OMRON All for Healthcare

vol.153 「難聴」の最新治療 人工聴覚器や遺伝子検査も登場

LINEで送る 一覧に戻る
Vol.153 「難聴」の最新治療 人工聴覚器や遺伝子検査も登場

テレビの音量が大きいと家族から言われたり、会話中に相手の言葉が聞き取りにくかったり。耳の聞こえが気になることはありませんか。WHO(世界保健機関)の世界疾病調査(2008年版)によると有病率の高い三大疾病に「難聴」が入っています。65歳以上では約60%の人が聞き取りにくいと感じ、75歳以上では25%が日常生活に支障をきたすほどの難聴といわれています。難聴の最新治療に詳しい国際医療福祉大学三田病院 耳鼻咽喉科教授で聴覚・人工内耳センター長 岩崎 聡さんは、「日本における老人性難聴は1655万人と推測されています。最近は、スマートフォンにイヤフォンをつけて、長時間音を聞き続ける若い人が増えています。今後は、難聴になる人が増えてくるのではないでしょうか」と危惧します。

難聴の種類

耳の内部の構造は、外側から外耳、中耳、内耳に分けられます。難聴は、慢性中耳炎や真珠腫(しんじゅしゅ)性中耳炎など外耳や中耳の音を伝えるところに問題があって起こる「伝音性難聴」と、中耳の奥の内耳から聴覚中枢までの音を感じるところに問題があって起こる「感音性難聴」に大きく分けられます。感音性難聴には、生まれつき難聴をもっている先天性難聴、老化に伴って聞こえが悪くなる老人性難聴、騒音や長時間のイヤフォンの使用によって聞こえにくくなる外傷性難聴などがあります。また、中耳の病気を長く放っておくと、内耳に影響して難聴を引き起こすことがあります。このような伝音性と感音性の両方が重なった難聴は「混合性難聴」と呼ばれています。

難聴の新しい治療「人工聴覚器」

難聴で聞き取りに不自由がある場合、補聴器が用いられます。最近は、さらに聞こえるように高性能になった「人工聴覚器」が登場するなど、難聴の治療法が進歩して選択肢が広がっています。人工聴覚器は、補聴器を装着しても聞き取りが不十分だったり、耳漏やかゆみがあったり、耳の構造に問題があって補聴器が装着できない人が対象になります。「人工中耳」「骨導インプラント」「人工内耳」「EAS」(残存聴力活用型人工内耳)と呼ばれるものがあり、難聴のタイプや耳の構造に応じて選択されます。
「人工中耳」は、中耳にある耳小骨を振動させて、内耳に音を伝えます。この治療の対象者は、中耳炎の手術後に難聴が残ったり、耳の孔が狭かったり、塞がっていたりして補聴器が使用できない伝音性難聴の人です。「中耳炎の場合、手術で病気は治っても難聴が残り、患者さんは不満に感じていることがあります。このような場合は、人工聴覚器で聞こえるようになります」(岩崎センター長)。また、同じ対象者では「骨導インプラント」も用いられます。これは側頭骨を介して、音の情報を内耳に直接伝える仕組みになっています。

突発性難聴も諦めないで

感音性難聴には、「人工内耳」や「EAS」が用いられます。「人工内耳」は、内耳に電極を挿入して、電気刺激で音を聞き取る仕組みです。EASは、人工内耳と補聴器の両方の機能を兼ね備えたもので、ハイブリッド型とも呼ばれています。補聴器で低い音は聞こえても、高音などが聞こえない人などが対象です。
突然、片方の耳が難聴になる突発性難聴は、感音性難聴の代表的な病気です。いままでは、薬で治らないと他に治療法がありませんでした。「しかし、人工内耳による新しい治療が試みられ、これから高度先進医療として行われる予定です。突発性難聴の人も諦めないで、希望をもっていただきたいです」(岩崎センター長)。

難聴遺伝子検査のメリットとデメリット

難聴は検査法も大きく進歩しています。原因遺伝子がわかる「難聴遺伝子検査」は、すでに保険適用になっており、臨床遺伝専門医がいる医療機関で受けることができます。対象は、先天性や家族性の難聴、年齢が若くて聞こえがよくない人です。費用は小児が無料、成人は3割負担の1万2千円(2016年2月時点)。健康保険では、難聴の代表的な19遺伝子がわかります。
難聴遺伝子検査のメリットは、検査によって予後の予想がつくため、適切な治療が受けられることです。「0歳児では、検査の結果から人工内耳の適応とわかれば、1歳以上から手術を受けられます。その後は聞こえや言葉も発達しますので、ふつうに小学校に通えます」。また、難聴遺伝子検査のデメリットについては、結果が正確に伝えられないケースがあるということです。たとえば、原因遺伝子はわかっても、その遺伝子のどこに問題があるかによって、難聴だけを発症する場合とそうでない場合があります。「遺伝子検査は、正しく取り扱わないと逆効果になります。結果に不安があるときは、セカンドオピニオンを受けてください。外来にいらしていただけたら力になります。また、年齢が50歳前半と若い人では、原因遺伝子が見つかる可能性が高いので、気になる場合は、難聴遺伝子検査を受けた方がいいでしょう」と岩崎センター長はアドバイスします。

監修 国際医療福祉大学三田病院 耳鼻咽喉科教授
聴覚・人工内耳センター長 岩崎 聡先生


shadow
このページの先頭へ戻る