OMRON All for Healthcare

2013.06.10

vol.120 「若年性脳梗塞」は中高年も注意を

LINEで送る 一覧に戻る

若年性脳梗塞とは

Vol.120 「若年性脳梗塞」は中高年も注意を 最近、30歳代、40歳代の女性アナウンサーやタレントが脳梗塞を起こすケースが相次いで報告され、「若年性脳梗塞」が注目されています。若年性脳梗塞は、その名称からわかるように、45歳以下の若い世代に起こる脳梗塞をさしています。
しかし、年齢だけが問題なのではなく、若年性脳梗塞はふつうの脳梗塞とは原因が異なることを、ご存じでしょうか。

ふつうの脳梗塞の場合、主な原因は動脈硬化です。肥満高血圧脂質異常症などによって動脈硬化が進んだ結果、脳の血管が詰まったり、血栓ができることで脳梗塞が引き起こされます。そのため、高血圧などの生活習慣病が増加し、さらに動脈硬化が悪化しやすい50歳代以降になると、脳梗塞のリスクも高くなります。
それに対して若年性脳梗塞は、動脈硬化以外のさまざまな原因で引き起こされます。その典型ともいえるのが、抗リン脂質抗体症候群や奇異性脳塞栓症、もやもや病などです(※1)。どれもあまり聞きなれない病名ですが、いずれも血栓ができやすくなる病気で、それが脳梗塞の原因となるのです。
それぞれの病気についてはのちほど紹介しますが、こうした病気があると若い世代でも脳梗塞を起こすことがあるため、ふつうの脳梗塞と区別して若年性脳梗塞と呼ばれています。
では、若年性なので中高年には関係がないかというと、けっしてそうではありません。中高年の方でもこうした病気がある場合、動脈硬化があまり進んでいなくても、脳梗塞を起こすリスクが高くなるからです。動脈硬化以外にも脳梗塞を起こす病気があることを知っておき、前兆などに気をつけ、早期発見や予防に役立てるようにしましょう。

(※1)そのほか、脳動脈解離、血管炎などが原因となることもあります。

若年性脳梗塞の主な原因

若年性脳梗塞にはまだ不明の部分も多いのですが、因果関係が比較的はっきりしているのが、抗リン脂質抗体症候群、奇異性脳塞栓症、もやもや病などです。

<抗リン脂質抗体症候群>
血液中に抗リン脂質抗体と呼ばれる自己抗体ができ、血液が固まりやすくなる病気です。とくに足(下肢)の深部静脈に血栓ができやすく、足の一部にはれや痛みを感じることが少なくありません。
血栓が移動すると、脳では強い頭痛や一過性脳虚血発作(手に力が入らない、言葉が出ないなど。次章で詳しく紹介します)を起こすことがあります。また、心臓に移動すると心筋梗塞を、肺に移動すると呼吸不全を起こすなど、いずれも生命にかかわる重大な病気を引き起こす可能性があります。女性の場合には、習慣性の流産の原因ともなります。
免疫異常の一種である全身エリテマトーデス(全身倦怠感や関節炎、顔の発疹など)から発症することも多いので、なんらかの症状がみられた場合は血液検査などで原因を特定することが大切です。

<奇異性脳塞栓症>
足などの静脈系にできた血栓が、心臓の左房と右房のあいだの穴(卵円孔)を通って脳血管系へ移動し、脳梗塞を起こす病気です。卵円孔は胎児の頃のなごりで、成長すると閉じられますが、成人の約20%には残っています。ふだんは左房と右房の圧力差で血液は正常に流れていますが、スポーツをしたり、重い物を持ち上げるなどの負荷がかかったとき、卵円孔をとおして血栓が移動することがあります。
運動時や力を入れたときなどに一過性脳虚血発作の症状がみられたら、早めに受診しましょう。心エコー(超音波)検査だけではわかりにくいのですが、最近は経食道心エコー(食道を通してのエコー検査)や経胸壁心エコー(胸の外側からのエコー検査)により、卵円孔や心臓内の血栓の有無がわかるようになりました。

<もやもや病>
脳の動脈の一部(内頸動脈)が狭まったり、閉塞したりすると、血流を確保するため周囲の毛細血管が拡張して網の目のように広がります。それが、血管造影検査ではもやもやした煙のようにみえることが、病名の由来です。毛細血管は細くて弱いため、詰まりやすく、また破裂しやすいので、脳梗塞や脳出血のリスクが高い病気です。
脳梗塞型のもやもや病には、特徴的な前兆がみられます。ラーメンなどの熱い食べ物をフーフー吹いたり、笛などを強く吹いたりしたとき、一時的な手足の脱力感や意識障害が起こりやすいのです。これは過呼吸による二酸化炭素の減少から、毛細血管が狭まり、脳梗塞に近い状態が起こるためです。もしこのサインがみられたら、早めに脳の検査を受けたほうがいいでしょう。

一過性脳虚血発作に注意

若年性脳梗塞の原因となる病気(抗リン脂質抗体症候群、奇異性脳塞栓症、もやもや病など)には、しばしば脳梗塞の前段階ともいえるサインがみられます。それは一過性脳虚血発作と呼ばれる症状です。
一過性脳虚血発作については、理解している人が5~6人に1人程度と低く、それだけ軽視されています(※2)。しかし、脳梗塞の予防のための重要なサインなので、きちんと知っておきましょう。
一過性脳虚血発作は、その名称のとおり一時的に脳の血管の一部で血流が悪化し、さまざまな症状が起こる病気です。典型的な症状として、からだの片側の麻痺(手足や顔の一部が動かなくなる)や感覚障害(しびれ、脱力、感覚がにぶい)、言語障害(ろれつが回らない、言葉が出てこない)、視覚障害(片方の目が見えにくい、片側が見えない)などがよく知られています。
症状の多くに、「突発的に起こる、からだの片側に起こる」といった特徴がみられます。たとえば、食事中に片手の力が急に抜けて箸を取り落としたり、いきなり片方の目だけが見えにくくなったりします。言語障害の場合は、会話中に急にろれつが回らなくなり、何をいっているのか分からない状態になったりします。
一過性脳虚血発作の症状は多くの場合、数分から数十分程度で解消されます。そのため「治った」と思いがちですが、じつはたまたま血流が回復したり、血栓が溶けたりしただけで、脳梗塞を起こしやすい状態であることに変わりはありません。実際にその後まもなく、重篤な脳梗塞を起こすケースも少なくありません。
かりに血圧やコレステロール値などに問題がなく、動脈硬化がない方でも、一過性脳虚血発作の症状がみられたら、抗リン脂質抗体症候群などの病気を疑い、早めに受診して検査を受けることが大切です(※3)。

(※2)国立循環器病センターによる調査(2011年、20歳代~70歳代の男女約10000人を対象)。
(※3)動脈硬化による脳梗塞の場合にも、前段階として一過性脳虚血発作がみられることがあるので、いずれにせよ自己判断せずに受診しましょう。

血栓を防ぐ生活を

若年性脳梗塞の原因となる抗リン脂質抗体症候群、奇異性脳塞栓症、もやもや病などには、共通した特徴がみられます。それは血流の悪化により、血栓の元となる血液の固まりができやすいという点です。
そのため予防には、日頃から血流を良くして、血栓のできにくい生活を心がける必要があります。

<食生活を見直す>
牛肉や豚肉などに多い動物性脂肪を摂りすぎていませんか。中性脂肪やコレステロールが増えると、血液が固まりやすくなります。肉類の動物性タンパク質は、筋肉の減少を防ぐ重要な栄養分なので、中高年になっても肉類をしっかり摂る必要がありますが、脂肪部分はたくさん食べないように心がけることが大切です。
一方、血栓予防に効果的な食べ物(成分)もあります。その代表が、納豆のネバネバの成分ナットウキナーゼです。ナットウキナーゼには、血栓の元となるタンパク質(フィブリン)を分解する働きがあるだけでなく、血栓の分解を阻害する物質を抑える働きもあります。
また、青魚(イワシ、サバ、サンマなど)に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)には、コレステロールなどを減少し、血液の凝固作用を抑制する働きがあります。ただし、酸化しやすいので、新鮮な魚を食べることが大切です。
野菜にも、食物繊維など血栓予防効果をもつ成分が含まれていますが、とくにタマネギ、ピーマンには血流を改善する成分が多いので、野菜サラダには積極的に取り入れましょう。

<運動を取り入れる>
慢性的な運動不足状態になっていませんか。適度の運動をしないと、からだ全体の血流が悪化し、血液の固まりができやすくなります。
とくに足など下半身の筋肉量が減少すると、末端部の血液を心臓へ送り返す力が弱くなり、血流が悪くなります。中高年になるにつれて筋肉量が減少するので、ウォーキング、軽めのジョギング、屈伸運動などで日頃から足を鍛えることが大切です。
ただし、いきなり激しい運動をすると、逆効果になりかねません。とくに、一過性脳虚血発作の症状を経験したことのある方、検査などで血栓のあることがわかっている方、また高血圧の治療を受けている方などは、医師の指導を受けたうえで運動を始めるようにしましょう。

shadow
このページの先頭へ戻る