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vol.123 若い世代もご用心! 気をつけたい「脳卒中」

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Vol.123 若い世代もご用心! 気をつけたい「脳卒中」 脳卒中の予防と患者の支援活動をしている「日本脳卒中協会」の相談のコーナーには、全国からさまざまな質問が寄せられます。そのランキングの中でベストテンに入るのが、若い人の脳卒中に関する相談だといいます。
日本人の死亡原因の第4位で、発症すると要介護になりやすく、高齢者に多いと思われている脳卒中。中高年以上が気をつける疾病だというイメージを持っている方も多いと思いますが、実は30~40代でも発症します。働き盛りで家族を支える人や子育て中の女性が発症すると、その人の人生だけでなく、家族や周囲の人にも影響が及びます。社会生活における損失も大きいだけに関心が高いのではないでしょうか。

注目され始めている「脳動脈解離」

若年者の脳卒中については、平成12~14年に全国の国立病院の専門医が共同で行った厚生労働省の研究があります。この結果から、若年者の脳卒中には高齢者とは異なる特殊な原因があることがわかりました。最近は、その原因の一つである「脳動脈解離(かいり)」に注目が集まっています。

脳卒中には、脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」、脳の血管の一部が膨らんで瘤(こぶ)ができ、破裂して出血が広がる「くも膜下出血」の3つのタイプがあります。脳動脈解離とは、脳の動脈壁が裂けて離れた状態。血管の内側が裂けて詰まると脳梗塞に、血管が外側に裂けて瘤ができ、破裂するとくも膜下出血や脳出血というように、どのタイプの脳卒中にもなりうる原因です。日本ではこれまで稀といわれていましたが、画像診断の進歩などによって見つかるケースが増えています。
脳動脈解離は、交通事故など首の外傷によって起きますが、運動で首をひねるような外傷以外の要因でも生じます。首の脇にある椎骨(ついこつ)動脈は、骨の間を通るように埋まっています。そのため、過度に首を伸ばしたり、頭を回転させて骨を鳴らしたりすると血管が裂けたり、瘤ができる誘因になると考えられています。

その他の原因も知っておこう

若年者の脳卒中に見られるこの他の原因としては、心臓に開いた穴から血栓が擦り抜け、脳に到達して起こる「右左シャント性疾患」があります。女性では、何度も習慣性流産を繰り返す「抗リン脂質抗体症候群」や経口避妊薬などを飲んでいる人は血液が固まりやすいため、注意が必要といわれています。また、生まれつき血管がデリケートな人がいることもわかっています。若年者の脳卒中には、さまざまな原因もあるということをまずは知っておきましょう。

「警告発作」が起きたらすぐに受診を

脳卒中は、ある日突然、起こります。発症すると時間の経過とともに脳細胞が死滅するため、治療は時間との勝負です。しかし、症状に気づかず、軽く考えて様子を見たことで治療が遅れることがあります。そこで、予兆として注目され始めているキーワードがあります。1つは「TIA」。一過性脳虚血発作です。たとえば、一瞬、体の力が抜けたが5分でよくなった。こんな症状が起きたら、24~48時間以内に大きな脳卒中が起きる警告。脳卒中の前ぶれ発作の可能性があります。2つめは「FAST(ファスト)」。これは脳卒中の大事なサインを略語にしたものです。

Fは、「face」 顔の左右の半分が動かなくなって、口元が下がってくる
Aは、「arm」 体の片方の手足が動かない、力が入らない
Sは、「speech」 話そうとしても呂律(ろれつ)が回らない、言葉がでない
Tは、「time」 時間


突然、自分自身や家族にこのような症状が現れ、いつもと様子が違うと感じたときは、一刻も早く救急車を呼んで救急病院を受診することが大切です。いざというときに脳卒中を見逃さないために、「TIA」と「FAST」の2つを覚えておきましょう。

血圧測定で脳卒中を予防しよう

脳卒中の3つのタイプの中で、30~40代に多いのは脳の血管が破れる脳出血です。脳出血の発症者には、健康診断で高血圧を指摘されていたにもかかわらず、放置していたケースが多いといわれています。高血圧による脳卒中は、血圧を下げることで確実に予防できます。これから秋になって、涼しくなってくると血圧が高くなり始めます。人によっては、病院で血圧を測ると問題はないものの、家で測ると血圧が高い「仮面高血圧」の人もいます。高血圧は静かに忍び寄るサイレントキラー。「まだ若いから」と油断せず、日頃から家庭で血圧を測る習慣をもちたいものです。朝起きたら血圧を測定。このような健康管理を続けることで、脳卒中のリスクを減らすことができます。

先ほどもお伝えしたように、若年者の脳卒中は多彩な原因があります。最近では、脳ドックで未破裂の動脈瘤や血管の奇形が見つかるケースも増えています。検査で異常が見つかったときは、そのままにしないで専門医の診察を受けることをおすすめします。「神経内科」、「脳神経外科」、「脳血管内治療」を行う3つの診療科が連携している病院や脳卒中センターを併設する医療機関での受診が理想。若年者の脳卒中の予防や再発防止は、自分のタイプをよく知ったうえで適切な対策をとることが重要です。


監修 社会福祉法人 済生会横浜市東部病院 
脳神経センター 脳血管・神経内科 脳血管内科部長 後藤 淳先生

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