vol.33 気付きにくい先端巨大症

健康・医療トピックス
病気の症状はさまざまですが、からだの形状が変化する病気のひとつに『先端巨大症』があります。これは成人で発症するもので、骨の発育期に発症した場合は身長が異常成長してしまうので『巨人症』といわれます。
先端巨大症は手足の先端、額、あご、唇、舌などが肥大し、ろれつが回らなくなったり、指輪や靴のサイズが合わなくなったりします。当然、顔つきも変わってきます。

ところが、患者本人はその変化になかなか気付くことはなく、「私は昔からこういう顔だった」とか「最近、運動不足で太ってきたようだ」などと思っていることが多いようです。それというのも、それらの変化に5~6年と長い期間がかかっているのが発見を遅らせているようです。あごの骨などが変化すると、治療を始めても骨の変化までは治らないので、早期発見・早期治療が重要となります。
先端巨大症は脳下垂体にできた腫瘍から、ホルモンが多量に分泌することによって起こる病気です。脳下垂体は頭蓋骨のほぼ中心にあって、全身のホルモンの中枢です。ここにできる腫瘍としては4つありますが、そのうちの26.5%を占めるのが『成長ホルモン産生腺腫』です。この腫瘍は成長もゆっくりで他の臓器に転移することも少ない良性腫瘍です。
もし「少しでも変だ」と思ったら内分泌内科を受診しましょう。
先端巨大症と診断された時の治療の第1選択は手術となります。それは開頭手術ではなく、経鼻的下垂体手術で行われます。すでに100年以上行われている確立した手術で、上の前歯のつけ根の口腔粘膜を切開し、鼻腔の裏側から腫瘍を切り取ります。開頭手術のように傷跡が残ることがないメリットもあり、脳外科手術の中でも安全な部類に属する手術です。
できる限り腫瘍を取り除くことで50~60%は治ります。しかしすべて取り除けなかった場合には、術後に薬物治療を行います。サンドスタチンという薬を月に1回、病院で注射してもらうと成長ホルモンをコントロールすることができます。
ともあれ、早期発見が大事です。それには、時々、5年くらい前の写真を見ながら、今の自分の顔を鏡にうつして比べてみるとよいでしょう。たまたま出かけた同窓会で、あまりの変化を指摘されて発見に結びついたケースもありました。
vol.33 気付きにくい先端巨大症

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執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

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