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vol.171 女性の更年期障害と睡眠

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Vol.171 女性の更年期障害と睡眠

睡眠時間が短い人は、肥満や糖尿病、高血圧、メタボリックシンドロームになりやすく、うつ病を発症するリスクが高いなど、近年、睡眠と健康の関連が注目されています。睡眠については、1日の平均睡眠時間が5時間から6時間未満が増加しており、特に40~50歳代の男女で高くなっています。また、睡眠の質は、男性より女性のほうが不満を感じていることが分かっています。40~50歳代の女性といえば、更年期と重なります。不眠は、更年期障害やうつ病で起きる症状の1つです。更年期と睡眠は、中高年からの健康や病気予防のために知っておきたい大事なキーワードです。

更年期のゆらぎが不眠の一因

厚生労働省の平成27年「国民健康・栄養調査」(2017年3月公表)によると、睡眠の質に不満を感じる中高年の女性は多く、その内容は40歳代、50歳代ともに「日中に、眠気を感じた」が最も高く、約4割を占めます。次いで「睡眠時間が足りない」「睡眠全体の質に満足できない」という回答が高くなっています。
40~50歳代の女性は、なぜ、睡眠に不満を感じているのでしょうか。更年期障害に詳しい東京医科歯科大学女性健康医学講座の寺内公一教授は、「女性ホルモンのエストロゲンが、セロトニンなどの増減や活性に関与していることが一つあるでしょう。女性ホルモンの低下だけが原因なら、60代や70代にも睡眠の不満はあるはずですが、必ずしもそうではありません。女性ホルモンが完全に低下する前の、大きくゆれ動く更年期が問題です」と話します。

更年期の期間と原因

更年期とは、閉経前後10年くらいの期間を示します。この間に表れるさまざまな症状を更年期症状、日常生活に支障をきたすものを更年期障害と呼びます。更年期障害の原因は、女性ホルモン(エストロゲン)の低下に伴う身体の変化と、家庭や職場などの対人関係、子どもの独立、家族の病気や介護、死別などのストレス、本人の性格などが総合的に関わって発症するとされています。

更年期障害の症状

更年期障害には、多種多様な症状があります。定まらない症状をひとまとめにして不定愁訴と呼ぶこともありますが、主な症状は、血管運動神経症状、身体症状、精神症状の3つに大きく分けられます。

◆血管運動神経症状 ほてり、のぼせ、発汗など
◆身体症状 冷え、しびれ、めまい、動悸、胸痛、息苦しさ、頭痛、肩こり、腰背部痛、関節痛、疲れやすいなど
◆精神症状 イライラする、抑うつ気分、不安、不眠、うつなど

更年期障害の治療法

更年期障害によって生活の質が低下しているときは、治療することができます。治療法には、ホルモン補充療法や漢方薬などがあります。ホルモン補充療法は、分泌が低下した女性ホルモンを補って、閉経前の状態に近づける治療です。ほてりやのぼせ、発汗などの症状に対して有効といわれています。
漢方薬は、東洋医学の基本概念である気・血・水の乱れを整えることによって、さまざまな症状を改善します。漢方薬は体質や症状などに応じて処方されますが、加味逍遥散(かみしょうようさん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)がよく用いられます。

眠れていても眠れた実感がないことも

更年期の女性は、あまり眠れていないと感じている人が多いわけですが、睡眠を客観的に評価した研究では、女性は男性より長く眠り、よく眠れているという報告もあります。男性より睡眠時間は長く、眠っているのに眠れた実感がない。このような複雑さも女性の睡眠の特徴です。これについて寺内教授は、「不安やうつを伴う気分障害は、女性に多いことと関係があるのではないか」と指摘します。

更年期に発症するうつ病にも注意

気分[感情]障害の一つであるうつ病は、男女で差があり、女性の発症は男性の約2倍といわれています。平成26年「患者調査」(2017年7月公表)では、気分[感情]障害(躁うつ病を含む)の全国の患者数は、男性41万8千人、女性70万人。女性の罹患者が多いことが分かります。
女性のうつ病は、思春期、出産後、更年期、高齢期に発症しやすく、睡眠の質の低下に、うつ病が隠れていることがあります。更年期に発症するうつ病は、更年期障害の症状と似ていたり、合併していたりするため、本人も気づかないことがあります。「強い不安」「不眠」「食欲低下による体重の減少」は、うつ病にも共通する注意したい症状です。更年期障害がなかなかよくならない場合は、女性の心身医学に詳しい「更年期外来」や「女性外来」、メンタルの専門家である心療内科や精神科に相談してみましょう。

監修 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 女性健康医学講座 教授 寺内 公一先生


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