vol.4 多汗症の悩み、その解決法

健康・医療トピックス

「30度を超えるような暑い日ではない」「パワフルに運動をしたわけでもない」「手に汗を握る応援をしたわけでもない」。それなのに、手のひらや足の裏に汗をかいて常に濡れている、という人がいます。なかには、手をギュッと握ると汗がしたたり落ちる人もいるようです。このように単なる汗っかきのレベルを超え、異常な発汗が認められる状態を「多汗症」と呼びます。もちろん、れっきとした病気です。

本人にとっては深刻な問題で「人が気持ち悪がるので握手できない」「試験中に答案用紙が汗で濡れて、破れてしまうことがある」「床を裸足で歩くとペタペタ音がするので裸足になれない」「下駄をはくと足の形が残る」などなど、悩みが尽きません。私たちが汗をかくのは体温調整が目的で、体温が上がったときに脳の視床下部から信号が出され、その情報が脊髄を通り、自律神経の交感神経から汗腺に伝達されます。多汗症の原因はまだはっきりとわかっていませんが、発汗を促す交感神経の反応が人よりも強いのではないかと考えられています。ただ、なぜ交感神経が過敏になるのかは、いまだに解明されていません。

多汗症にはさまざまな状態があり、診断で以下の3段階に分けられます。

グレード1
手は汗で軽く湿っているものの、よく見ないと汗ばみがわからない程度。

グレード2
手の汗ばみがはっきり見える。濡れてはいるが、汗がしたたり落ちるほどではない。

グレード3
手のひらにかいた汗が水滴になり、したたり落ちる状態。

治療方法は、医師と十分な話し合いを行い決定します。症状の改善には、汗止め液の塗布も有効ですが効果は数日間です。そこで、グレードが2~3で他の治療法で効果がない場合、手術を行うという方法はあります。

手術は「胸腔鏡下交感神経切除術」が行われます。両わきの下の皮膚に4ミリ程度の孔(あな)をあけ、そこから胸腔鏡と電気メスを組み合わせた管を挿入し、わきの下にある交感神経を切断するのです。手術時間は左右合わせて1時間程度。この手術で手のひらやワキなどの汗は止まる代わりに、ワキよりも下方の汗が増える「代償性発汗」という合併症が高い確率で起こります。日常生活において多汗症がどれほどの障害になっているかをよく考え、代償性発汗などのデメリットを考慮した上で、後悔しない判断をしましょう。

また、重度のワキの原発性腋下多汗症(原発性腋下多汗症)に対しては、ボトックス注射による治療が2012年11月に保険適用されました。1回注射すると4〜9ヶ月効果が持続しますので、年に1〜2回の注射で汗を抑えられます。保険適用になる条件や、わずかながら副作用のリスクがありますので、まずは医師に相談してみましょう。

vol.4 多汗症の悩み、その解決法

(参考)
『重症腋窩多汗症』東京高輪病院
https://takanawa.jcho.go.jp/重症腋窩多汗症/
『汗の病気−多汗症と無汗症−Q3原発性局所多汗症の原因は何ですか?』皮膚科Q&A(公益財団法人日本皮膚科学会)
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa32/q03.html

更新日:2021.07.09

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