vol.161 糖尿病になると、認知症も発症しやすくなるのでしょうか?

生活習慣病Q&A
糖尿病になると、認知症も発症しやすくなるのでしょうか?
はい。糖尿病になると、血管性やアルツハイマー病などの認知症に2倍くらいなりやすいと言われています。
糖尿病は別名「血管の病気」とも言われています。高血糖が続くと、血管が障害され、動脈硬化が進行します。そのため、血管性認知症になりやすいことが知られています。
九州の久山町で行われた疫学研究をみると、認知症の中でも最も多い原因であるアルツハイマー病になるリスクは、血糖が正常な人に比べると、糖尿病では2.1倍なりやすいことが報告されています。なぜ、糖尿病が血管性認知症だけでなく、アルツハイマー病にもなりやすいのでしょうか?

アルツハイマー病は20年前からアミロイドβというタンパク質が脳内にたまりはじめ、老人班として脳に沈着し、やがて神経細胞が死滅すると考えられています。このアミロイドβを排泄するのに血管の拍動や脂質代謝が重要です。血管が拍動することで、アミロイドβがたまりにくくなります。しかし、糖尿病では血管が障害されるため、拍動が起こりにくくなります。そのため、糖尿病ではアルツハイマー病になりやすいのです。糖尿病にならない、なっても血糖コントロールをよくして合併症を起こさないことが大切です。
さらに、2型糖尿病の人では、低血糖、うつなどがあると認知症になりやすいことがわかっています。認知症が気になる人は、認知症を予防するために、食事や運動に気をつけてみてはいかがでしょう。認知症予防には日本食が役立つ可能性が指摘されています。大豆・大豆製品、野菜、藻類、牛乳・乳製品をよくとる人は認知症になりにくく、逆に、米などをとり過ぎている人は認知症になりやすいようです。
また、脳と身体を同時に使う「デュアルタスク」は認知症予防につながるそうです。皆さんも何か認知症予防になることを始めてみてはいかがでしょうか。

先生のプロフィール

坂根 直樹先生

坂根 直樹 先生

独立行政法人国立病院機構京都医療センター
臨床研究センター 予防医学研究室室長
略歴
昭和64年 自治医科大学医学部卒業
昭和64年 京都府立医科大学附属病院(第1内科)研修医
平成3年 大江町国保大江病院内科
平成5年 弥栄町国保病院内科
平成6年 京都府保健福祉部医療・国保課
平成7年 綾部市立病院(内分泌科)
平成10年 大宮町国保直営大宮診療所
平成11年 京都府立医科大学附属病院修練医(第1内科)
平成13年 神戸大学大学院医学系研究科分子疫学分野(旧衛生学)助手
平成15年 独立行政法人国立病院機構京都医療センター(旧国立京都病院)
臨床研究センター 予防医学研究室室長
ご専門
糖尿病、糖尿病教育、内分泌

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