
ストレスによる血圧の上昇でもっとも注意したいのは、脳卒中や心筋梗塞などの引き金になることです。その典型は、スポーツ中の発作です。例えばゴルフでは、パットとティーショットのときに発作を起こすケースが目立ちます。緊張し息を詰めることで、血圧が急上昇するからです(※2)。冬の早朝ゴルフでは、寒さによるからだへのストレスも影響しています。 このようにストレスは、血圧の上昇と深い関連があります。ところが血圧が高めで、食事などに気をつかっている人でも、ストレスについては無関心ということが少なくありません。重大な発作を起こさないためにも、自分のストレスについて知っておくことが大切です。 (※1)人によっては反対に、病院で血圧を測定したほうが低い場合もあります。これは医師に診てもらうことで、安心感が増すことが理由と考えられています。また、最近話題となっている「仮面高血圧」は、昼間病院で測定すると正常血圧なのに、家庭で測定すると血圧が高いタイプ(とくに夜間・早朝が多い)のことで、高血圧が仮面をかぶったように隠れてしまう、ということからこう呼ばれています。 (※2)60歳以上の場合、スポーツ中の突然死がもっとも多いのはゲートボールです。高齢者が多いことが背景ですが、パット時などのストレスも大きな原因と考えられています。 |
||||||||
|
||||||||
| ストレスを受けると交感神経の働きで血管が収縮し、血圧が上昇する…従来は、簡単にそう説明されてきました。しかし、最近ではより科学的なメカニズムがわかってきています。 ストレス(とくに心理的なストレス)を受けると、脳(視床下部や脳下垂体)から副腎ホルモンが分泌されます。その刺激を受け、副腎からアドレナリン、神経末端からはノルアドレナリンが分泌されます。アドレナリンは、興奮したときなどに多く分泌される物質で、心拍数を高めます。また、ノルアドレナリンは交感神経を刺激し、血管を収縮させます。 こうした一連の作用は、ストレスに対抗するための防御反応なのですが、結果として血圧を上昇させることにつながります。 一方、私たちのからだではストレスによる緊張を和らげるため、副腎ホルモンを分解する酵素(アミノ酸化酵素)が分泌されます。副腎ホルモンが分泌されたり、酵素によって分解される過程で、体内には活性酸素が多く発生します。活性酸素は細胞を変質させ、がんや動脈硬化などの病気を発生させることが知られています(※3)。 最近の研究から、活性酸素によって私たちのからだが受ける酸化ストレスも、高血圧の要因であることが指摘されています(※4)。 (※3)活性酸素については、「はじめよう!ヘルシーライフ Vol.2(活性酸素を減らす生活術)」をご参照ください。 (※4)酸化ストレスとは、私たちのからだに備わっている抗酸化力を超えて、活性酸素が細胞などに与えるダメージをいいます。したがって酸化ストレスが大きいほど、からだが受けるダメージも大きくなり、血圧にも影響します。酸化ストレスは、高血圧だけでなく、インスリン抵抗性の要因としても注目されています。 |
||||||||
| ストレスによって一時的に血圧が上昇しても、健康な人ならしばらく時間がたつと血圧も正常に戻ります。ところがストレスを受けると、血圧が回復しにくい人もいます。一般に、次のような人は、ストレスに注意したほうがいいでしょう。 | ||||||||
| 高齢になるほど、軽いストレスでも血圧の変動が起こりやすくなります。白衣高血圧も、高齢者に多くみられます。これは血圧を調節する機能が、加齢とともにうまく働かなくなるためです。 とくに災害や転居、家族関係の変化など、環境の変化は高齢者には大きなストレスとなり、高血圧発症のきっかけとなりかねません。 |
||||||||
| 肥満(内臓脂肪型)の人は、高血圧のほかに高脂血症、糖尿病などを併発していることが少なくありません。こうした動脈硬化の危険因子を複数もっている状態を、メタボリックシンドロームといいます(※5)。 これらの病気には、肥満のほかに、インスリンの働きが悪化する「インスリン抵抗性」などの共通要因があります。ストレスを受けると、食べすぎによって肥満を助長したり、インスリンの分泌を悪化させるなど、メタボリックシンドロームを促進し、血圧にも影響を与えやすいので注意が必要です。 (※5)病院ではメタボリックシンドロームの診断基準として、 1.内臓脂肪型肥満(腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上) 2.そのほかに次の3つの状態のうち2つ以上に該当する場合と定めています。 |
||||||||
|
||||||||
| 自分と同性の祖父母・兄弟(姉妹)などに、脳卒中や心筋梗塞などの病歴があると、高血圧になるリスクが高いといえます(※6)。高血圧を発症しやすい体質だけに、その要因となるストレスにも日ごろから注意しましょう。 (※6)病院では、「男性は父・祖父・兄弟のなかに55歳未満で、女性は母・祖母・姉妹のなかに65歳未満で、脳卒中や心臓病で亡くなった人がいる場合、リスクが高い」と診断されます。 |
||||||||
| ストレスを受けていても、自分ではなかなか気が付きません。そのため知らないうちに体調をくずすことも…。ストレスによる血圧上昇を予防する第一歩は、自分のストレスに気付くことです。次のような症状がみられたら、ストレスを疑ってみましょう。 | ||||||||
|
||||||||
|
||||||||
| ストレスによる血圧への影響を抑えるには、まずストレス解消を心がけることが大切です。しかしストレスによっては、簡単には解消できないものもあります。そのためストレスに対する抵抗力を高めることも、血圧をコントロールするための大切な要素です。 | ||||||||
| 睡眠と入浴は、からだと心のストレスを解消し、抵抗力を高める基本です。ストレスがあると脳の緊張状態が続き、寝付けないといった症状がよくみられます。そうした場合、無理に眠ろうとせず、眠たくなるまで好きな本を読んだり、音楽を聴くなどの方法で脳をリラックスさせる時間をつくりましょう(ただし、飲酒、喫煙、考えごとはしないこと)。 また、ベッドに入る30分〜1時間前に、ぬるめのお湯につかるとリラックスでき、眠りにつきやすくなります(熱いお湯は血圧の変動の原因となりやすいので注意してください)。 ストレスがあるときは気がせいていて、入浴もさっさと済ませてしまいがちです。しかし、入浴にはからだだけでなく精神的な緊張を和らげる効果もあるので、音楽を聴いたり、歌ったりしながら、意識的に入浴の時間を楽しむことも大切です。 |
||||||||
| 適度の運動は、からだの緊張をとり、気分転換ができるなどの、ストレス解消効果があります。また、血圧を下げる物質(タウリンやプロスタグランジンEなど)を増やし、血圧を上げる物質(カテコールアミンなど)を減らす効果もあります。 さらにコレステロール値を下げ、動脈硬化を防ぐ効果もあるので、急激なストレスによる脳卒中や心筋梗塞などの予防にもつながります(※7)。 効果があると聞くと、つい一生懸命になりがちですが、運動のやりすぎは反対に血圧を上げることになりかねません。あくまでもストレスを解消し、血圧をコントロールするための運動なので、無理をせずに軽めにすることが大切です。 また勝負や順位、記録などを競い合う運動は、かえって血圧を上げる原因になりやすいので控えたほうがいいでしょう。食事の1時間後くらいに、景色を眺めながらの散歩や、ウォーキングを楽しむようにしましょう。そのとき自分なりの無理のない目標をつくり、焦らずに少しずつ達成するようにすると、ストレス解消効果も高まります(目標は高くせず、簡単に達成できるもの、達成感を味わえることが、ストレス解消につながるからです)。 ストレスを受けても血圧が上昇しにくいからだづくりを目標に、運動を続けることが大切です(すでに高血圧の治療を受けている人は、運動を始める前に医師に相談してください)。 (※7)猿田享男監修『高血圧とくすり Q&A50』(日本製薬工業協会)などより。 |
||||||||
| ストレスを受けると、副腎ホルモンなどの分泌が盛んになりますが、そのときタンパク質やビタミンC・B群が大量に消費されます。ストレスがあると、食事にも気をつかわなくなりがちですが、肉や魚などの良質のタンパク質と、野菜などのビタミン類をしっかりとる必要があります。ただし、胃や腸に負担を与えないように、量は少なめにしてください。 また、活性酸素に対抗するためには、抗酸化ビタミン(C、E、β−カロテンなど)が不足しないようにしましょう。さらにカルシウムには脳の緊張を沈静化させる働きがあるので、牛乳や小魚類もしっかりとることが大切です。 忙しくて食事が不規則になりがちなときには、野菜ジュースや健康食品などで、栄養を補うことも考えましょう。 |
||||||||
|


