
国際自動車株式会社
国交省の指針を受け、
血圧管理で安全対策強化
「国際自動車株式会社」は旅客運送を行う国際自動車グループの中核企業として、東京・神奈川を拠点にタクシー事業を展開。東京地区では最大手となる営業台数を保有しています。同社は健康起因事故を防ぐため、2023年2月から全営業所にオムロンの自動血圧計「健太郎」を設置し、乗務員の血圧チェックを開始しました。血圧チェック導入後は血圧の改善が見られただけでなく乗務員全員の健康意識が向上するなど成果を上げています。人事労務課健康管理室の安原隆行さんに、導入の背景や血圧計選択のポイント、効果などについてお話を伺いました。


乗務員の健康起因事故(特に脳疾患や心臓疾患)の防止が必要
日常的な血圧チェックの実施が求められていた
高血圧の乗務員の健康管理が不十分

品質に裏打ちされたオムロンの信頼性と高いブランド力
正確で使いやすい
コストパフォーマンスの良さ
全営業所へ迅速な導入が可能

乗務員の健康管理意識の向上
定期的な通院・服薬の習慣化
高血圧の割合が減少(最高血圧160mmHg以上: 7.0%→4.7%)
出庫停止件数の減少(月1〜2件程度に)
対象外の乗務員の自主的な血圧測定の増加
会社全体の健康意識の底上げ
乗務員の体調不良による交通事故を防ぐことは旅客運送を展開する
弊社にとって重要な課題
背 景
数年前に国土交通省からも自動車運送事業者に対して、健康起因事故の大きな原因となっている脳疾患や心臓疾患などのチェックを強化するよう指針が出されていました。
脳疾患や心臓疾患はいずれも血圧が高い人がなりやすいため、日常的な血圧チェックはとても有用な対策です。同時に自動血圧計があれば、各営業所でも簡便に実施できます。
そこで、「血圧が高く管理が必要な乗務員に出庫前の血圧チェックを義務づけ、測定値が基準を超えた場合は出庫停止の措置をとろう」ということが決まりました。
出社
出庫前に血圧測定
最高血圧か最低血圧のどちらかが基準値
(160/100mmHg)を
上回っていた場合、
その日は出庫停止に
とはいえ出庫停止は乗務員にとって収入にかかわる大問題ですから、しっかりと環境を整えておく必要があります。労使で構成する健康経営委員会で全社的なルールを策定した上で、スタートすることになりました。
オムロン自動血圧計「健太郎」を全営業所に導入
- 品質とコストのバランスが決め手に
オムロンの自動血圧計に決めた理由
営業所には以前から家庭用の血圧計は置かれていましたが、労働組合側からは「きちんとした血圧計を用意してほしい」と要望がありました。新たに業務用の高品質な血圧計を購入すべく複数のメーカーの製品を検討した結果、最終的にオムロンの自動血圧計「健太郎」を13拠点に2台ずつ配置しました。


一番の決め手になったのは、オムロンのブランド力です。誰もが納得する安心のブランドを選ぶ必要がある中で、品質に裏打ちされたオムロン製品は十分に条件に合致するものでした。使い始めて1年以上経ちますが、期待した通り「使いにくい」「数値が不正確」といったクレームは一切ありません。
そしてブランド力がありながら高額ではなかったことも大きかったですね。26台を一気に購入しなければならない状況でも予算が確保しやすく、すみやかに各営業所に設置することができました。
自動血圧計導入で乗務員の健康意識向上
- 高血圧者割合が顕著に減少
効 果
全社ルールで血圧チェックの対象としたのは、会社の定期健康診断で最高血圧が160mmHg以上、あるいは最低血圧が100mmHg以上だった人で、対象者リストは半年に一度の健康診断のたびに更新されます。対象者は毎回出庫前に営業所に設置されたオムロンの自動血圧計「健太郎」を使って血圧を計測。最高血圧か最低血圧のどちらかが基準値(160/100mmHg)を上回っていた場合、その日は出庫できません。
約850名(20代~75歳)の板橋営業所の乗務員のうち、全社基準で測定を義務付けられているのは10名弱ですが、板橋営業所では独自ルールで以前の健康診断で対象になった人にも測定を推奨しているため、その人たちも含めると約50名になります。
以前は血圧が高くても通院しそびれていたり薬を飲み忘れていたり…きちんとコントロールできていない人が多かったんですね。測定を開始した当初は基準値を上回って出庫停止になる乗務員がかなりいましたが、出庫停止はダイレクトに給与に影響してしまうため、通院や服薬を再開するなどしっかりコントロールする人が増えました。今は出庫停止になる件数は月に1~2件に減っています。
効果は健康診断のデータにも表れてきています(グラフ参照)。健康診断時の最高血圧が160mmHg以上だった人の割合が、血圧チェック導入前の2021年度は7.0%だったのに対し、導入後の2023年度は4.7%となり、2.3%減少しました。同様に最低血圧も基準値を超える人が5.8%減少しています。
血圧チェックによる効果

7.0
6.1
4.7
2.3%減少!

23.1
22.7
17.3
5.8%減少!
・受診者数は健診を受診した全社員、乗務社員だけではない
・1回目の血圧値のみを採用している
・出庫前血圧測定の該当者とイコールではない
・受診者数は乗務員に限らず健診を受診した全社員
(2021年度:6196名、2022年度:6022名、2023年度:6253名)
計測対象者以外の乗務員の意識も変わってきました。営業所では不正が発生しないように「健太郎」 を管理者の目が届きやすい業務フロアの一画に設置しています。フロアを行き来する乗務員の視野に入ってくるので、対象者でなくても「せっかくあるなら」と測る人が増えました。また、「同僚が出庫停止になっている様子を目の当たりにすると危機感を覚え 、自分も健康管理に気をつけている」といった声もよく耳にします。乗務員全員の意識の底上げに大いに役に立っていると感じています。
日々の血圧測定がもたらす気づき
- 3人の乗務員が語る健康管理の変化
従業員の声

【Aさん】
男性 29歳
会社で毎回計測するようになって、自分の血圧が高めであることを意識するようになりました。血圧チェックの導入前から「人の命を預かっている」という意識はありましたが、安全に直結する自分の体調に対する意識が高まり、食事のカロリーや塩分を控えめにするなど気遣うようになりました。自身ではいつも通りの体調だと思っていても、通常より高い数値が出ることがあり、自分と人の命を守るうえで、血圧チェックの重要性を実感しています。

【Bさん】
男性 51歳
血圧が高く、主治医から自分で血圧測定をするよう指導を受けていますが、自宅で毎日継続するのは難しいため、会社での血圧チェックはとても助かっています。降圧剤は服薬しているものの、食べ過ぎたり体重が増えたりすると、測定値にダイレクトに現れます。数字が高いと食生活の改善や運動を心がけるなど、血圧チェックの結果を日々活用するようになりました。血圧をきちんとコントロールできているかを確認する上で、毎日の血圧チェックは大いに役立っています。

【Cさん】
男性 69歳
10年ほど前に血圧が高くなったのを機に病院を受診し、降圧剤を服薬中です。自宅でも 血圧を測ることはありますが、会社の血圧計は精度が高く、測り直しのストレスもありません。血圧を継続して計測していると、運動をし過ぎた翌日は血圧値が高くなるなどさまざまな気づきがあり、生活習慣の改善に生かすことができています。会社では血圧チェックを義務付けられていなくても、自ら測定する人が増えました。血圧計が職場に置いてあること自体に意味があると感じています。
まとめ
血圧チェックの導入は、段階を踏んで進めたので、現場でもすんなり受け入れてもらうことができました。導入の成果が血圧改善の数字としてあらわれただけでなく、乗務員の健康や安全に対する意識も向上しています。
健康起因事故の防止は、国際グループが展開するハイヤーやバス事業においても共通する課題です。今後もタクシー部門の血圧チェックを継続しつつ、グループ全体で活用していく方法を検討中です。
今後の展望
国際自動車グループの国際ハイヤー株式会社には約1000名の乗務員が在籍し、その約半数は請負契約として顧客先に出向いて勤務しています。その中には血圧に問題がある人が60名くらいますが、勤務の性質上、日常的に会社と健康相談を行うことが難しい状況です。また企業の役員付きの運転手として平日の日中を中心に乗務している人が多く、病院を受診しづらいという問題もあります。
そこで2024年度から遠隔管理ができるオンライン診療を試験的に導入し、使い勝手が良ければグループ全体に広げていくことを検討しています。今後、健康管理体制をさらに充実させていきたいと考えています。

掲載内容は2024年3月、取材時点の情報となります。