内臓脂肪がなぜ問題なの?

脂肪組織の働きは多岐にわたる

メタボリックシンドロームのベースに、なぜ肥満(内臓脂肪型肥満)があるのでしょうか。
内臓脂肪などを蓄積する脂肪組織は従来、余ったエネルギーを貯蔵する場所として考えられてきました。
ところが近年の研究によって、脂肪組織の役割はそれだけでなく、さまざまな人間の生体維持にかかわる物質(アディポサイトカイン)を合成・分泌し、血液中の糖質や脂質、あるいは血圧のコントロールなどに大きな影響を与えていることがわかってきました。

しかも、内臓脂肪が必要以上に増えると、こうした生理活性物質の分泌に異変が起こりやすくなります。その結果、次のようなさまざまな悪影響が出てきます。

  • インスリン抵抗性(インスリンの働きがよくない状態)を悪化させる。
    ⇒血液中の糖質を増やし、血糖値を上昇させる原因となる。
  • 蓄積された脂肪が分解されて、再び血液中に入りやすくなる。
    ⇒血液中の中性脂肪やコレステロールを増やす原因となる。
  • 血圧を維持する物質の機能が低下し、反対に上昇させる物質が分泌される。
    ⇒血圧の上昇をまねく原因となる。

上記の影響は、脂肪細胞から分泌される生理活性物質によって起こるのですが、生理活性物質にも「善玉」と呼ばれるものがあります。その代表的なものがアディポネクチンです。アディポネクチンには脂肪を燃焼させたり、動脈硬化を予防する働きがあります。しかし、脂肪の量が増えれば増えるほど、アディポネクチンの分泌が減ってしまう特徴があります。
また、レプチンも善玉と呼ばれる物質ですが、食欲を抑制したり、交感神経を刺激することでエネルギー消費を増やしたりします。ただ、同時に血圧を上げてしまうため、善玉とはいっても注意が必要です。
そのほか、内臓脂肪が増えると。超悪玉(小型LDL)コレステロールが増加して動脈硬化を促進したり、血栓を作りやすくするなど、複合的な影響が出ることもわかっています。