vol.169 炭水化物の摂り過ぎは、糖尿病の原因になりますか?

生活習慣病Q&A
炭水化物の摂り過ぎは、糖尿病の原因になりますか?
おかわりをする女性は将来、糖尿病になるリスクが高まります。男性では炭水化物以外の肥満や運動不足などの影響が大きいと考えられています。
3大栄養素は、たんぱく質と脂質と炭水化物です。炭水化物を食べると血糖が上昇します。厳密には、糖質+食物繊維=炭水化物なので、糖質が多い食事をすると血糖が上昇するわけです。日本人の1日当たりの平均炭水化物量は男性が287g、女性が233gです。炭水化物の代表は米です。日本人の炭水化物源は、米が48.3%で半分近くを占めています。続いて、米やパンなど小麦が13.8%、米やパン、麺類などの小麦が13.8%、果物が6.2%、菓子が5.1%となっています。

日本や欧米における観察研究から、白米摂取と糖尿病発症リスクとの関連が報告されています。日本での報告では女性において、1日に米飯を摂取している量で4分位に分けたところ(1日の平均米飯摂取量、最も少ない群=平均165g、平均315g、平均420g、最も多い群=平均560g)、最も少ない群に比べ、最も多い群では5年間の糖尿病発症が1.65倍(95%信頼区間:1.06-2.57)と上昇していました。お茶碗1杯が140gとすると、1日に平均4杯の米飯を食べていることになります。つまり、おかわりする女性は将来糖尿病になるリスクが高まるようです。
同じ集団において、男性では女性よりも米飯をたくさん食べているのですが(1日の平均米飯摂取量、最も少ない群=平均280g、平均420g、平均560g、最も多い群=平均700g)、最も少ない群に比べて、最も多い群の5年間の糖尿病発症は1.19倍と明確な関連を認めていません。むしろ、身体活動量が少ない人が糖尿病になりやすい傾向にありました。男性は肥満や運動以外にも禁煙や節酒などに取り組むことが糖尿病予防につながるのかもしれません。
一方、玄米や雑穀米、全粒パンなどは糖尿病発症を抑えるのではないかと期待されています。つまり、健康的な食材をとる食事パターンの人が糖尿病になりにくいと思われます

<文献>
1. Hu EA, Pan A, Malik V, et al: White rice consumption and risk of type 2 diabetes: meta-analysis and systematic review. BMJ. 2012;344:e1454.
2. Nanri A, Mizoue T, Noda M, et al: Rice intake and type 2 diabetes in Japanese men and women: the Japan Public Health Center-based Prospective Study. Am J Clin Nutr. 2010;92(6):1468-77.
3. Nanri A, Mizoue T, Kurotani K, et al: Low-carbohydrate diet and type 2 diabetes risk in Japanese men and women: the Japan Public Health Center-Based Prospective Study. PLoS One. 2015;10(2):e0118377.
4. Sun Q, Spiegelman D, et al: White rice, brown rice, and risk of type 2 diabetes in US men and women. Arch Intern Med. 2010;170(11):961-9.

<参考資料>
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1611/15/news062.html

先生のプロフィール

坂根 直樹先生

坂根 直樹 先生

独立行政法人国立病院機構京都医療センター
臨床研究センター 予防医学研究室室長
略歴
昭和64年 自治医科大学医学部卒業
昭和64年 京都府立医科大学附属病院(第1内科)研修医
平成3年 大江町国保大江病院内科
平成5年 弥栄町国保病院内科
平成6年 京都府保健福祉部医療・国保課
平成7年 綾部市立病院(内分泌科)
平成10年 大宮町国保直営大宮診療所
平成11年 京都府立医科大学附属病院修練医(第1内科)
平成13年 神戸大学大学院医学系研究科分子疫学分野(旧衛生学)助手
平成15年 独立行政法人国立病院機構京都医療センター(旧国立京都病院)
臨床研究センター 予防医学研究室室長
ご専門
糖尿病、糖尿病教育、内分泌

関連コラム

商品を見る