vol.101 肉や貝類にご用心! 冬季の食中毒に気をつけよう

健康・医療トピックス
2011年4月、焼き肉のチェーン店で発生した食中毒。人気メニューのユッケが原因だったため、生で食べる牛肉の安全性が問われ波紋が広がりました。181人が発症し、4人が亡くなるなど大きな被害が生じたことから(10月6日現在)、まだ記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。
病因として疑われたのは、腸管出血性大腸菌のO111です。牛などの動物の腸管に生息している大腸菌のひとつで、ふん便などを介して感染が広がります。熱には弱い菌ですが、人の体内に入り、ひとたび発症すると激しい腹痛と血便の症状があらわれ、重症になると溶血性尿毒症症候群を併発します。これまでの報告では、牛レバー刺し、ハンバーグ、牛たたき、ローストビーフなどの牛肉料理や、サラダや漬物などの野菜からも見つかっています。

外食が身近になり、生の牛肉に対する警戒心が薄れかけたなかで起こった今回の食中毒。多数の被害者が出たことをきっかけに、再発防止に向けた検討がされていましたが、このほど事業者に対する規格や表示の基準が決まり、10月1日から改正された食品衛生法の施行が開始しました。食品の安全は、私たちの健康にかかわる重要なこと。生食用の牛肉の取り扱いについて、どのようなことが決まったかご紹介しましょう。

まず、飲食店などがお客に生食用の牛肉を提供したり、販売したりする場合、これからは、店内の見やすい場所や店頭、メニューなどに「食肉の生食は、食中毒のリスクがある」「子どもや高齢者、食中毒に対する抵抗力の弱い人は食肉の生食は控えること」という2つの表示を行うことが義務づけられました。
また、生食用の牛肉を容器に入れて販売するときは、「生食用」と明確に表示する必要も定められました。「ユッケ用」「タルタルステーキ用」「牛刺し用」「牛たたき用」などの表示では、不足というわけです。さらに、食肉の解体が行われた都道府県名(輸入品の場合は原産国)やと畜場の名称の表示も義務化されました。
これらの規則は、加工や調理、販売など生食の牛肉を取り扱う事業者に向けたものですが、食品の表示は私たちの食生活にもかかわりがあります。飲食店で食事をしたり、総菜などを購入したりするときは、生食の表示もしっかりチェックし、安全な食品を選びたいものです。

食中毒というと、梅雨時や夏によく起こるものと思う方も多いかもしれませんが、実は冬の時期にも注意が必要です。11月に入ると大腸菌よりもっと小さいウイルスによる食中毒が増えます。寒い季節に流行しやすいのがノロウイルスによる食中毒です。平成22年の厚生労働省の食中毒発生状況によるとノロウイルスによる患者数は1万3904人。食中毒を発生させる原因物質の中で最も患者数が多くなっています。
ノロウイルスは、カキなどの二枚貝の生食が感染源として知られていますが、人から人へ手指などを介して広がっていくことが多いウイルスです。保育園や幼稚園、学校、介護施設など、人が集団で集まる場所で感染が拡大しやすく、これからの季節は細心の注意が必要となります。
おもな症状は、吐き気や嘔吐、下痢。感染してから発病するまで、また症状がある期間は短期間なので、体力のある健康な人であれば感染してもあまり心配はありませんが、抵抗力の弱い子どもや高齢者は感染しやすく、体力が低下している人では、重症になることもあるので注意しましょう。

食中毒は飲食店だけでなく、家庭からも発生しています。細菌やウイルスは、私たちの身近にあっても目には見えません。意識して予防していくことが大切です。食中毒を防ぐには、原因となる微生物を「つけない」「増やさない」「やっつける」が3原則。予防対策としては、まず手洗いです。調理や食事の前、トイレの後や帰宅時など、石けんをつけて流水でよく洗いましょう。ノロウイルスは細菌より小さく、簡単な手洗いでは爪や指先、手のしわなどに残ってしまうことがあります。丁寧に洗い流しましょう。

そして、特に小さい子どもや高齢者のいる家庭では、肉や魚、貝類の料理は、中まで十分に加熱調理することをお忘れなく。腸管出血性大腸菌は75℃、1分間以上の加熱で死滅します。ノロウイルスは85℃以上、1分間以上が目安です。日常生活では食品を購入するときから衛生面に配慮することが大事です。食中毒を予防するポイントを知って、安全で健康な生活を送りましょう。
vol.101 肉や貝類にご用心! 冬季の食中毒に気をつけよう

食中毒を予防するためのポイント

【食品を購入するとき】
・容器や包装の表示をチェック。特に生食用は注意
・消費期限を確認する
・肉や魚などの生鮮食品は最後に購入し、
 ポリ袋に入れて汁が他の食品につかないようにする
【調理するとき】
・肉や魚、野菜は、まな板や包丁を使い分ける
・生の肉や魚は、生で食べるものから離す
・生の肉や魚、卵に触ったら手を洗う
・まな板や包丁は洗剤で汚れを落とし、熱湯消毒する
・ふきんは漂白剤に浸けて消毒し、清潔なものを使用する
・生の肉に触れた箸では食べない
【食事をするとき】
・温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちに食べる
・料理を室温に長い時間放置しない

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

商品を見る