vol.36 頑固な「爪水虫」を退治する!!

健康・医療トピックス

慢性感染症の中で、日本人が意外に大らかに対応してきたのが「水虫」。そのためか、日本の水虫患者は2470万人にも上ります。しかし、ここへきて多くの水虫患者が治療に動き始めました。そこでわかったのが、実は水虫患者の2人に1人が、最も治りにくいといわれている「爪水虫」を併発していることです。家族に嫌われないためにも、この夏はしっかり爪水虫を治しましょう。

水虫は真菌(しんきん)の一種の白癬菌(はくせんきん)が足や手、爪に感染して起こります。それ以外の部位に感染した場合は、頭では「しらくも」。股では「いんきんたむし」と呼ばれています。

白癬菌は必ずしもからだにくっついているのではなく、人間の生活環境中にばらまかれています。例えば、プールや共同浴場など、大勢の人が裸足になるところです。家の中にも当然存在していますが、水虫菌の感染力は即刻ではなく、最短でも48時間といわれています。その間に、きちっとお風呂に入ってきれいに洗っていれば、感染することはありません。しかし、一度感染してしまうと治療をしっかり行わないと治らないのが厄介です。

水虫には以下の種類があります。

  • 小水疱(しょうすいほう)型
  • 趾間(しかん)型
  • 角質増殖型
  • 爪白癬(つめはくせん)

この中で治りにくいので知られているのが「爪白癬」すなわち「爪水虫」です。

これは爪の内部に白癬菌が入り込んだもので、爪が白や黄色に濁る、爪が厚くなる、爪がボロボロになる、などの症状がみられます。ひどくなると、爪が厚くなって靴が履きにくくなったり、歩くのも困難になったりすることも。

ほかの水虫は1回1回治療薬を3カ月間塗り続けることで完治しますが、爪水虫の場合は白癬菌が爪の中に入り込んでいるため、そういうわけにはいきません。

しかし、あきらめるのは早計です。今は服薬期間が短く、効果の高い治療薬が登場しています。

まず、代表的なものとして『ラミシール』と『イトリゾール』があげられます。どちらの薬も塗り薬ではなく経口薬です。ラミシールの場合、1日1錠を6カ月間服用し続けます。一方、イトリゾールでは1日2回、4錠ずつの服用を1週間続け、次の3週間は服用を休む「パルス療法」を行います。これを3回繰り返して、3カ月の治療の治療を行います。

一方、イトリゾールの場合は「パルス療法」が行われます。1日2回、4錠ずつを服用。これを1週間続け、次の3週間は服用を休みます。この4週間を1クールとして、3クール実施するのがパルス療法です。パルス療法では治療が3カ月で終了した後も薬効が続いており、6カ月でほぼ治ります。

ラミシールには肝機能に問題が生じるケースがあり、イトリゾールには飲み合わせに注意すべき薬がたくさんあるため、治療開始前と治療開始後2カ月は月1回の血液検査が必要です。問題のない患者さんのみに薬が処方されます。

さらに2018年には、20年ぶりの経口薬、ホスラブコナゾールの製造販売が承認されました。1日1錠を3カ月間服用します。ラミシールやイトリゾールについては、食後または食直後に経口投与することが決められていましたが、ホスラブコナゾールの場合、食事に関係なく服用できるのが特徴です。また、既存の薬剤に比べて、副作用や飲み合わせの問題が起こる可能性が低いと考えられています。

「爪水虫は治らない」とずっといわれ続けてきましたが、もはや過去の言葉になりつつあるようです。

ただし、正確には治癒率は70~80%で、残り20~30%の患者さんは治療を終えてなお、爪水虫を引きずっているといいます。後者に当てはまる場合は、担当医とその後の対応について十分に話し合いましょう。

vol.36 頑固な「爪水虫」を退治する!!

(参考)
「20年ぶりの経口爪白癬治療薬」日経メディカル
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/201802/554751.html
「皮膚科Q&A」日本皮膚科学会
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa10/q24.html

更新日:2021.01.29

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