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vol.162 生活習慣病を合併して全身に影響する「乾癬(かんせん)」

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Vol.162 生活習慣病を合併して全身に影響する「乾癬(かんせん)」

冬になると皮膚の乾燥や手荒れが気になりますが、冬に悪化しやすい「乾癬(かんせん)」という病気を知っているでしょうか。皮膚が赤くなって盛り上がり、その表面に白色の厚いかさぶたができ、フケのように細かくなってはがれ落ちる症状があり、病名の音の響きから感染症と間違われやすいですが、人には感染しない皮膚の病気です。

乾癬は命に関わる全身の病気

乾癬は良くなったり、悪くなったりを繰り返しますが、命には関わらない病気といわれてきました。しかし、こうした乾癬に対する考え方は、大きく変わってきています。乾癬に詳しいNTT東日本関東病院皮膚科の五十嵐敦之部長は、「きっかけは、10年程前に乾癬が心筋梗塞のリスクファクターであると報告されたことです。乾癬を発症すると全身に炎症が惹起されて、心血管や内臓にも疾患を起こすことがわかり、重症の人では、平均寿命が短いこともわかってきたのです。乾癬は皮膚だけではない、命に関わる全身の病気です」と話します。乾癬と合併しやすいのは、肥満や糖尿病脂質異常症高血圧痛風などの生活習慣病で、その他には、目では難治性網膜ぶどう膜炎、腸では潰瘍性大腸炎やクローン病などを発症する人もいるということです。

乾癬と合併症を改善する生物学的製剤

乾癬の治療は、患部に薬を塗る「外用療法」、人工的に紫外線を照射して症状を改善させる「光線療法」、飲み薬による「内服療法」、新しい治療法として登場した「生物学的製剤」の4つの治療法があります。生物学的製剤は、2010年に乾癬の治療に承認された新しい治療薬です。インフリキシマブ(製品名レミケード)という点滴薬と、皮下注射で投与するアダリムマブ(製品名ヒュミラ)という薬が最初に登場し、その後作用機序の異なる薬が加わって、2016年の現在では、6種類の生物学的製剤が使用可能となっています。
乾癬の原因は、まだはっきりしていませんが、炎症を引き起こしているのは、腫瘍壊死因子(TNFα)とインターロイキンといわれる生理活性物質であることがわかっています。生物学的製剤は、これらの物質と結合することで、その働きを抑えるものです。「生物学的製剤は治療の中では最も強く、乾癬の皮膚症状と合併症の両方を抑えることができます。患者さんの中には、年4回の注射で良い状態にコントロールができて、ふつうに生活できるようになった人もいます。乾癬は、治療しないままでいると徐々に進行し、合併症を起こす可能性があります。軽症のうちに皮膚科を受診していただきたいです」と五十嵐部長は強調します。

頭皮や爪の症状に気をつけよう

乾癬の皮膚症状は、体のいろいろな部位に現れますが、最初に現れやすいのは頭皮です。肩の周りにフケが増えて、フケ症と思っていたら乾癬だったということもあるといいます。「フケが増える頭皮の病気には、脂漏性皮膚炎という別の病気もあります。この2つは、見た目がよく似ています。発症して間もない頃は見分けがつきにくいですが、ひじやひざにも、丸くて、白くて、カサカサした発疹が出てきたときは、乾癬の疑いがあります」(五十嵐部長)。
また、乾癬の症状は、手や足の爪にも現れることがあります。これは爪周囲の皮膚に炎症が起こるためです。乾癬では爪の一部が変形して浮いたり、爪に溝や点状の斑点が現れたりします。爪周囲の皮膚や爪に異変が現れた場合も注意が必要です。

肥満やメタボを解消し、刺激になる洗い方は避ける

乾癬は、一般的に肥満の人に多い傾向があり、食事や運動などの生活習慣も重要と指摘されています。「喫煙や飲酒をする人では乾癬が悪化しやすく、肥満やメタボを改善したら乾癬も良くなったという報告があります。効果の高い治療もあるわけですが、薬だけでなく、暴飲暴食をしないなど日常生活が大切です。発症がわかったら、病気を契機に体を大切にする意識を持ってほしい。乾癬の治療中で生活習慣病などがわかったときは、皮膚科の医師に積極的に相談してください」(五十嵐部長)。
また、乾癬の皮膚では、表皮の新陳代謝のサイクルが正常な皮膚より短くなっています。そのためにかさぶたが厚くなり、はがれ落ちやすいのです。このような皮膚をゴシゴシ洗うとそれが刺激となって乾癬の症状が現れたり、悪化したりします。頭皮の場合は、刺激の強いシャンプーはよくないことがあります。シャンプーは、自分の頭皮に合ったものを選び、体を洗うときは、ナイロンタオルを使ったこすり洗いは、やめた方がよいでしょう。

監修 NTT東日本関東病院 皮膚科部長 五十嵐 敦之先生


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