AZロジ株式会社
業務用自動血圧計「健太郎」
【導入事例】業務前自動点呼を起点とした健康管理─AZロジ株式会社における血圧管理の導入事例
AZロジ株式会社は本社(愛知県小牧市)と関西営業所(大阪府東大阪市)の2拠点体制で運送業を展開。20代から70代までの全22名のドライバーが、地場配送から長距離輸送まで幅広い業務に対応しています。同社では2024年10月より、血圧・体温測定とアルコールチェックを組み合わせた「業務前自動点呼」[※]を導入しました。導入後は、業務効率化やコスト削減に加え、ドライバーの健康意識向上にもつながり、成果を上げています。常務取締役の宮川佳子様と本社営業所所長の岩田昌紘様にお話を伺いました。
[※]「業務前自動点呼」とは
運送事業者に義務付けられている業務開始前と終了後の点呼は運行管理者等と対面して行うことが原則でしたが、2023年に「遠隔点呼」や、業務後の点呼の全部または一部を自動化できる「業務後自動点呼」が認められました。さらに「業務前自動点呼」についても、2023年度から2025年度にかけて制度化に向けた先行実施が行われ、2025年4月30日に「対面による点呼と同等の効果を有する方法」を定めた国土交通省の告示が改正されました。
| 社名 | AZロジ株式会社 |
|---|---|
| 従業員数 | 27名(2026年3月時点) |
| URL | https://www.azlogi1004.com |
| お話を伺った方 |
常務取締役 宮川佳子 様 本社営業所所長 岩田昌紘 様 |
左:岩田昌紘 様 右:宮川佳子 様
事故防止に向けて労務管理の厳格化が急務
ドライバーの出勤時刻がさまざまで24時間体制での点呼対応が不可欠
対面点呼に対応する社員の確保が経営上の大きな負担に
同じ課題を抱える同業者からの紹介
システム提供会社が導入から運用まで一貫したサポートを提供
各種補助金・助成金を活用できたこと
対面点呼専任の社員を置く必要がなくなり人件費を大幅に削減
システムに血圧測定を組み込んだことで日常的な血圧管理が可能に
高血圧リスクの高いドライバーをよりきめ細かくフォローできるように
日々の血圧を数値で確認することでドライバーの健康意識が向上
労務管理の厳格化を迫られ「業務前自動点呼」を導入
――2拠点それぞれのドライバーの人数、年代構成、勤務形態を教えてください。
宮川氏本社営業所は12名(20代3名、40代4名、50代3名、60代1名、70代1名)、関西営業所は10名(30代2名、40代3名、50代4名、60代1名)のドライバーが勤務しています。勤務形態はさまざまで、たとえば本社では、荷主・荷物・配送先が毎回変わる「フリー便」を担当するドライバーは長距離輸送が中心で、勤務時間や休日も流動的です。近・中距離の「地場便」を担当するドライバーは、朝から夕方までの日勤が中心で、休日も比較的固定されています。一方、関西営業所は主にイベント関連の輸送を担っているため、深夜帯の業務が中心で、休日は平日になることが多いです。ドライバーの勤務日や出勤時間帯にばらつきがあるため、対面点呼では24時間365日、点呼対応のための人員を配置しなければならない状況でした。
―― 「業務前自動点呼」を導入しようと考えたきっかけを教えてください。
宮川氏長年、当社では各ドライバーがそれぞれのスケジュールで出勤し、それぞれの睡眠状況などに合わせて乗務する、自由度の高い運行体制が特徴でした。しかし2023年に行政処分を受けたことで、時間管理や健康管理を厳格化せざるを得なくなりました。そこで、交流のある同業者などから情報を得て、まずはデジタルタコグラフを導入し、運行状況を数値で把握するところから始めました。その次の段階として、業務前自動点呼も導入しました。
――業務前自動点呼についてはご存じでしたか。
宮川氏いえ、まったく知りませんでした。デジタルタコグラフを導入する際、同業者の多くが利用していたシステムベンダーの製品を採用したところ、「労務管理には自動点呼という方法もあります」と案内を受けました。対面点呼に対応する社員を24時間常駐させなければならない状況でしたので、その解決策となる業務前自動点呼は非常に有益な情報であり、すぐに検討を始めました。
――社内ではどのような意思決定のプロセスで導入が決まったのでしょうか。反対意見などはありましたか。
宮川氏当社はトラック20台規模の比較的小さな会社ですので、経営者との距離も近く、意思決定は比較的シンプルです。導入コストは気になる点ではありましたが、システムベンダーにお話を聞いてみると初期費用は、各種助成金や補助金を活用することで、かなり抑えられるとわかりました。社長には「こういうシステムがあります」「費用はこのくらいで、補助金を使えばこの程度削減できます」、さらに「人を雇った場合と比較するとこのくらい抑えられます」と費用対効果を説明したところ、反対の声はありませんでした。むしろ「社員にも会社にもメリットがあることなので、各営業所長も理解してくれるだろう」と、後押ししてもらいました。
――導入にあたり、機器やシステムの接続面で苦労された点があれば教えてください。
宮川氏機器の設置や接続、行政への届出、助成金の手続きなどについては、その都度システムベンダーがフォローしてくださったので、大変だと感じたことはありませんでした。パソコンやカメラなどの機器は、できるだけ既存のものを活用してもらい、血圧は、簡便に測定できる機種(オムロン「健太郎」)がシステムに組み込まれていたため、迷うことはまったくありませんでした。
毎日の血圧測定で高まる健康管理意識
――業務前自動点呼はどのように行うのでしょうか。手順を教えてください。
岩田氏本社では、事務所の廊下に自動点呼用の機器を設置しています。機器には、自動血圧計「健太郎」、体温計、アルコールチェッカーなどが接続されており、ドライバーは、タッチパネル式の画面に表示される指示に従って、「免許証確認 → アルコールチェック → 体温測定 → 血圧測定 → 睡眠時間などの入力」を行います。コンピュータが測定値や入力内容に基づいて、業務が可能かどうかを判断し、点呼完了となります。1人あたりの点呼にかかる時間は、およそ5分です。
――関西営業所では「遠隔」での自動点呼も活用されていると伺いましたが、具体的にはどのように運用されているのでしょうか。
宮川氏業務前自動点呼システム(健太郎)を事務所で連携している本社とは異なり、関西営業所は長距離ドライバーが多く、事務所から駐車場まで20〜30分離れているという立地上の課題がありました。事務所に立ち寄ってから車庫に向かうと、拘束時間が長くなってしまいます。そこで、トラック車内で点呼連携ができるよう、BLE(Bluetooth Low Energy)通信に対応した血圧計と体温計を導入しました。これにより、ドライバーは離れた場所からでも車内で業務前自動点呼を行えるようになり、事務所の据え置き機を使用するのは、週の始めと終わりのタイミングのみになっています。拘束時間の削減にも大きく貢献しています。
――血圧は個人差がありますが、許容範囲をどのように設定していますか。
岩田氏導入しているシステムベンダーの業務前自動点呼システムは、ドライバーごとの血圧や体温について、半年間のデータ平均に基づいて算出した「標準偏差」に対し、どこまで許容するかという閾値を会社ごとに設定でき、その範囲を超えた場合には、管理者に通知が届く仕組みです。血圧は、室温などの測定環境によって高めまたは低めに出ることもあるため、健康診断の平均値プラス10を目安に、そこからプラス20までを許容範囲にしています。基準値(許容範囲)を超えた場合、一度だけ測り直しができますが、二度目も超えると管理者に通知され、点呼を進めることができなくなります。
――導入当初に苦労なさった点を教えてください。ドライバーは業務前自動点呼にすぐに慣れましたか。
岩田氏自動点呼はドライバー自身が機器を操作して進めなければならないので、操作に慣れるまでのサポートには少し苦労しました。最初はマンツーマンで一緒に画面を操作しながら一つずつ手順を覚えてもらいました。難しい操作ではないのですぐに覚えられますし、システムベンダーが、操作画面のイラスト付きのわかりやすい説明書を用意してくださったので、機器の横に常備しておき、操作に躓いたときは説明書で確認してもらうようにしています。ただ機械が得意じゃないドライバーも何人かいて、たとえばタッチパネルに指が触れて違う画面が開いてしまうと、×を押してもう1回開き直せばいいだけであっても、「どうしよう」「わからない」とパニックになってしまいます。私のところに電話がかかってくるので、今どういう画面なのかを聞き取りながら指示をしたりするなど、開始から2週間くらいはフォローが必要でした。
――点呼に血圧などの測定が加わったことをドライバーの方たちはどのように受け止めたのでしょうか。
岩田氏血圧も含めた健康管理に関しては国で決めている「運送事業における法定12項目(ドライバー教育)」もあるので、業務前自動点呼を導入する前から2カ月に1回の全体会議で繰り返しドライバーに説明をしてきました。ただ、測定の手間は多少感じていると思います。血圧計は腕を入れてボタンを押すだけですが、特に厚着になりがちな冬場は正確に測るために上着を脱ぐ必要があります。
――ドライバーの方たちの血圧に対する意識は変わりましたか。
宮川氏先日、血圧測定の効果についてドライバーのリーダーにアンケートを行いました。「自覚症状は出ていなかったとしても、日々の数値を見て、血圧管理の重要性を重く受け止めるようになった」「高血圧は自覚しにくいので、毎日測定することで体調管理の一つの目安になる」といった前向きな回答が来ています。乗務ごとに数字を目の当たりにすることで、意識は変わっていくと思います。
蓄積したデータも活用し、より細やかな健康管理をめざす
――管理側は点呼時に血圧測定が加わったことをどのように捉えておられますか。
宮川氏ドライバーは食事をとる時間が不規則になりがちで、特に長距離は眠気を抑えるために何かしら食べていることが多いです。さらに乗務中は座りっぱなしで運動不足になりますから、肥満、脂質異常、糖尿病とともに、高血圧のリスクは認識してきました。実際、60代、70代といった血圧が高くなりがちな年代のドライバーもいますし、50代以下でも健康診断で高血圧を指摘された方が数人います。
岩田氏以前から各営業所に家庭用の血圧計を配置し、いつでも測れるようにしてきましたが、ほとんど使われていませんでした。自動点呼では測定しなければ出発できないため、本人も数値を意識せざるを得ませんし、私たち管理者にとっても把握しやすくなりました。
宮川氏ドライバーの中におひとり、健康診断で毎回再検査か再々検査になるほど血圧が高い方がいらして、毎晩就寝前に血圧を測定し、数値をLINEで送ってもらうなど、フォローの方法をいろいろ考えました。業務の一環として毎回血圧を測ることは、こうしたハイリスクなドライバーの健康起因事故やヒヤリハットを防ぐことにつながっていくと感じています。
――血圧測定を運用する中で、課題を感じたことはありましたか。
岩田氏健康管理の一環として、日々の血圧データを活用できることは大きなメリットですが、一方で「少し風邪気味かもしれない」とか、「元気がない」といった、対面点呼であれば気づけたかもしれないドライバーの細かな異変までは、機械では把握できません。私は日常的にドライバーと電話で業務のやり取りをしているので、声のトーンの変化に気を配ったり、少し踏み込んで様子を聞いたりすることを、これまで以上に心がける必要があると感じています。
――蓄積した血圧データは、どのように活用していますか。
宮川氏日々の数値は一人ひとりについてグラフ化され、管理者は全員分のデータを確認できます。私たちが月に1回データをチェックし、数値が高い人には受診を勧めるなど、必要に応じてフォローを行っています。現在、フォローが必要なドライバーは1人だけですが、今後もデータを蓄積し、早期発見につなげることで、サポートを充実させていきたいと考えています。
岩田氏また、毎年、健康診断のタイミングで全員に面談をしているので、たとえば業務前自動点呼で測定している血圧の数値が直近の健康診断の数値よりも上がってきているようなドライバーは、原因を探ってフォローをしていきたいと思っています。血圧単体で上がっているわけではなく、脂質異常や肥満など他にも要因はあることが多いので、健康診断の結果に加えて血圧のデータも活用していきます。
業務前自動点呼システムの導入を振り返って
――現時点で、業務前自動点呼システムの導入をどのように総括されていますか。
宮川氏業務前自動点呼システムの導入を機に、業務や健康管理を見直し、いろいろ変えていくことで効率化が進んで、結果的に業績も良くなりました。たとえば、管理者が常駐しなくて済むようになり、業務の効率化につながっています。コスト面でも対面点呼のための人件費を削減できたことは大きく、最初の導入費用がかかったとしても人件費がずっとかかり続けることを考えたら、圧倒的にコストダウンを図ることができています。勤務時間の管理に加えて血圧測定などによる健康管理で、ドライバーの健康にも貢献できていると思います。
――成功の要因は、どのようなところにあるとお考えですか。
宮川氏業務前自動点呼というシステムを知ることができたこと、そしてシステムベンダーに導入をサポートしていただけたことです。対面点呼であれば健康状態はきっちり確認できますが、業務前自動点呼システムは全体の管理までやってくれるので、人の代わりとなるエージェントとして非常に有効だと思います。また、この良いシステムを自分たちではどうやって導入すればいいのかわかりませんでしたが、適切なサポートがあり、スムーズに進めることができました。
――業務前自動点呼システムの導入を検討している運輸事業者にアドバイスをお願いします。
宮川氏中小の運送業者にとって点呼の人材を確保するのは切実な問題です。業務前自動点呼という解決策があるのに、「費用が高いからうちは無理」と思い込んで最初から諦めてしまう会社も少なくありません。実際、当社のような中小の運輸会社が何百万も投資して導入するのは厳しく、補助がなければ難しかったと思います。見積もりの段階で、システムベンダーが、いろいろな助成金や補助金の中から「これとこれが使えますよ」と提案してくれたのはとても助かりました。各種の助成を活用すれば費用の問題は解決可能ですし、初期費用分は4〜5年で元が取れてしまうのではないでしょうか。導入してしまえば、ランニングコストもほとんどかかりません。長い目で見たら、対面点呼のための社員を常駐させる人件費に比べると圧倒的に安いと思います。まずはシステムを提供している業者に話を聞いてみることをお勧めします。また助成金や補助金は早めに打ち切られてしまうものもありますから、タイミングを逃さないことも重要です。
岩田氏そもそも業務前自動点呼という制度を知らない会社も多いのではないでしょうか。知らないから導入に至らないだけで、運送会社間のつながりなどを通して情報が伝われば、導入する会社は一気に増えていきます。有益な情報が広く届きやすい仕組みができればと思います。
掲載内容は2026年3月、取材時点の情報となります。