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vol.172 子どもの「ADHD」を正しく理解しよう

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Vol.172 子どもの「ADHD」を正しく理解しよう

面白そうなことがあると席を離れて歩き出す、忘れ物が多い、順番を待っていられない……。これらは、ADHD(注意欠如・多動性障害)によく見られる症状。ADHDは、「不注意」「多動性」「衝動性」の3つの症状を特徴とする行動の障害で、一般的には7歳以前から症状が現れます。知的な障害はなくても、行動に障害があるため、本人に学習の問題が生じたり、他の児童生徒に影響が及んで孤立やいじめなど二次的な問題を引き起こします。行動の問題は、脳の発達に伴って12歳ごろから減りますが、最近では大人のADHDも知られるようになってきました。発達障害に詳しい東京都立東部療育センターの加我牧子院長は「小学校高学年から中学生くらいになると多動性はかなり落ち着き、不注意が目立つことは分かっていましたが、大人になってもADHDの症状で困っている方がいるということが分かってきました」と話します。

他の発達障害が合併していることが多い

ADHDは、脳の機能になんらかの障害がある発達障害の一つです。平成24年に文部科学省が実施した調査によると、知的な発達に遅れはなく発達障害の可能性があって学習や行動に困難がある児童生徒は、6.5%程度いることが分かっています。ADHDは、他の発達障害と合併している人が少なくありません。「5~6歳ごろまではADHDと思っていたら、後から自閉スペクトラム症でもあると分かったり、ディスレクシアがあったということもあります」(加我院長)。ディスレクシアとは、文字の読み書きの習得に困難があり、「発達性読み書き障害」とも呼ばれています。知的な能力や勉強不足が原因ではありません。

症状がよく似た別の病気に注意

また、症状がよく似た別の病気ということがあります。てんかん、甲状腺機能亢進症、副腎白質ジストロフィーなどは、鑑別が必要な病気です。「副腎白質ジストロフィーは、ごくまれな病気ですが、ADHDと間違われた患者さんがいらっしゃいます。まれに別の病気が隠れているので、おかしいと思ったら、詳しい診察を受けたほうがいいと思います」。
副腎白質ジストロフィーは、脳や脊髄の神経細胞の変性、副腎の機能不全を特徴とする難病です。子どもでは学力の低下、落ち着きがないなど行動の異常が現れます。また、病気以外では、虐待されている子どもがADHDに似た行動を示すことが分かっています。

治療は、まずは「環境調整」から

ADHDは、いけないと思う前に行動が先になり、なかなか抑制がききません。少し待っていればいいことが待てないなど、行動に問題が起きます。これは、脳の実行機能と報酬系の機能がうまく働いていないためと考えられています。こうしたADHDに対する治療は、まずは「環境調整」を行います。叱り続けるのではなく、良いところを探してほめること。そして、たとえば忘れ物が多い場合、どうしたら忘れないか。本人と一緒に工夫して忘れ物リストを作るなど、自分でできる対策を立てるのです。

ADHDの治療薬と効く仕組み

環境調整だけでは難しいときは、薬の併用が有効です。ADHDの治療薬は、メチルフェニデート(商品名コンサータ)、アトモキセチン(商品名ストラテラ)、グアンファシン(商品名インチュニブ)が健康保険の適用になっています。「メチルフェニデート」は、神経伝達物質のドパミンの再吸収を抑えて、神経と神経の間に保っておく薬です。アトモキセチンは、ノルアドレナリンが前の神経に戻っていかないように働きます。グアンファシンは交感神経の働きを抑えて、過剰な活動性や攻撃性を抑えようという薬です。ADHDの原因はまだ分かっていませんが、脳の神経伝達物質の量と働き方がうまくいっていないようです。多動で生活に困難がある場合は、薬を用いると症状を抑えることができます」。
薬は1日1回服用します。アトモキセチンは、効果が現れるまで1カ月ほどかかります。服薬前に主治医によく聞いて自己判断で薬をやめないことと、本人が納得して飲むことが大切です。

長所を見つけて、家族にも心のケアを

子どもがADHDと診断されると悩む家族もいますが、悪いことばかりではないと加我院長は強調します。「ADHDのお子さんは、好奇心が旺盛で知的な水準が高く、好きなことには集中できます。医師の中にもADHDの特性を持った人がいます。また、気持ちがやさしく、思いやりのある子が多いのです。その子の良いところを見つけてあげましょう」。
また、行動に障害のある子どもとの暮らしは、家族にもストレスが生じます。ADHDの子どもに手がかかると、他のきょうだいが構ってもらえず我慢しています。わずかな時間でも、他の子どもと一緒に過ごすスペシャルタイムをつくったり、頑張っている母親をサポートしてあげてほしいと、加我院長はアドバイスします。ADHDの子どもと一緒に暮らす家族全員をねぎらい、応援することが重要なのです。

監修 東京都立東部療育センター 院長 加我 牧子先生
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 名誉所長


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