらのことを総合して、医師は患者に飲酒の許可を与えます。かかりつけの先生に「自分の今の状態や飲んでいる薬で、お酒を飲んでも大丈夫ですか?」と尋ねてみて下さい。いいアドバイスがもらえることと思います。

先生のプロフィール

坂根 直樹先生

坂根 直樹 先生

独立行政法人国立病院機構京都医療センター
臨床研究センター 予防医学研究室室長
略歴
昭和64年 自治医科大学医学部卒業
昭和64年 京都府立医科大学附属病院(第1内科)研修医
平成3年 大江町国保大江病院内科
平成5年 弥栄町国保病院内科
平成6年 京都府保健福祉部医療・国保課
平成7年 綾部市立病院(内分泌科)
平成10年 大宮町国保直営大宮診療所
平成11年 京都府立医科大学附属病院修練医(第1内科)
平成13年 神戸大学大学院医学系研究科分子疫学分野(旧衛生学)助手
平成15年 独立行政法人国立病院機構京都医療センター(旧国立京都病院)
臨床研究センター 予防医学研究室室長
ご専門
糖尿病、糖尿病教育、内分泌

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