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2014.08.08

vol.134 海外旅行中の下痢に注意を

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海外で気をつけたい「旅行者下痢症」

Vol.134 海外旅行中の下痢に注意を

海外旅行中には、日本ではあまりみられない病気にかかることがあります。なかでもとくに多いのが、「旅行者下痢症」と呼ばれるお腹の異常です。海外旅行者のうち、20~50%が下痢症状を起こすとされていますが、欧米などの先進国への旅行者では、発症は数%程度と推定されています。ところが近年、日本人の旅行者が増えている開発途上国(東南アジア、南アジア、アフリカ、中東、ラテンアメリカなど)では、70~80%もの人に下痢症状がみられる地域もあるので注意が必要です。

海外旅行中の下痢には、大別すると、細菌やウイルスによる感染症が原因のものと、それ以外のものとがあります。
細菌などの感染症の代表的なものには、コレラ、赤痢、毒素原性大腸菌による下痢症などがあります(※1)。いずれも数日間は下痢症状(ときには軟便症状)を起こしますが、日本ではあまりなじみのない病気なので、お腹をこわした程度にすぎないと、軽く考えがちです。持参した整腸剤などを飲むと、かえって症状を長引かせたり、悪化させることもあるので注意が必要です。
また、細菌などによる感染症は、ときに大発生することがあり、たとえば1995年にはインドネシアのバリ島から帰国した日本人200人以上がコレラに感染していたケースが知られています。バリ島には世界各国から旅行者が来ますが、このときの発症者はほとんどが日本人で、その理由や、どこでコレラ菌に感染したかなどは分かっていません。
コレラや赤痢などの感染症は、バリ島にかぎらず開発途上国にはよくみられるものです。地域によって発生しやすい感染症の種類が異なるので、その種類や症状の特徴、あるいは現地で大発生していないかなど、事前に旅行会社などに確認して情報をきちんと把握しておきましょう。
一方、感染症以外の原因には、水や食事の違い、環境の変化によるストレスなどがあります。こうしたケースでは、一般的に下痢症状は軽く、自然に治ってしまうことも少なくありません。しかし、持病などがあると、悪化することもあるので、海外旅行中の下痢については安易に考えず、事前の準備や旅行中に注意すべきことを知っておきましょう。

(※1)コレラ、赤痢、毒素原性大腸菌のほかに、腸チフス、腸管出血性大腸菌、腸炎ビブリオ、カンピロバクター腸炎、サルモネラ、ロタウイルスなどが旅行者下痢症の原因になりやすい病気(菌)として知られています。

感染症の特徴とは

旅行者下痢症の原因となる細菌のなかでも、多くみられるのは、毒素原性大腸菌によるものです。あまり聞いたことのない病名ですが、腸で毒素(エンテロトキシン)を発生する大腸菌で、下痢や腹痛、嘔吐などの症状がみられます。
軽症の場合は、安静にしていれば2~3日で自然治癒することが多いのですが、下痢症状が強い場合はきちんと水分補給をしないと脱水症を起こして悪化することもあります。清潔な水(ミネラルウオーターやスポーツドリンクなど)をきちんと補給することが大切です。
一般に旅行者下痢症は、その名の通り、下痢を起こすことが多いのですが、コレラのように水様の激しい下痢もあれば、赤痢や腸管出血性大腸菌、カンピロバクター腸炎のように血便をともなうことが多い下痢、あるいは下痢というよりは軟便状態ということもあります。細菌の種類によって、また旅行者の体調などによっても症状はさまざまですが、いずれの下痢の場合も、脱水症予防のためにしっかり水分補給を心がけることが大切です。一方、腸チフスのように、下痢よりも発熱や腹痛、関節痛などに特徴がある感染症もあるので、いずれにせよお腹などの異常をくり返す場合は、早めに受診しましょう。

旅行者下痢症は、現地に着いてから3日目くらいの早い時期に起こすことが多いとされています。しかし、日本人の海外旅行は1週間程度の短い期間のものが多いため、滞在中には症状がみられず、帰国時の検疫で判明したり、帰国後に発症することも少なくありません。
赤痢菌のように感染力が強いものは、帰国後に患者から家族や友人に感染することもありますし(患者が触れたものからも感染しやすい)、腸チフス菌のように潜伏期間が長く、帰国後に突然発症するものもあります。
とくに中高年の方には、糖尿病や肝臓病、胃腸病などの持病をもっている方が少なくありません。こうした持病があったり、常備薬を服用している場合には、免疫力が低下していて感染症が悪化しやすいこともあるので、旅行前に医師に相談し、自分でも水や生ものには十分に注意しましょう。

また最近は、登山やトレッキングを目的に、海外の山岳地を訪れる人も増えています(※2)。山岳地では、簡易施設や野外のキャンプ地で自炊をしたり、それに近い状態で食事をとることもあります。
高地で下痢症状を起こすと、脱水症から急性の高山病や血栓症、凍傷などを起こし、危険な状態におちいりかねません。それだけに、平地での旅行時よりも食事には気をつかい、飲み物は沸騰させる、料理には十分に火をとおすことなどを心がけましょう。また、下痢症状を起こしている人に、調理をさせないといった配慮も必要です。
とくに自分の体力を超える無理な計画に参加したり、悪天候時に行動したりすると、抵抗力が奪われ、細菌などの感染症にかかりやすいので、自重することが大切です。

(※2)国際山岳連合の報告では、ヨーロッパアルプスでは旅行者下痢症は少なく、ネパールなどの開発途上国では80%程度の人が経験するとされています。

食事や環境の変化にも注意を

海外旅行中は、飲み物や食事の内容も大きく変化します。
その1つは水で、ミネラル分の多い硬水が原因で、下痢症状を起こす人は少なくありません。とくにマグネシウム含有量が多いミネラルウオーターは、胃腸の弱い方は影響を受けやすいとされています。
食事については、最近は国内でもエスニック料理を食べる機会が増えていますが、それでも東南アジアやインド、中東、アフリカなどでは強いスパイスを大量に使う料理が数多くあります。スパイスに慣れていない日本人は、胃や腸が刺激されて下痢症状を起こしやすくなります。カレーライスのような馴染みのある料理でも、インドでは強いスパイスや乳製品などが大量に使われていることが多く、消化もあまりよくないので注意が必要です。
また、初めての料理ということで、いろいろな種類のものをたくさん頼んで、食べすぎでお腹をこわすケースもみられます。強いスパイスを大量に使った料理や、初めて食べる料理の場合は、食事の量を控えめにして、腹八分目を心がけるようにしましょう。

一方、海外旅行中は、さまざまな面で環境が変わるため、それがストレスとなり、神経性の下痢を起こす人も少なくありません。たとえば、ホテルの部屋の設備などが不十分でリラックスできなかったり、ツアーの雰囲気にうまく溶け込めなかったりすると、気づかないうちに肉体疲労、精神疲労が重なり、腸の機能が低下して下痢症状を起こすことがあります。そこに冷たい飲み物や食べ物が重なると、さらに下痢を起こしやすくなるので要注意です。
環境の変化による下痢は、一般的に軽い症状が多く、食欲がある場合には1日か2日で自然治癒します。ただし、前章でも紹介したように、下痢が続くときは脱水症にならないように十分に注意しましょう。

旅行者下痢症を予防するために

旅行者下痢症の原因として、もっとも注意したいのは、細菌などによる感染症です。とくに東南アジアや中東、アフリカなどでは、水や食事からの感染が多いので、自分でもできる予防法を知っておきましょう。

<水や食事で気をつけたいこと>

  • 食事の前には石鹸でよく手を洗う。または、アルコールや消毒薬を含む携帯用のウエットティッシュやハンドジェルで手をよく拭く。
  • 生水(水道水をふくむ)は避け、ペットボトルや缶入りのミネラルウオーターなどを飲むようにする。やむをえず生水を使う場合は、かならず沸騰させてから飲む。
  • ホテルの部屋に置いてある、水差しの水にも気をつける(うっかり飲んでしまいやすい)。
  • 生野菜サラダも、水で汚染されていることがあるので、できるだけ避ける。フルーツもカットされているものは食べない。
  • 氷の入った飲み物やかき氷は避ける(氷が汚染されていることがある)。
  • 生の料理はもちろん、火が十分にとおっていない肉、魚、鳥、卵料理は食べない。とくに屋台料理には注意。
  • 加熱されていないミルクや乳製品は避ける。
  • スパイスの強い料理や初めての料理は、食べすぎに気をつける。

<その他に注意したいこと>

  • 歯磨きのときも、水には気をつける。ペットボトル入りのミネラルウオーターなどを使うほうが安全。
  • ホテルなどで自炊したり、食品を調理したりする場合は、包丁や食器なども安全な水で洗う。また、食品は十分に加熱する。
  • 下痢症状が起こったときは、自己判断で整腸剤などを飲まない(細菌の排出を遅らせ、症状を長引かせることがある)。
  • 下痢症状が激しく、発熱や嘔吐をともなう場合は、早めに受診する。
  • 夜更かしを避け、睡眠不足にならないように心がける。

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