THEME 03

進化する
遠隔診療サービス

オムロンヘルスケアでは、家庭で測定したバイタルデータを医師と患者が共有することで、患者の状態変化をタイムリーに確認できる遠隔診療サービス「Remote Patient Monitoring」(以下、「RPM」)事業にも取り組んでいます。これまで診療時や健診時など、「点的」にしか取得できなかった患者の状態変化を、日々「線的」に収集できるのが、遠隔診療サービスの大きなメリット。オムロンヘルスケアは、各種サービスによって詳細な身体情報を日々医師が観測できる環境を整え、疾病の早期発見・治療に貢献していきます。

「血圧変動のブラックボックス化」という、
高血圧治療の課題解決に挑む

常に変動する血圧を、的確に把握することの難しさ

血圧はさまざまな要因によって常に変動する数値。時間帯や気候、運動の有無などの影響を受け、一日を通して変わり続けているので、診察時に測った血圧値だけで患者の状態を詳しく把握することは難しいとされています。治療にあたって家庭血圧測定が推奨されているのは、そのためです。医師は診察時に家庭で測定した血圧の記録を確認し、服薬によってどのくらい血圧が変動しているかを把握。治療の方針を定めていきます。このように、家庭で測定した血圧記録は、高血圧治療において重要な役割を果たす要素。しかしその一方で、膨大な家庭血圧記録を限られた診察時間内だけで確認することが困難である、という課題も存在しています。

  1. 患者の血圧推移 手帳やメモに記録された血圧
  2. 医師は通院期間の患者の状態・傾向を把握するのが難しい
  3. 診察時以外の血圧記録を医師が詳しく把握することで、
    より的確な高血圧治療を行える可能性がある

バイタルデータの一元管理で、
英国の慢性疾患治療に貢献

慢性疾患の長期継続治療が難しい、
英国独特の医療制度が抱える課題

「緊急以外に病院を受診する場合、予め登録している“かかりつけ医”の診療を受ける」という、英国独特の医療のルール。このルールによって、医師は初診から、長期治療まで、状況の異なる多くの患者を診る必要があります。医師が多くの患者を抱えている場合は、当然待ち時間も長くなりますが、患者は自分の意志でより早く診てもらえる医師を選ぶことはできません。その結果として、待ち時間の長さを理由に治療を中断する患者も発生しており、医療環境の改善のためにも、治療効率の更なる向上が求められています。

診察業務の効率化をサポートし、治療の継続につなげる
<遠隔診療サービス“Viso” >

CES2023では、英国で新たに開始する遠隔診療サービス“Viso”を世界で初めて公開します。
“Viso”は、高血圧症などの慢性疾患を抱える患者が、家庭で測定した複数のバイタルデータを医師と共有できるサービス。加えて、専門医監修による患者の状態確認プログラムにより、体調や服薬状況をタイムリーに確認できる機能も備えています。
例えば“Viso”は、登録された血圧値をオックスフォード大学で降圧効果が確認された「在宅投薬変更プログラム」で解析。その結果から、患者別の投薬プラン(3回分)を医師に提案します。また、患者の状態確認プログラムで確認した結果に応じて、診療が必要な場合は医師に介入を促すアラート機能や、バイタルデータやアンケート回答結果から、診療にあたっての優先順位を色別に表示する識別機能など、多彩なサポート機能を搭載。効率的な治療実現を、力強く支援していきます。

  • 患者アプリ画面患者アプリ画面
  • 医師用画面医師用画面

米国の高血圧患者をサポートし、
適正な血圧コントロールを助ける

米国では、3,700万人もの高血圧患者が、
高いリスクを抱えつつ、適切な治療を受けられていない

米国では、心臓発作や脳梗塞の恐れがあるステージ2の高血圧患者であっても、適切な治療を受けていないケースが非常に多いとされています。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の発表によると、その数は成人でなんと3,700万人以上。現状を危惧した米国は2025年までに血圧コントロール率80%をめざす指針が出していますが、その達成のためには、より多くの人の高血圧治療の継続と参画が必要不可欠です。

治療だけでなく、経済的にもプラスの効果をもたらす
<遠隔患者モニタリングサービス “Vital Sight”>

オムロンヘルスケアは、米国の治療環境をサポートするため、高血圧症向けの遠隔患者モニタリングシステム“Vital Sight”の提供を2020年9月より開始しました。患者が家庭で測定した血圧データは、“Vital Sight”を通じて医師に共有。医師は通院時以外の患者の血圧変動を、詳しく確認できるようになります。また、異常な状態変化を知らせ、タイムリーな医療介入をサポートするアラート機能、病院の電子カルテとの接続機能など、きめ細やかな治療を支える機能も充実しています。

“Vital Sight”紹介動画

3ヵ月の追跡調査で、治療効果を実証済み

オムロンヘルスケアでは2022年、米国のNorth western大学協力のもと、“Vital Sight”の治療効果を確認するための臨床研究を行いました。研究では、高血圧患者約1,600人を“Vital Sight”の利用を医師に推奨されたグループと、利用していないグループに分割し、それぞれの血圧値推移を比較。
3ヵ月間の調査後、適正に血圧をコントロールできた人は、“Vital Sight”利用グループでは283人のうち66.3%、利用していないグループでは1,069人のうち48.1%という割合に(下図参照)。“Vital Sight”が血圧コントロールの支援につながっていることが、明らかになりました。

RPM利用開始後の血圧コントロール率
RPM利用開始後の血圧コントロール率 グラフ RPM利用開始後の血圧コントロール率 グラフ

治療費を軽減する、経済的な効果も確認

オムロンヘルスケアでは、“Vital Sight”をはじめとした遠隔診療サービス「RPM」の経済効果を確認するため、約400万人の契約者を有する民間保険会社HIGHMARKとの共同研究も実施。35歳~85歳の高血圧患者男女201名に約半年間「RPM」を使用してもらい、サービス利用者の治療費と、サービスを利用していない高血圧患者の治療費を比較することで、その経済効果を明らかにしました。

46% 108$down
「RPM」を利用したグループの高血圧症を含む循環器疾患に要した治療費は、「RPM」を利用していないグループに比べて46%減少。毎月平均で108$、治療費が減少したことが確認されました。

Doctor’s Voice

アメリカ合衆国 ミシガン州デトロイト郊外 予防医療センター 開業医
Dr Stephanie Lucas MD医師
2020年からVitalSightを利用

高血圧は、自覚症状がほとんど無く、放置するとリスクの高い疾病を引き起こす「サイレントキラー」と呼ばれる病気。多くの場合、患者が別の疾患で救急外来受診をした結果、高血圧症であることが発覚しています。“Vital Sight”に私が興味を持つようになったきっかけは、患者自身を主体的に治療に向き合わせてくれる機能があること。家庭で測定した血圧データを医師に共有することで、治療に対する意識が高まりますし、医師側が家庭で測ったバイタルデータをタイムリーに確認しているので、救急外来受診数も減らすことができます。“Vital Sight”を使うことで、私の治療効率は確実に進化したと感じています。

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