vol.183 女性の妊娠と治療の両方を支える「母性内科」

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Vol.183 女性の妊娠と治療の両方を支える「母性内科」

晩婚化が進み、女性の出産年齢も高年齢化しています。厚生労働省の平成28年人口動態統計によると、第一子を出産する女性の平均年齢は30.7歳。40歳以上の出産では、出生に占める第一子の割合は38.5%。出産年齢は上昇し、晩産化の傾向にあります。
35歳以上の初産は、高年齢出産(高齢出産)と呼ばれ、妊娠や出産はリスクが高く、妊娠中はさまざまな合併症が起きやすくなります。また、高年齢になると妊娠前から慢性疾患など持病のある人の割合も増えます。こうした女性の増加を背景に「母性内科」が注目され始めています。

母性内科とは

母性内科では、病気のある女性が無事に妊娠や出産ができるように内科的な診療を行います。2015年に『日本母性内科学会』が発足し、会員の医師は200人を超えています。同学会の理事長で、国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センターの村島温子主任副センター長は「大学病院に勤務していたとき、病気の女性に接し、安心して妊娠や出産ができるようにしたいと思ったことが母性内科を作ったきっかけです。病気があると妊娠は無理、妊娠前から管理していたらこんなことには、と言われることがあります。母性内科の医師がいたら、その何割かは改善する余地があると思います」。

母性内科が診療する病気

母性内科が関わるのは、主に妊娠に伴って発症する「妊娠合併症」と、持病があって妊娠する「合併症妊娠」です。どのような病気が対象になるのか解説しましょう。

  • 妊娠合併症
    妊娠合併症は、妊娠糖尿病と妊娠高血圧症候群が代表的な病気です。妊娠糖尿病は、妊娠中にインスリンの働きが悪くなるホルモンが分泌されることで発症します。重症でも出産後はよくなってしまうため、ほとんどの人はその後、診療を受けませんが、「妊娠糖尿病と診断された女性、妊娠高血圧症候群と診断された女性では、将来高率に糖尿病や高血圧を発症するという研究報告※が出ています。妊娠は女性にとって、将来の病気のリスクを知る負荷テストでもあるのです。妊娠中に病気になりやすい体質と分かったら、出産後は予防につなげていくことも母性内科の役目です」(村島主任副センター長)。
    また、これ以外では、妊娠中に偶発的に起きる腹痛やインフルエンザなどが診療の対象になります。
  • 合併症妊娠
    合併症妊娠は、妊娠前からある慢性疾患で、主に先天性心疾患、気管支喘息、糖尿病、バセドウ病、腎炎、高血圧、炎症性腸疾患、膠原病(こうげんびょう)、多発性硬化症、てんかんなどが対象です。妊娠と出産は、母子の体に大きな負担がかかるため、持病の治療と妊娠の両方をサポートします。

「プレコンセプションケア」で妊娠前からサポート

母性内科では、妊娠中と出産後だけでなく、妊娠前から女性の健康を視野に入れており、国立成育医療研究センターでは、平成27年から国内初の「プレコンセプションケアセンター」を開設しています。
コンセプションとは「受胎する」という意味。プレコンセプションケアセンターでは、「相談外来」と、検診とカウンセリングの「チェックプラン」の2つを行っています。妊娠や出産を望んでいる人は、さまざまな状況や悩みを抱えています。若い人では、遠い将来のことと思っています。妊娠前から自分の体をきちんと見つめてもらい、赤ちゃんを授かる準備をしてよい妊娠や出産につなげることが目的です。「妊娠や出産の具体的な悩みは相談外来で、健康状態はチェックプランで行います。若い世代では、月経困難症を軽く考えていたり、性感染症や妊娠後にがんが見つかったりすることがあり、婦人科の検査を受けることも大事です。40歳を過ぎると妊娠しにくくなるので、準備は早めにした方がよいでしょう」(村島主任副センター長)。
同センターのプレコンセプションケアは、女性だけでなくパートナーの男性も受けられます。妊娠や出産に不安があったら相談してみましょう。

相談できる入口を増やしていくのが課題

現在、母性内科がある医療機関は、国内に4施設。数が少ないため、慢性疾患などの持病があり、妊娠や出産を希望した場合、「どこに相談したらいいか分からない」「主治医が男性だと相談しにくい」などの課題があります。そこで、『日本母性内科学会』では、内科医や産婦人科医を対象にした研修を行って「母性内科診療プロバイダー」の養成を進めています。今後は、母性内科に詳しい医師をホームページに公開し、相談できる診療の入口を分かりやすく提示していきたいということです。

※出典 平成23年度厚生労働科学研究(循環器・糖尿病等生活習慣病対策研究事業)
 女性における生活習慣病戦略の確立
 ――妊娠中のイベントにより生活習慣病ハイリスク群をいかに効果的に選定し予防するか


監修 国立成育医療研究センター
周産期・母性診療センター 主任副センター長 村島 温子先生
妊娠と薬情報センター長

取材・文 阿部 あつか

自身の「健康」についての考え方:ミュージシャン BEGIN 比嘉 栄昇さん

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