vol.165 体質改善で治す!ダニアレルギーの「免疫療法」

健康・医療トピックス

くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ。春先は、スギ花粉による季節性のアレルギーが増えますが、一年を通したアレルギーには、ダニが深く関わっています。気管支ぜんそくの患者の場合、小児の90%、成人の50%以上は、ダニアレルギーが原因といわれています。「夜、寝ているときに症状が出る」、「掃除中や布団を干しているときに悪化する」。これらは、ダニアレルギーの典型的な症状です。ダニアレルギーと花粉症を併発している場合もあるので、スギやヒノキのあとも症状が続く場合は、ダニアレルギーも確認してみましょう。

vol.165 体質改善で治す!ダニアレルギーの「免疫療法」

アレルゲン免疫療法とは

日本におけるアレルギーの治療は、症状を抑える対症療法が中心でしたが、2015年にダニアレルギーに対する「アレルゲン免疫療法」が健康保険の適用になり、根治を目指した治療が可能になっています。ダニアレルギーの原因治療は、要望が高いにもかかわらず、諸外国より後れをとってきました。アレルギー疾患に詳しい埼玉医科大学呼吸器内科の永田真教授は「日本もようやく国際社会と同様に、アレルゲン免疫療法が普及し始めている」と現状を話します。

アレルゲン免疫療法とは、病原となるアレルゲン(ダニエキス)を持続的に体内に投与することで、ダニに対する免疫をつけて、アレルギーを起こしにくくする治療です。治療方法として、従来行われてきた「皮下免疫療法」と、2015年から保険適応になった「舌下免疫療法」の2種類があります。いずれも治療は長期(3年〜5年)にわたり、副作用を引き起こす可能性もあるので、それぞれのメリット・デメリットをしっかり理解した上で、選択することが必要です。

  1. 皮下免疫療法
    週に1回、ダニアレルゲンエキス製剤を皮下に注射する方法です。注射エキスは低い濃度から始めて、だんだんと濃くしていきます。注射による痛みがあり、濃度が濃くなるにつれ、局所にかゆみや腫れが出現することも。きわめて稀に、重篤な副作用(アナフィラキシーショック)が生じる可能性があります。スギ花粉症、ダニアレルギーを同時に治療したい人におすすめです。
  2. 舌下免疫療法
    ダニアレルゲンエキス製剤を舌下に投与します。錠剤は2種類あり、濃度の低いものから始めて、毎日1回服用します。途中で休薬すると、十分な効果を得られなくなります。薬を舌の下に入れるだけなので痛みはなく、皮下免疫療法に比べると副作用が少ないため、小児におすすめです。ただし、スギ、ダニを同時に治療することはできません。

即効性のある入院治療もある

注射による治療は、通常、週1回通院し、約半年かけて効果の出る維持量まで増量することが一般的ですが、埼玉医科大学病院では、短期間の入院で急速に導入する治療も行っています。「これはヨーロッパで実施されている治療で、日本では私どもが先駆けです。半年かかる治療を6日間の入院で行います。即効性があり、また確実に完遂できる利点があります。スギ花粉症も一緒に治療したいという患者さんや、毎週通院は大変という方に喜ばれています。入院費用も3食ついて1日当たり1万円程度(3割負担の場合)です」(永田教授)。退院後は、月1回のペースで外来での治療を3年ほど続ける必要があります。

長期的な予後の改善に効果

ダニアレルギーによって気管支ぜんそくなどを発症すると、ダニ以外のスギ花粉やイネ科の花粉、食物アレルギー、動物、真菌類などにも抗体ができて、やがていくつものアレルギー疾患を併発するようになります。効果の特長について永田教授は、「アレルゲン免疫療法は、その広がりに歯止めをかける抑止効果と、アレルギー性の鼻炎や結膜炎などの症状にも包括的に効果があり、長期的な予後の改善につながる」と話します。

注射によるアレルゲン免疫療法は、薬の量や免疫の複雑な仕組みが関わるため、対応できる医療機関が限られますが、舌下免疫療法は、耳鼻咽喉科や呼吸器内科、小児科でも受けられる場合があります。根治を希望する場合は、医療機関に相談してほしいと永田教授はアドバイスします。

ダニによる食物アレルギーや土カビにも注意

日常生活でアレルギーを防ぐには、原因を避けることが最も大切です。ダニは室内のいたるところに存在し、完全には除去できないので「毎日こまめに掃除をする」「ダニが繁殖しやすいカーペットは使用しない」「室内の通気」などを心がけましょう。

最近では、ダニが繁殖したパンケーキミックスやお好み焼き粉などを食べることで「パンケーキ症候群」と呼ばれる食物アレルギーを起こすこともわかっています。ダニは高温多湿を好み、加熱してもアレルゲンの活性が残るので厄介です。使いかけの粉類は冷蔵庫にすぐに入れるようにしましょう。

また、ペットを飼っている人では、ダニ以外にペットに対するアレルギーや、さらに土カビにも要注意。土カビは土壌中にいる真菌類で、イヌやネコを介して家の中に持ち込まれます。このカビに対して抗体を持っている気管支ぜんそく患者では、症状が重症化します。たとえペットを飼っていなくても、エアコンのフィルターなどにも存在していることもあるので、フィルターの掃除も忘れないようにしたいものです。

監修 埼玉医科大学 呼吸器内科 教授
埼玉医科大学病院 アレルギーセンター センター長 永田真先生

(参考)
『ダニアレルギーにおけるアレルゲン免疫療法の手引き(改訂版)』一般社団法人日本アレルギー学会
https://www.jsaweb.jp/uploads/files/180618dani.pdf

更新日:2021.03.26

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