vol.118 新・検査法も登場! 「がん検診」「人間ドック」の最新事情

健康・医療トピックス
そろそろ春の健康診断の季節です。毎年、生活習慣病の検査は受けているのに、がん検診は一度も受けたことがない…、そのような人は多いのではないでしょうか。
日本人の死亡原因のトップは、「がん」です。日本人の2人に1人がかかるといわれていますが、日本におけるがん検診の受診率は20~30%。先進国の中でも極めて低く、がん対策基本法でもがん検診の強化が柱の一つとなっていますが、検診率はなかなか上がらないというのが現状です。
vol.118 新・検査法も登場! 「がん検診」「人間ドック」の最新事情

採血だけでがんのリスクがわかる

こうしたなか、最近は採血するだけで簡単にがんのリスクが判定できる新しいタイプのがん検診が普及し始めています。「アミノインデックがんリスクスクリーニング(AICS)」という、血液中に含まれるアミノ酸の濃度に着目した新しいがん検診で、導入する医療機関が増えています。
アミノ酸はたんぱく質の構成成分です。私たちの体は20種類のアミノ酸からつくられ、皮膚や髪の毛、各臓器、骨などあらゆるところに欠かせない成分です。このアミノ酸は、健康な人とがんなどの病気の人では、血液中の濃度が異なるパターンを示します。これを分析することで、胃がんや肺がん、大腸がん、前立腺がん、乳がん、子宮がん、卵巣がんかどうかのリスクを判定するのがAICSです。検査結果は、ランク判定として次のようにABCの3段階で評価されます。

・ランクA 現段階でがんのリスクは少ない
・ランクB がんのリスクがやや高い
・ランクC 精密検査が必要

3段階の評価のうち、ランクCががんのリスクが最も高いわけですが、がんと確定したわけではありません。詳しい検査が必要ということを示しています。この検査の費用は約2万円。1回の採血で複数のがんのリスクがわかり、どこの検査を優先すべきかがはっきりすることが大きなメリットといえます。

任意型検診のかかりつけ医を持とう

厚生労働省の平成23年の受療行動調査によると、がんと診断された外来患者の約4割は自覚症状がなく、健康診断や人間ドックで異常を指摘されて受診していることがわかりました。人間ドックなどによるがん検診は「任意型検診」と呼ばれ、受けるかどうかはその人の意思に任せられています。がんは自覚症状が現れるころには進行しているため、職場でがん検診が受けられない場合は個人で病院を探し、健康管理をしていく時代になっています。
がん検診や人間ドックの医師や病院選びは、「人間ドック健診専門医」がいる病院や人間ドック機能評価委員会が「優良施設」と評価した医療機関が一つの目安になります。人間ドック健診専門医とは、日本人間ドック学会と日本総合健診医学会が2012年4月から打ち出した専門医制度。質の高い人間ドック健診の提供と、担当医の資質の向上を目指しています。お住まいの近くで探してみるとよいでしょう。

「がん検診」と「人間ドック」の特長

がん検診は、地域の住民を対象にした「対策型がん検診」として自治体でも受けられます。一方、人間ドックはがんの早期発見と生活習慣病の予防、改善が目的で、腹部の超音波検査なども行うため、特定の部位以外のがんも発見できます。肝がんや胆のうがん、腎がん、甲状腺がんなどです。がんが多い年代は50~60代ですが、40代から少しずつ見つかります。早期発見・早期治療のためには、40代から意識して受けてもいいのではないでしょうか。
人間ドックの大きな特長は、全身を精度の高い検査方法でスピーディに検査し、結果は当日、医師との面談で伝えられるということ。異常が見つかった人に対しては、その後、詳しい検査を受けたかどうかフォローアップをしたり、保健師や看護師、栄養士などが保健指導をおこないます。
人間ドックには、オプション検査もあります。これは自分の体のリスクに合わせて選択するのが上手な活用法です。たとえば、脳梗塞や心臓病の家族歴がある人なら、脳ドックや心臓ドックを受けるとより詳しく検査できます。たばこを吸う人は、CT検査が含まれる肺ドックがおすすめです。一般的な胸部X線検査より早期発見の確率が高くなるのです。乳がんは、マンモグラフィと視触診が主ですが、年齢によっては超音波検査を組み合わせた方が検査の精度が高くなります。年齢と検査内容を照らし合わせて検討しましょう。
人間ドックを実施している医療機関は、大病院に併設された健診センターと小規模のクリニックの2種類があり、どちらにしようか迷うことがあります。すでに主治医やかかりつけ医がいて、がん検診を含めて健康管理が可能ならクリニックでもいいでしょう。一方、いままであまり病気をしたことがない人がクリニックで検診を受けて思いがけない病気が見つかった場合、治療できる適切な病院がすぐに見つからないことがあります。このような点も考慮に入れて選んでみましょう。

監修 三井記念病院 総合健診センター センター長 石坂裕子先生

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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