vol.137 気になる肌トラブル!「大人のニキビ」の最新治療

健康・医療トピックス

鏡を見たら口の周りにポツポツと小さな膨らみ。こんな肌トラブルは、ありませんか。肌あれと思い込みがちですが、実はでき始めの「ニキビ」(尋常性痤瘡 (じんじょうせいざそう) かもしれません。いま、20代、30代にこうした「大人のニキビ」が増えています。20歳以降に見られる大人のニキビは、あごや口の周囲、フェイスラインにできやすいのが特徴です。女性に多く見られますが、最近は男性にも増えています。

ニキビは、皮脂の分泌が増加して毛穴にたまり、ここにアクネ桿菌という細菌が増殖してできます。肌あれと誤解しやすいポツポツは、「面皰 (めんぽう)」と呼ばれ、毛穴に皮脂がたまった状態。ニキビの初期症状です。ニキビの原因菌であるアクネ桿菌は皮脂を好み、毛穴の中で増殖します。過剰に増えると炎症を起こす物質がつくられて赤く盛り上がったり、膿がたまったりします。さらに進むと毛穴の壁が壊れて皮下に膿の袋ができたり、硬く盛り上がったりします。ニキビを悪化させると痕が残り、治療にも時間がかかります。でき始めに適切に治療することが大切です。

vol.137 気になる肌トラブル!「大人のニキビ」の最新治療

新たな薬の登場で前進するニキビ治療

ニキビは治療しても治らない。以前はそう思われていましたが、2008年にニキビ治療薬のアダパレン (商品名ディフェリン ゲル) が登場し、現在では、皮膚科で治る病気になっています。アダパレンは患部に塗る外用薬で、角質を剥がす効果があります。面皰の形成を抑え、赤く盛り上がった赤ニキビや膿がたまったニキビにも有効とされています。日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡治療ガイドライン」では、ニキビ治療の第一選択薬に推奨されています。

ニキビの治療は、皮膚の症状に応じてアダパレンに抗菌薬の外用薬や内服薬などを併用します。ニキビの初期のポツポツとした面皰は、アダパレンのみを用います。赤ニキビや膿がたまったニキビはアダパレンと抗菌薬を併用します。
症状が進行すると長期の治療が必要となりますが、その治療を助ける新たな外用薬が、いま注目され始めています。2015年4月に登場予定の「過酸化ベンゾイル」です。ニキビの治療に詳しい、かくた皮膚科クリニックの角田美英院長は、「抗菌薬は長期に使い続けると効かなくなります。過酸化ベンゾイルには殺菌作用はありますが、耐性化は起こらないため長期の治療に使うことができます。この薬によってニキビ治療はもっと進歩するでしょう」と期待します。

治りにくいニキビは、漢方薬も併用

なかなか治りにくいニキビでは、抗菌薬を3か月服用した後、漢方薬に切り替える選択肢もあります。ニキビ治療に使われるおもな漢方薬は、「桂枝茯苓丸加薏苡仁 (けいしぶくりょうがんかよくいにん)」「荊芥連翹湯 (けいがいれんぎょうとう)」「十味敗毒湯 (じゅうみはいどくとう)」「清上防風湯 (せいじょうぼうふうとう)」などです。「長期に飲んでいただくと症状がよくなるので、漢方薬には肌質を変えていく効果があると思います。最近では、十味敗毒湯に男性ホルモンの分泌を抑える働きがあることがわかっています。18歳以上の男性の場合、過剰な分泌を抑える効果が期待できるのではないでしょうか」(角田院長)。
月経前にできやすい場合は「桂枝茯苓丸加薏苡仁」、男性のニキビには「十味敗毒湯」、中学生や高校生のニキビには「清上防風湯」などが用いられます。

塗る前に副作用や注意点を知っておこう

アダパレンを塗り始めると2週間後に、約80%の人に「乾燥」、「ヒリヒリ感」、「皮膚がはがれる」、「皮膚が赤くなる」、「かゆみ」などの副作用が現れます。悪化したかのようですが、これは一過性の症状。角質を剥ぎ取る薬の効果で、皮膚が薄くなるために起こります。角田院長は「よくなってくるので、薬は塗り続けることが大切です。アダパレンが登場したころ、薬の適切な説明をされずに処方され、驚いて治療をやめてしまった人もいたようです。いまは納得して治療を続ける人が増えています」とアドバイスします。
注意点としては、妊娠中はアダパレンは使用できません。これは妊娠中の実験動物にニキビ治療に使う量よりたくさんの量を飲ませた場合、骨や臓器に異常のある子どもが認められたためです。

保湿ケアに加えたい「ビタミンCローション」

そろそろ肌の乾燥が気になる頃。ニキビ肌は水分量が少ないので、化粧水、美容液、乳液でしっかり保湿してからアダパレンや抗菌薬の外用薬を塗りましょう。アダパレンは1日1回、抗菌薬の外用薬は朝と夜の1日2回塗ります。また、朝と夜の洗顔後は、ビタミンCローションを塗ると効果的です。
「ビタミンCには活性酸素を除去する働きがあり、化粧水の前にビタミンCローションを塗るだけでもニキビができにくくなります」(角田院長)。

ニキビは再発を繰り返しやすい炎症性の慢性疾患。大人のニキビの要因はさまざまですが、ストレスが男性ホルモンの分泌に影響し、皮脂の分泌を高めるといわれています。日常生活では、自分に合ったストレス解消法でリラックスを心がけ、バランスのよい食事や十分な睡眠で悪化や再発を防ぎましょう。

監修 かくた皮膚科クリニック院長 角田 美英先生

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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