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サッカーで疲労しやすい5箇所の筋肉を中心にしっかりケア
同じスポーツでも競技性の違いにより、疲労が蓄積しやすい箇所も異なってきます。サッカーの場合は、どうなのか――。
長年、国内外でプロスポーツトレーナーとして活躍している山田トレーナーが、特にケアすべき5つの箇所を挙げてくれました。1つ目は太もも裏(ハムストリング)。2つ目は太もも前の筋肉(大腿四頭筋)。3つ目はふくらはぎ(下腿三頭筋)。4つ目は太もも内側(内転筋)。5つ目は臀部(中臀筋)。年齢に関係なく、子どもから大人までサッカー選手が疲労しやすい筋肉だと言います。
「サッカーは常に攻撃と守備の切り替えがあります。攻撃でボールを持っているときは自ら動くアクション、守備でボールを持っていないときは相手に合わせて動くリアクション。試合中は絶え間なく足を動かしているので、下半身に疲労が蓄積しやすいんです。それに加えて、足でボールを蹴る動作があるため、内転筋にも負担がかかってきます。同じ足ばかりでキックしていると、片側に疲労がたまる傾向もあります」
実際、サッカーの現場でオムロンの低周波治療器を使うときも、5つの部位が中心になります(手を使うゴールキーパーは上半身も加わる)。いろいろな考えはありますが、部位は上から下の順にケア。大きい筋肉からほぐしていきます。山田トレーナーはケアするタイミングも筋肉の疲労を回復させるためには、重要な要素の一つだと話します。
「練習、試合が終われば、チームでクールダウンしてストレッチをすると思います。そのあと、シャワーなどを浴びて、すっきりした状態からリカバリーするのが理想です。なるべく、時間を取ったほうが効果は上がります。場所は問いません。試合後、バスに長時間乗るのであれば、移動中でも良いですし、寮や自宅で食事をしながらケアするのも良いでしょう」
身体をケアする習慣が身につけば、自分の身体と向き合うきっかけになる。低周波治療器は、トレーナーの施術の助けに
疲労した筋肉を回復させることで翌日も動きやすくなり、ケガの予防にもつながります。身体をケアする習慣が身につけば、自分の身体と向き合うきっかけになります。選手自身が自己管理することが大事。太ももの裏が張りやすい、内転筋が痛くなりやすいとか、自身で自分の身体の変調に気づくことができければ、低周波治療器もより効果的に使えます。
「高いレベルを目指していくのであれば、自分の身体と会話する必要があります。専属のパーソナルトレーナーがついていれば別ですが、ほとんどの高校生はそうではありません。自分で身体の特徴、癖を知らないといけない。ケア用品を購入して終わりではいけません。いかに使っていくかを考えないといけないでしょう」
たとえ、チーム専属のトレーナーを抱えている高校、クラブであっても、選手数に対して、その人数が足りていない現状があります。プロのトレーナーに聞くと、低周波治療器は施術の助けになるようです。
「一人の選手をケアしている時間に、個人でケアしてもらえるのは大きいです。コンディショニングのタイムスケジュールを組みやすくなりますから」
「スポーツも勉強と同じで一発逆転はありません。日々、コツコツと積み重ね、自分を信じて自らを律することのできる選手たちが、上のステージに戦っています」
身体のケアに気を使うのは、練習や試合の後ばかりではありません。チーム全体で行うウォーミングアップにスムーズに入るための準備も大切になってきます。いわば、『アップの前のアップ』になるため、個人で行うのが前提です。
「ウォーミングアップに入ってから、身体が重いと気づいても、もう遅い。その際に短めの時間で低周波治療器を使うのもいいと思います。自身の身体は、自身でチェックしないといけません。高校生の年代で気づいていない選手がいれば、気づくように促してあげたほうがいいでしょうね。トレーナー、指導者がやらせるのではなく、選手自身から意識して取り組まないと身体はずっと良い状態に保てません」
身体のケアは毎日のようにするもの。むしろ、それを日常的に行っているのが、成功を手にしているトップアスリートです。サッカーの日本代表、スペイン代表、女子日本代表の選手たちもサポートしてきた山田トレーナーは、シビアな現実を口にします。
「スポーツも勉強と同じで一発逆転はありません。日々、コツコツと積み重ねていかないと。自分を信じてやっていくしかない。サボれば、自分の負け。自分の責任になります。他人のせいにはしないことです。そこに気づき、自らを律することのできる選手たちが、上のステージに戦っています」
キーワードは自己管理。高校生の年代から意識を高く持ち、取り組んでいる選手たちはプロになっても活躍しています。今季、青森山田高校からJ1リーグのFC東京に加入した松木玖生選手はその典型。かつて日本人選手は、体格で勝るヨーロッパの選手たちとフィジカルでまともに勝負すると、負けると言われていましたが、いまや必ずしもそうではありません。ドイルのブンデスリーガでは、相手に身体をぶつけても負けない日本人選手の活躍が目立っています。シュトゥットガルトで活躍する日本代表の遠藤航選手は、その代表例でしょう。
「身体のケアを含めて、フィジカルの意識が高まってくれば、日本のスポーツ界はまだまだ強くなれます。外国人選手にも簡単に負けないはずです」
特に成長期の過ごした方は大事。栄養バランスの取れた食事は欠かせません。規則正しい時間にしっかり食べることは重要。練習量に対して、エネルギーが足りていないケースもあるようです。そして、睡眠も大切。文武両道で寝る時間まで多く確保するのは難しいかもしれないですが、最低でも7時間は取ってもらいたいところ。山田トレーナーは時間だけではなく、睡眠の質も意識してほしいと言います。
「スマートフォンを見ながら、寝るのは良くありません。枕、マットレスも自分に合ったものを使用したほうが良いでしょう。寝るときに部屋が乾燥し過ぎていないかなど、空間にも気を使ってもらいたいです。ストレスがかからない状態をつくり出すことが大事です」
まずは自分の身体と向き合うこと。そうすれば、おのずとリカバリーケアにも目は向くはずです。
<団体紹介>

株式会社The StadiuM
山田 晃広さん
【現職】
株式会社The StadiuM 代表取締役
株式会社Las Flores 代表取締役
株式会社ロコ・ケア取締役
(一般社団法人)Penya F.C.Barcelona Japan 公認サポータズクラブ 副会長
【資格】
鍼灸あん摩マッサージ指圧師
ProSTAアカデミーマスター講師
原田式メンタルトレーニング指導者
【経歴】
日本人初スペインサッカー1部リーグプロ契約トレーナー
多くのなでしこJAPAN、Jリーガーのコンディショニングに携わる