vol.191 増えている「声の病気」に国内初の診療ガイドライン

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Vol.191 増えている「声の病気」に国内初の診療ガイドライン

楽しく会話をしたり、カラオケやコーラスで歌ったり。普段、無意識に発している声ですが、声にはさまざまな病気があります。こうした声の病気を知って診療に生かしてもらおうと、2018年3月、日本音声言語医学会と日本喉頭科学会が共同で国内初の『音声障害診療ガイドライン2018年版』を発行しました。声はその人の個性やイメージの一部であり、体と心の健康も反映しています。意外と気付きにくく、生活の質に影響する音声障害を知っておきましょう。

あなたの声は大丈夫?

最近、声について気になることはありませんか。まずは、思い当たるところにチェックを入れてみましょう。

  • □声がかすれている。またはダミ声だ
  • □昔から声がかすれている
  • □声は出せるが、大きな声は出ない
  • □普通に話せるが、高い声が出ない
  • □声を出すと疲れる

実はここに挙げた項目の全てに音声障害が当てはまります。今回の診療ガイドラインの作成委員で、日本大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科の牧山清教授は、「声の質には異常がなくても、声が出しにくい場合は音声障害です。声に障害のある人は、少なくないと思います」と指摘します。

声が出る仕組み

一般に喉は舌の奥から気管までで、医学的には、咽頭(いんとう)と喉頭(こうとう)に分かれます。首の前を手で触れて声を出してみましょう。振動が伝わってくるところが声帯です。喉頭は、咽頭の前下方にあって気管の入口とつながり、ここに声帯があります。
声帯は左右2枚のひだで、息を吸う時は開きます。一方、声を出す時は閉じて、肺からの空気の力で声帯が振動して音が発生します。その音が咽頭、口腔(こうくう)、口唇を通り抜けて声になります。声は、咽頭と鼻腔(びこう)で共鳴してさまざまな音色になるのです。

身体に異常がなくても起きる「機能性発声障害」

診療ガイドラインでは、原因ごとに声の病気が分類されています。病気としては、声帯のポリープ、結節、腫瘍、まひなどが多いのですが、身体に異常がなくても起こります。
風邪は治ったのに声がよくならない、スピーチでおかしな声になる。これらは身体には異常がない機能性発声障害の一つで、「過緊張性発声障害」と呼ばれています。誤った声の出し方が原因です。「風邪をひくと声帯が赤くなったり、腫れたりしますが、楽器(声帯)が変わっているのに無理に働かせて声を出すため、よくならないのです」。
また、声は無意識に出ますが、意識するとスムーズにいかなくなることがあります。「スピーチ時に声がおかしくなるのも、意識して喉に力が入るからです」(牧山教授)。患者さんは無理をしているとは思っていませんが、診察では誤った発声が分かると言うことです。
さらに「変声障害」は、思春期の男性に発症する機能性発声障害です。変声期を過ぎても変声前の高い声を出し続ける病気で、大人になっても続く人がいます。声は裏声に近く、音域が狭くて声の能力が低下しています。無理な声の出し方を続けているため、本人や周囲の人が症状に気付いた時は、受診することが大切です。

突然声が出なくなる「心因性発声障害」

心理的な疾患や精神疾患がかかわる場合は、機能性発声障害とは別になります。「心因性発声障害」は、突然声が出せなくなる病気です。何らかのストレスが、声を出せないという身体症状に転換されているのです。ところで、声を失うことは、失語症としばしば混同されますが、失語症は言いたくても言葉が出てきません。心因性発声障害は、これとは別の病気です。

病気や加齢、無理をしても声は変わる

あの人は声が若い、声が老けたなど、加齢による声のイメージには、個人差があるようです。声を出すには、肺からの空気を利用して声帯を振動させる必要があります。しかし、声帯に異常がなくても、結核や気管支ぜんそくなど肺の病気があると声は出しにくくなります。
また、アーと長く声を出している途中で声がふるえるのは、声帯の筋肉が衰えている証拠。一定の緊張が保てなくなっています。牧山教授によると、一般に日本の女性は高い声が若い声と感じており、高い無理な声を出す場合が多いと言います。「声に関しては、若いふりをするだけでも声帯に負担がかかります」。自分に合った声の出し方が大事です。

声が気になったら耳鼻咽喉科へ

音声障害の診療には、健康保険が適用されます。ただし、詳しい検査や発声の指導ができる医療機関は限られ、診療に携わる医師の専門分野も多岐にわたります。まずは近隣の耳鼻咽喉科を受診しましょう。「自分は元からこんな声と思っている人がいますが、生まれつき声がかれた人はいません。また、若いうちに治療しておけばよかったと言う患者さんもいます。声の治療は診断によりますが、正しい声の出し方、薬、手術などが行われます。だんだん症状が悪くなる、声が出しにくい、声を出すと疲れるといった時は医療機関を紹介してもらいましょう」(牧山教授)。

監修 日本大学病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 教授 牧山 清先生
取材・文 阿部 あつか

  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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