vol.27 腰椎椎間板ヘルニアの自然治癒ケース

健康・医療トピックス
腰痛に悩む日本人は10人に1人といわれています。その中の約10%に当たる120万人の人が腰椎椎間板ヘルニアを経験しています。
腰痛と坐骨(ざこつ)神経痛の苦しみに襲われる腰椎椎間板ヘルニア。手術になるのは20%というのが現状ですが、そんな中、重症で手術が必要であると思われるケースでも、実は自然治癒するケースが明らかになってきました。

その腰椎椎間板ヘルニアとはどのような疾患か。背骨の腰椎と腰椎の間にあってクッションの役割を果たしているのが椎間板。椎間板の中心部にはゼリー状の柔らかい髄核があり、周囲を線維輪(せんいりん)という厚い組織に囲まれています。その椎間板に大きな力が加わって亀裂が生じ、髄核が線維輪から外にはみ出してしまった状態を腰椎椎間板ヘルニアといいます。
はみ出した髄核が神経を圧迫するため、坐骨神経痛(足の痛み・しびれ)が起こるのが特徴です。

椎間板ヘルニアの状態は以下の4つに分類されています。

この分類の(4)ではヘルニアになって2カ月くらいで“自然治癒”してしまい、また、(3)でも自然治癒の可能性が高いのです。
ヘルニアの状態は、MRI(磁気共鳴画像装置)検査で分かります。MRIでは後退靭帯が黒い線として映ります。この黒い線を突き破っているか否かが自然治癒可能か否かの判断になるのです。ブラックラインを髄核が突き破っていると、白血球のひとつマクロファージ(大食細胞)がそれを異物とみなして食べてしまいます。ですからヘルニアは自然治癒してしまうのです。

これからはMRI検査で自然治癒可能と診断された場合は、約2カ月は安静にする保存療法でヘルニアを治しましょう。手術とは“サヨナラ”できます。

vol.27 腰椎椎間板ヘルニアの自然治癒ケース

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

商品を見る