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vol.173 高血圧の最新治療

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Vol.173 高血圧の最新治療

高血圧は、原因が分からない本態性高血圧と、なんらかの原因や病気によって起きる二次性高血圧に大きく分けられます。一般的に高血圧と診断されると、降圧薬を服用して血圧を下げる治療を続けることになりますが、薬を服用してもなかなかよくならない高血圧があります。このような治療抵抗性高血圧に対する新しい治療法の治験(臨床試験)が進められています。

治験が行われている「腎デナベーション法」

これは「腎デナベーション法」と呼ばれる治療法です。東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科の池田長生助教らが2016年10月から取り組んでいます。血圧は、腎臓や脳とも関連があります。腎臓から脳へ、脳から腎臓に交感神経がつながり、お互いに情報をやりとりしていますが、高血圧の原因の一つは、交感神経が過剰に働くことと考えられています。たとえば、「血液が足りないから増やして」と腎臓から脳にシグナルが伝わると、脳では「血圧を上げろ」と指令を出します。そのため、血圧の上昇が増幅されて高血圧になります。
腎デナベーション法は、こうした交感神経の過剰な伝達を遮断しようというもの。脚のつけ根からカテーテル(細い管)を入れ、左右の腎動脈に巻き付いている交感神経を焼き切り、活動を抑えて血圧を下げます。今は研究の段階で保険適用にはなっていませんが、期待されている新しい治療法です。「治療の対象は、3種類以上の降圧薬を服用してもよくならない治療抵抗性高血圧の患者さんです。当院の治験は、超音波を使って血管の中から交感神経を焼き切ります。今後は、高周波を使った治験も行う予定です」と池田さんは、現状を話します。

治療でよくなる「腎血管性高血圧」

高血圧の中で本態性高血圧は約9割、二次性高血圧は約1割と言われています。後者のの中に「腎血管性高血圧」という病気があることをご存じでしょうか。腎血管性高血圧は、腎臓の血管が細くなったり、詰まったりすることによって発症する高血圧です。
腎臓は、体の中の水分量をコントロールしている臓器で、血圧と密接な関連があります。腎臓の中の血液が足りなくなると血液の量を増やそうとします。水分をため込もうと働くため、血圧が上がってしまいます。腎血管性高血圧の主な原因は、加齢による動脈硬化ですが、若年者でも発症します。その場合は線維筋性異形性という病態によって起きやすいと言われています。
このようにして発症する腎血管性高血圧は、細くなった腎臓の血管にステント(筒状の器具)を入れる「経皮的腎動脈形成術」(PTRA)という治療法が有効です。血管を広げて、血行を改善することで高血圧を治療することができます。

隠れた二次性高血圧に要注意

腎血管性高血圧の治療法は、循環器を専門とする医師の間ではよく知られています。しかし、病気を知らなかったり、気づかないことがあり、治療されていない場合もあると、池田さんは指摘します。「腎血管性高血圧は、この病気を疑って、超音波検査やCT検査で腎臓の血管を詳しく調べないと見つかりません。本態性高血圧と診断された人の中にも含まれていると思います」。
また、この他の二次性高血圧としては、ホルモンの過剰分泌によって発症する高血圧があります。「原発性アルドステロン症」、「クッシング症候群」、「褐色細胞腫」、「甲状腺機能亢進症」、「甲状腺機能低下症」が代表的です。これらも原因の病気を治療することで血圧の改善が可能です。

血圧に気をつけて高血圧を予防

厚生労働省の「平成26年患者調査」によると、高血圧性疾患の患者数は10,108千人。65歳以上の疾病分類別でみた患者数は、75歳以上では、入院、外来ともに「循環器系の疾患」が最も多いという結果になっています。血圧は加齢とともに徐々に高くなります。高齢者は注意が必要です。
また、高血圧は若い人でも発症します。「去年まで正常値だったのに、今年になって急に高血圧になって下がらないというときは、二次性高血圧が疑われます。なにか病気が隠れている可能性があります」。高血圧は自覚症状がほとんどなく、若い人ほど軽く受け止めがちです。急な血圧の上昇に気をつけましょう。
高血圧の大半を占める本態性高血圧は、生活習慣が主な要因です。塩分の取り過ぎ、食べ過ぎによる肥満、運動不足などに注意しましょう。また、診察では正常な血圧なのに、それ以外で高くなる「仮面高血圧」があるため、家庭で血圧を測ることがとても大事です。「診察している高血圧の患者さんには、可能であれば、朝と晩に血圧を測っていただきます。診察でも測りますが、家庭血圧は毎日の血圧ですから信頼できます」。ふだんから血圧を意識しておくことは、高血圧とそれに関連する脳や心疾患の予防につながります。日頃から血圧を測定して健康管理に役立てたいものです。

監修 東邦大学医療センター 大橋病院 内科講座 循環器内科 助教 池田 長生(のぶたか)先生


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