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vol.91 心臓弁膜症に画期的な自己心膜を使った大動脈弁形成術

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Vol.91 心臓弁膜症に画期的な自己心膜を使った大動脈弁形成術 「心疾患」と聞くと、多くの人がまず頭に思い描くのが「狭心症」「心筋梗塞」。なんといっても日本人の死因第2位なので、当然といえば当然ですが、心臓弁膜症も推定患者数200万人と、患者の多い疾患で、年間約1万人が手術を受けています。
心臓弁膜症は心臓の弁に問題が生じ、さまざまな症状を引き起こし、最悪突然死に結びつくこともあります。
心臓には「僧帽弁」「大動脈弁」「三尖弁(さんせんべん)」「肺動脈弁」の四つの弁がありますが、心臓弁膜症の手術の約97%は僧帽弁と大動脈弁です。原因疾患は僧帽弁では僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁では大動脈弁狭窄症。その大動脈弁狭窄症で、今、画期的な手術が行われ始めました。
心臓弁膜症の治療方法は、特殊カーボン製の“機械弁”、または牛や豚などを用いた“生体弁”に取り換える「弁置換術」です。機械弁は30年以上にわたり問題がないとの高い評価がありますが、血栓ができるのを防ぐために、抗凝固剤であるワーファリンを一生服用しなければなりません。一方、生体弁はワーファリンの服用は3カ月でよいものの、弁の劣化に伴い約15年で再手術となります。
これらの問題点を克服し、「できるならワーファリンを服用しないで、自分自身の体を生かした治療はできないものか」とういう、患者の声に応えた手術が「自己心膜を使用した大動脈弁形成術」です。心臓は心膜という膜に包まれています。開発者の東邦大学医療センター大橋病院(東京都目黒区)心臓血管外科の尾﨑重之教授は、その心膜を使用し、新しい弁を形成する技術を編み出したのです。2007年4月から東邦大学医療センター大橋病院の心臓血管外科で行われ、2010年7月時点で、苑田第一病院(東京都足立区)、仙台厚生病院(仙台市青葉区)でも手術が行われています。
 
まず、患者の自己心膜の一部を切除し、心膜の強度をあげるための溶液(グルタールアルデハイド)に浸します。次に、動脈硬化で石灰化して弁としての役割が不十分になった大動脈弁を切除。弁のサイズに合わせて自己心膜を裁断して、大動脈弁の切り取った位置に縫いつけます。そして、心臓を再始動させます。
自己心膜を使っているため異物ではないのでワーファリンの服用は不要。当然QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)は手術前を維持できるばかりか、人工物を使わないので感染に対する抵抗力も強い。さらに、「自己心膜を使用した大動脈弁形成術」は健康保険の利く手術とあって、手術を希望する患者が着実に増えています。

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