vol.13 夏の体調管理は「冷房病対策」から

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ヘルシーライフ

男性にも冷え性が増えている

毎年夏になると、どうも体調がよくない…そんなふうに感じていたら、もしかすると「冷え性」かもしれません。冷え性は、冬、女性に多い症状として知られています(*1)。ところが最近は夏に、男性や子供にまで冷え性が増えています。 冷え性の典型的な症状としては、手足の冷えが知られています。しかしそれだけでなく、鼻水やのどの痛み、頭痛といった風邪に似た症状から、全身のだるさや疲れやすさ、食欲不振や下痢などの消化器障害、イライラ感、肩こり、腰痛、肌荒れ、生理不順など、人によってさまざまな症状がみられます。 夏の冷え性の引き金となるのが、エアコンによる冷房病です。デスクワークの女性たちには冷房病がよくみられるため、真夏でも上着や厚手の靴下、あるいは膝掛けなどを用意している人が少なくありません。 ところが男性の場合、まさか自分が冷房病や冷え性とは思わないため、何も対策をとらずにいて体調をくずすケースがみられます。とくに中高年になると、動脈硬化や血管の老化などから血液の流れが悪くなるうえ、皮膚感覚がにぶくなってエアコンの冷気に気付かずにいて、症状を悪化させてしまうこともあります。

(*1)女性に冷え性が多いのは、筋肉が少なく基礎代謝量が低いため、体温を上昇させる機能が弱いこと。血管の収縮・拡張機能も低めで、足先など末梢部分の血流量が少ないこと。脂肪組織が多く、冷えると元に戻りにくいことなどが指摘されています。

vol.13 夏の体調管理は「冷房病対策」から

冷え性はなぜ起こる?

エアコンのきいた部屋にいると、「ちょっと肌寒い」と感じることがあります。そうした状態を長時間、あるいは毎日のようにつづけていると、体は大きなストレスを受けます。
とくに影響を受けるのは、自律神経系(交感神経と副交感神経)です。暑い季節になると私たちの体では、本来なら副交感神経が活発に働き、血管を拡張させ体内の熱を外に出そうとします。ところがエアコンで体が冷えると、反対に体温を逃がさないように交感神経が働いて血管を収縮させます。そのため血流が悪化し、冷えなどの症状が起こります。
その状態がつづくと、次第に自律神経がダメージを受け、体温調節が上手にできなくなってしまいます。
たとえばエアコンのきいた部屋から30℃以上の猛暑の町に出たとき、体が急激な温度差についていけず、軽い違和感をおぼえることがあるはずです。それは、肌の表面では暑さを感じているのに、体内の温度がまだ上昇していない、ズレから生じる感覚です(*2)。
健康な人では少したつと体全体が温まり、発汗します。ところが冷房病になると体がなかなか温まらず、汗もかきにくくなります。汗をかかないと乳酸などの疲労物質が体内にたまるため、全身のだるさや疲れやすさ、さらには夏バテの原因ともなります。
またエアコンのきいた場所と、猛暑の外とのあいだをくりかえし出入りしていると、自律神経が対応できずに混乱しはじめます。自律神経は血液の流れだけでなく、胃腸の働きやホルモン分泌の調整などの機能も担っています。そのため全身にさまざまな症状(冷え性)が起こってくるのです。
自律神経の働きが慢性的に低下すると、ちょっとした寒さにも敏感に反応し、一年中冷え性に悩まされることになりかねません。そうなるまえに、エアコンを多用する夏にこそ、きちんと対策をとることが大切です。

(*2)体の中心部まで冷えると、低温の血液が循環するため、体内の温度が上昇しにくくなります。猛暑の町に出ても、低温の血液の循環がつづくため、しばらくは体内の温度は回復しません。とくに自律神経機能が低下すると、回復に時間がかかります。

冷房病・冷え性対策

(1)エアコンとの付き合い方

冷房病や冷え性は、エアコンの使い方もふくめて、服装や食事、運動など、毎日の生活習慣と深いかかわりがあります。予防や対策のために、まず自分の生活を見直してみましょう。 その第1は、エアコンとの付き合い方です。エアコンの標準的な設定温度は、25~28℃が良いとされています。ただ体感温度は人によって違うので、「寒い」と感じない温度が基本となります。 外気温との差が大きいと、外出時の体へのストレスも強くなります。よく出入りする場合には、エアコンの設定温度は「外気温マイナス3~4℃」をひとつの目安にしてください。 エアコンをつけっぱなしにすると、体が慣れて寒さにも鈍感になります。ときどきエアコンをとめ、窓をあけて外気をとり入れることも大切です。 また、エアコンの風に直接当たると、体温が急速に奪われます。風向きをコントロールし、吹き出す冷気に当たらないようにしましょう。帰宅直後やお風呂あがりには、エアコンの前にいたくなりますが、汗をかいた状態だと体を冷やし、体調をくずす原因ともなります。 最近のエアコンは除湿(ドライ)機能がよくなっています。個人差はありますが、外気温が30℃程度なら除湿だけでもかなり快適になります。できるだけ冷房機能を使わず、除湿で済ます工夫も必要です。

(2)腹巻などで自衛する

オフィスなど、エアコンの温度や風向きを勝手に設定できない場所もあります。そうした場所では、自分なりの自衛策が必要です。
女性の場合、冷え性対策に膝掛けや薄手の腹巻、保温性の高いハイソックス、レッグウォーマーなど、いろいろなグッズがあります。男性も、便利なものは積極的に利用しましょう。
とくに腹巻は、効果的です。冷えから胃や腸の障害を起こす人が多いことと、腹部を温めると全身の温度も上昇しやすいからです(*3)。腹巻は腰の冷えも防ぐので、腰痛の予防にもなります。最近はアウターにひびかない(外からはわかりにくい)薄手タイプの腹巻も数多くあります。OLにも腹巻をひそかに愛用している人が多く、冷房病予防には欠かせないものとなっています。
エアコンの冷気がたまりやすい足元にも工夫が必要です。厚手の靴下やハイソックスを利用したり、冷えが強い場合はズボンの下にレッグウォーマーをつける方法もあります。
ただし、腹巻や厚手の靴下などは通勤途中ではむれやすいので、オフィスなどに行ってから着替えるほうがいいでしょう(電車内でも冷えやすい人は別です)。
また映画館や劇場なども冷えやすいので、そうした場所へは使い切りカイロをもっていくと便利です。

(*3)寒さを感じると、交感神経が血管を収縮させます。すると末梢血管の血液量は減りますが、体の中心部の温度を維持するために腹部などに血液が集まります。そのため腹巻で腹部を温めると、温かい血液が循環しはじめ、全身の温度も上昇しやすくなります。

(3)食事は体を冷やさないものを

冷房病や冷え性を予防するには、「体の芯(中心部)を冷やさないこと」が大切です。その意味で食べ物や飲み物は、重要な意味をもっています。
夏には冷やし中華やソーメンといった、冷たいものを食べたくなります。ところがほとんどの場所ではエアコンがきいていて、冷たいものを食べると体を内外から急速に冷やすことになります。エアコンのきいた場所では、少し汗ばむくらいの温かい食べ物をとるようにしましょう(飲み物も同様です)。
体を温める食べ物を「温性食物」といいますが、その代表がショウガ、ネギ、ニンニク、タマネギ、カボチャ、チーズなどです。トウガラシやコショウなどの香辛料にも、同じ効果があります。
食欲があまりない場合、冷たいものを食べると胃腸を冷やし、かえって体調をくずしかねません。また、食事を抜くとカロリー不足から体が冷えやすくなり、さらにビタミン不足からだるさや疲れが助長されてしまいます。
温性食物の入った温かい食べ物を、少量でもいいのでとるようにしましょう。

(4)運動や入浴で血流の改善を

冷えをもっとも感じやすいのは足先です。エアコンの冷気が床近くにたまることと、足先は心臓から遠いため血液の流れが悪くなりやすいからです。
仕事中でも1時間に一度くらいは席を立ち、少し歩いたり、軽い屈伸運動をして、足先の血液の流れを改善しましょう。席を立てない場合は、つま先とかかとを交互に上げ下げするだけでも、ポンプのような働きで血流がよくなります。
日頃からよく歩くことも大切です。ウォーキングをしていると、足の筋肉が適度に強化されて血流がよくなるので、足先も冷えにくくなります。
入浴も、冷房病や冷え性の予防に効果があります。夏はついシャワーだけで済ませたくなりますが、お湯につかると足が温まるだけでなく、水圧によって血流もよくなります。お湯のなかで、ふくらはぎを軽くマッサージすると、効果が一層高まります。
お湯の温度は低めにし(少しぬるいと感じる程度)、ゆっくりつかるほうが、湯冷めによる体温の低下を防ぐことができます。
また、ストレスがたまると自律神経の働きが低下して、冷房病や冷え性を起こしやすくなります。ストレスをためないことが大切ですが、適度の運動や入浴にはリフレッシュ効果があり、ストレス解消にも向いています。

冷房病・冷え性の予防ポイント
(1)エアコンの設定温度は25~28℃を目安にし、寒さを感じないレベルにする。
(2)エアコンのきいた部屋と外気との温度差は3~4℃が理想。
(3)エアコンの風には直接当たらないようにする。
(4)腹巻や厚手の靴下など、服装で自衛する。
(5)エアコンのきいた場所では温かい食べ物・飲み物を。
(6)適度に体を動かし、血流の改善を。
(7)シャワーより入浴(低めの湯温で)。
(8)ストレスをためないようにする。

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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