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vol.174 風邪や下痢に注意!「ギラン・バレー症候群」

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Vol.174 風邪や下痢に注意!「ギラン・バレー症候群」

手足に力が入らない、指先がしびれる……。このような自覚症状が現れるギラン・バレー症候群は、ウイルスや細菌の感染がきっかけで発症する末梢神経の病気です。風邪や下痢の感染がきっかけになることが多く、典型的な症状は、手足の筋力低下や脱力感、しびれですが、自律神経に影響して血圧が乱高下したり、脈拍が速くなったり、遅くなったりすることもあります。これからの季節は風邪をひきやすく、最近は冬に食中毒も増えています。予防対策も含めて知っておきたい病気です。

ギラン・バレー症候群とは

ギラン・バレー症候群は、外敵から身を守ってくれる免疫の働きが、末梢神経を攻撃してしまう自己免疫疾患です。ギラン・バレー症候群に詳しい杏林大学医学部第一内科・神経内科の千葉厚郎教授は、「発症者は人口10万人当たり1~2人ですが、10歳ごとに区切った集団の中で発症率を見ると、10歳上がるごとに1割ずつ増えています。自己免疫疾患というと若い人に多いというイメージがありますが、高齢者で起こりにくいというわけではありません」と話します。
ギラン・バレー症候群は、自然に治ることもあるそうです。では、そもそもどうして末梢神経が攻撃されてしまうのでしょうか。それは、免疫の働きと末梢神経の構造に関わりがあるようです。
ウイルスや細菌が体内に侵入し感染すると、体の中では異物を排除しようと抗体が作られます。抗体は誰にでも作られるものですが、異物の表面にある成分と似た構造をしたものが末梢神経の側にもあるため、攻撃の対象と認識されてしまうのです。抗体による攻撃は、一過性で終わります。しかし、攻撃を受けた末梢神経のダメージが大きい場合は、重症になります。神経は傷つくと回復が遅いため、治るまでに時間がかかったり、後遺症が残ったりすることもあるのです。

診断の方法と治療法

ギラン・バレー症候群の診察は、病歴や症状を問診し、自覚症状を検査で確かめます。主な検査法は、「末梢神経伝導検査」(末梢神経を刺激して筋肉の反応を調べる)と「腰椎穿刺(ようついせんし)」(脳脊髄液を採取してその中のたんぱく質と細胞の割合を調べる)です。また、最近では、採血で自己免疫を調べる「抗糖脂質抗体」の検査も行われています。「この抗体は感染によって誘導され、末梢神経に作用することが証明されています。血液検査で分かるため、患者さんにとって身体の負担の少ない検査です」(千葉教授)。
治療法は、発症の初期で症状が軽い場合は、経過観察となり、ビタミンB12やビタミンEの内服薬が処方されます。歩くことが不自由になるなど、中等度以上では「経静脈的免疫グロブリン静注療法」や「血漿浄化(交換)療法」が行われます。前者は献血された血液から人の免疫グロブリンを精製し、点滴で投与します。末梢神経を攻撃する自己抗体を打ち消す効果があります。血漿浄化(交換)療法は、血液中にある自己抗体を体外に導いて取り除く治療法です。

重症に対する治験が進行中

重症に対しては、これらの治療法では効果が得られない場合があり、現在、エクリズマブ療法の治験(臨床試験)が進められています。末梢神経への攻撃は、抗体がくっついた後に補体という免疫に関わる因子が活性化して進むと考えられています。その補体を遮断しようという治療です。エクリズマブは、すでに他の病気の治療薬として承認されており、重症のギラン・バレー症候群に対する効果について研究中です。

「手洗い」「うがい」「鶏肉は加熱」で予防できる

千葉教授によると、発症のきっかけとなる風邪は鼻かぜが多く、下痢はカンピロバクターによる細菌感染が多いということです。「カンピロバクターは一種の食中毒で、鶏肉から感染しやすい細菌ですが、加熱することで死滅します。カンピロバクターによるギラン・バレー症候群は重症化しやすい傾向があるので、鶏肉は十分に加熱してください。風邪には手洗い、うがい、体を冷やさないこと。どちらも予防ができます」。

手足以外の症状に注意しよう

また、末梢神経は全身に張り巡らされ、筋肉は神経の指令によって動いています。神経は電気信号を伝える電線のようなものなので、「顔面神経の麻痺」「首、肩、上肢が動かない」「のどの麻痺による嚥下障害」「呼吸ができない」という症状も起きます。感染がきっかけで発症するギラン・バレー症候群の中で眼球が動かせない病気は、「フィッシャー症候群」と呼ばれ、「物が二重に見える(複視)」「めまいとは違うふらつき」が特徴です。この病気については、千葉教授が原因物質を発見しています。
風邪や下痢が治った後、症状がだんだん重くなるときは、発症が疑われます。早めに神経内科を受診しましょう。

監修 杏林大学医学部 第一内科・神経内科 教授 千葉 厚郎先生


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