vol.72 寝たきりストップ!骨粗鬆症の治療と予防

健康・医療トピックス
“ピンピンコロリ”が人々の願い――。ところが、日本人の健康寿命と平均寿命との間には差があり、多くの方々が数年間の寝たきりなど介護を受ける経験しているようです。
その寝たきりとなる原因の1つに「骨折・転倒」があります。厚生労動省による要介護原因の調査では、「脳卒中」「老衰」に次いで第3位。東京都の行った調査では、女性の原因の第1位になっています。
このように寝たきりの大きな原因となる「骨折」(「転倒」については転倒した結果、骨折となるケースが多い)ですが、骨折してしまいやすい最大の原因は、骨がスカスカになってもろくなる『骨粗鬆症(こつそしょうしょう)』です。
日本の骨粗鬆症患者数は、何と約1000万人!
寝たきりにならないために、骨粗鬆症の治療と予防は、早くから行うのが賢明です。治療は、「運動・日光浴」「正しい食生活」「薬物療法」が3本柱ですが、運動、日光浴、正しい食生活は、治療でもあり大いなる予防法でもあります。
まずは薬物療法についてみると、薬物治療の対象となるのは、骨粗鬆症による骨折のある人は「骨密度が若年成人平均値(20~44歳)の80%未満」、骨折のない人は「若年成人平均値70%未満」です。
第1選択肢となっている薬は、骨が壊れるのを抑えて骨量を増やす薬として高く評価されている『ビスホスホネート製剤』で、「アレンドロネート」、「リセドロネート」などが推奨されています。
このビスホスホネート製剤に、今年4月、日本で初めて創薬された「ボノテオ錠」が加わり、より高い評価を受けています。骨折抑制効果はビスホスホネート製剤といえども、50%が限界と思われていましたが、ボノテオ錠は何と59%の骨折抑制効果を示したからです。
そして、治療法であり、大いなる予防法でもある「日光浴」「運動」「正しい食生活」は10代からしっかり行いましょう。それは、最大骨量が20歳くらいで頂点になるからです。
日光浴は、体内でビタミンDが合成され、カルシウムの吸収を助けてくれます。ウォーキングなど外での運動中に自然と日光を浴びていますが、もちろん、直射日光を浴びる必要はなく、木陰に30分程度いるだけ、また、窓際にいたりするだけで大丈夫です。
運動については、10代の人々はクラブ活動などでしっかり身体を鍛えると、自然に骨の形成が促進されます。ダイエットは勧められません。治療としての運動は、医師の指導のもとに行うことが大切です。散歩がてらのウォーキング、テレビを見ながら背骨を少しそらす体操をするとか、台所仕事をしながらかかとを上げるといったように、楽しみながら行う運動が長く続けられるようです。
正しい食生活については、カルシウムとビタミンDをしっかり摂取しましょう。骨の原料はカルシウムなので、まずはカルシウムを摂取しないことには始まりません。
カルシウムは「乳製品」「大豆類」「小魚類」「緑黄色野菜」などに多く含まれていますから、1日にこの4つの食品群をすべて確実にとるようにすると、カルシウムはしっかり摂取できます。
そして、ビタミンDは、鮭、さんま、うなぎ、ひらめ、いさき、天日干し椎茸、キクラゲなどに多く含まれているので、上手にとりましょう。
また、タバコを吸う方は禁煙をお勧めします。タバコはカルシウムの吸収を阻害するからで、治療としては禁煙が鉄則です。
vol.72 寝たきりストップ!骨粗鬆症の治療と予防

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執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

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