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2017.07.10

vol.169 若返りホルモンとも呼ばれるDHEAの秘密

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Vol.169 若返りホルモンとも呼ばれるDHEAの秘密

あまりなじみのない名称かもしれませんが、DHEAは体の中で炎症を抑えたり、インスリンの働きを助けて糖尿病になるのを防いだりといった、さまざまな働きを持つホルモンです。筋力を保ったり、動脈硬化や脂質異常症を改善するなどの働きもあり、若返りホルモンとも呼ばれます。そんなホルモンですが、多ければいいというものではありません。それはどうしてでしょうか?

そもそもDHEAって何?

DHEAは男性ホルモン・テストステロンや女性ホルモン・エストロゲンをつくる材料になりますが、それ以外にさまざまな働きを持つことが報告されています。

  • 免疫力を高め、炎症を抑えたり腫瘍を予防する
  • インスリンの働きを助け、糖尿病を予防する
  • 筋力を維持し、代謝を高めて体脂肪を減らす
  • 動脈硬化を予防する
  • 脂質異常症を予防する
  • ストレスを緩和し、意欲を向上させる
  • アルツハイマー病を予防、改善する
  • 不妊症を改善する
  • 性的欲求を高める

DHEAの働きによって、生活習慣病などのリスクを減らすことができるというのです。そのため、テレビなどのメディアでは「若返りホルモン」と呼ばれることがありますが、若返りというより、「若さを保つ」「老化を促進しないようにする」ホルモンといったほうが適切かもしれません。
また、DHEAを服用することで皮膚の色素沈着の改善が見られたり、DHEAクリームを塗るとコラーゲン合成が盛んになったりするなど、肌の若さを保つ効果も見られるといいます。
さらに、日本で27年間追跡調査した研究では、男性でDHEAが多い人ほど長寿だということが報告されています※1。そんなことから、DHEAは長寿ホルモンとも呼ばれています。ではDHEAとは、何なのでしょうか。

DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)とDHEA-S(DHEAの塩酸塩。デヒドロエピアンドロステロンサルフェート)は、主に副腎から分泌されるホルモンで、血中ではほとんどがDHEA-Sとして存在します。
血中のDHEA-S値は男女ともに6~7歳ごろから増加し始め、20歳前後にピークに達した後、加齢とともに直線的に低下し、70歳時ではピーク時の20%に、85~90歳では5%まで低下してしまいます※2。
DHEAに関しては、まだすべてのことが解明されているわけではありませんが、上記のように、DHEAがさまざまな疾患の予防に貢献していると考えられています。そのため、加齢とともにDHEAが低下してしまうと、体に悪影響があるのではないかと懸念されます。そして、DHEAが減少する原因は加齢だけではありません。生活習慣もDHEAの減少に大きく関係しています。それは何でしょうか。

※1  Enomoto M, Adachi H, Fukami A, et al. J Am Geriatr Soc. 2008;56(6): 994-998. より

※2 「加齢とDHEA」 大中佳三 高柳涼一 最新医学 2014年5月号 より

ストレスがDHEAの大敵

DHEAはストレスに対抗する「抗ストレスホルモン」でもあります。ストレスに対抗するホルモンとして、ほかにコルチゾールがあります。DHEAもコルチゾールも副腎で分泌されるホルモンで、この二つが連携して働くと、有効に機能します。
人間はストレスを受けると、コルチゾールを分泌します。コルチゾールは血糖値を上げることで、ストレスから体を守ろうとします。体が危険を感じたときにエネルギーが必要となるため、血糖値を上げるようになっているのです。しかし、そのときに活性酸素が発生してしまいます。活性酸素はDNAを酸化させたりして、体を老化させます。そのため、コルチゾールは老化ホルモンと呼ばれることもあります。この酸化を防ぐのがDHEAです。
コルチゾールが多く分泌され過ぎると、免疫力が低下したり、筋肉の合成を抑制するばかりか分解を促進したり、骨の形成を抑制してしまいます。これに対してDHEAは、免疫力を向上させ、筋肉の維持に貢献します。また、骨密度に対してもDHEAが関係しているという報告もあります(これに関しては、DHEAの直接効果というより、エストロゲンの増加によるものだという見解もあります)。
いずれにせよ、ストレスに関する二つのホルモンの働きによって、私たちの体が正常に保たれようとしているわけです。

この二つのホルモンのバランスが乱れる原因の一つが副腎の疲労です。コルチゾールなどの分泌に追われ続けるなど副腎が疲労し過ぎると、DHEAが分泌されにくくなってしまい、バランスが崩れてしまいます。そしてコルチゾールが分泌され過ぎると、骨粗鬆症のリスクが高くなったり、手足の筋力が低下する難病「クッシング症候群」の心配もしなくてはなりません。そのため、副腎の疲労を防ぐことも重要です。
副腎は酸化に弱いといわれています。副腎の疲労を防ぐためには、ビタミンCやビタミンE、亜鉛やセレンなどの抗酸化物質を積極的に取ることが勧められています。そのなかでもビタミンCは重要です。体内でビタミンCの濃度が高く、消費する量が多い臓器が副腎だからです。副腎疲労を治療するために、DHEAのサプリメントやコルチゾールを補充する方法もありますが、ビタミンCを投与する治療が行われることもあります。それほど副腎はビタミンCを必要としているのです。

日本では医薬品に指定されているDHEAのサプリメント(現在、国内では製造されていません)ですが、摂りすぎると倦怠感やニキビ、不整脈などの副作用が起こることもあります。ほかにも肝機能障害などのほか、前立腺がんや乳がんの場合にがんを進行させるリスクがあるともいわれていますので、摂りすぎには注意しましょう。DHEAは増やせば増やすほどいい、というわけではないのです。

DHEAは体内で分泌されるものなので、20歳前後までは副腎の機能に問題があるなどよほどのことがない限り、心配はないでしょう。そして、不足が気になり始める40歳過ぎには、DHEAの分泌を妨げる原因を排除したり、自然に分泌されるように生活習慣を改めることを優先して考えるほうがいいのではないでしょうか。
では、そのためにはほかに、どんな点を注意すべきでしょうか。

睡眠や食事もDHEAに影響を与える

睡眠不足もDHEAの分泌に影響します。
睡眠が不足するとストレスがたまり続ける原因になり、コルチゾールの分泌が増えてしまいます。するとDHEAだけでなく、睡眠に関するホルモン・メラトニンやセロトニンの分泌が減少してしまい、いっそう睡眠不足が深刻になります。質の高い睡眠をとることは、ホルモンバランスを整える意味でも重要です。

栄養バランスもDHEAにかかわってきます。
DHEAをはじめとするホルモンの原料となるのが、アミノ酸やコレステロールです。コレステロールと聞くと、すべて悪者のように考える人もいると思いますが、コレステロールは細胞膜の材料となったり、ホルモンの原料になったりするなど私たちの体に必要なものです。アミノ酸やコレステロールが不足すると、DHEAの分泌にも悪影響を与えかねません。LDL(悪玉)コレステロールが増えすぎないように気をつけなければいけませんが、コレステロールを含む食品をまったく取らないような食生活は、マイナス面が大きいのです。バランスのとれた食生活は、体にとって必要不可欠です。

急激に血糖値を増加させるような食事もよくありません。
精製された小麦粉や米など、糖質を多く含む食品を中心にした食事は、血糖値を急激に上げてしまいます。すると、血糖値を下げる唯一のホルモン・インスリンの分泌が盛んになり、副腎疲労に対してもよくありません。そうならないようにするためには、食事の最初に野菜を食べる、よく噛んで早食いをしない、大食いを避けるなどを実践して、食後の血糖値が急激に上がらないように注意しましょう。本コラムのバックナンバーvol.164「時間栄養学の基本」でも紹介しましたが、朝食を抜いて昼食を取ると、昼食後の血糖値の上昇幅が大きく、しかも上昇した状態が長く続くとされています※3。朝食を抜くことで肥満に結びつくという報告もありますので、1日の最初の食事=朝食をあなどってはいけません。
糖質を多く含む食品に限らず、食事の摂取量=エネルギー摂取量を考える必要もあります。また、カフェインやアルコールの取り過ぎも、DHEAの分泌を抑えてしまう危険性があると指摘する専門家がいますので、注意しましょう。

※3 秦艶萍、横山久美代、成瀬克子、徳久幸子「朝食欠食が昼食後の血糖値変動に及ぼす影響」女子栄養大学紀要 34, 33-39, 2003 より

DHEAの分泌を増やすには?

DHEAを増やすのに効果があるのが運動です。なかでも下半身の筋肉を活用し、軽い負荷のかかる程度の運動が、DHEAを増加させるのに効果があるといわれています。
ウォーキングの場合、ただ歩いているだけではDHEAに対する効果はあまり期待できません。ウォーキングをするなら、坂のあるルートを選んだり、階段を利用するなど、負荷を加えることを考えましょう。途中で速歩きをプラスするなど、“散歩とは異なる歩き方”をすることをお勧めします。また、1日5~10分程度の軽い筋力トレーニングも、DHEAの分泌をよくするとされています。
ただ、「運動をしなければいけない」などと考えすぎると、ストレスがたまってしまう心配があります。また、激しい運動自体もストレスになります。単にDHEAを増やすだけでなく、ストレスを解消する点も考えて適度な運動を行う必要があります。そのためには、サイクリングやジョギング、水泳など、自分が“好きで続けられる運動”を見つけることが重要です。

食事でDHEAを増やそうと考えるなら、ヤムイモを取ることが効果的です。ヤムイモとは、ヤマノイモ科ヤマノイモ属のイモを食用にする植物のこと。自然薯や長芋もヤムイモの一種です。
これまでの研究で、自然薯にDHEAが含まれていることが明らかになっています。同じヤムイモのなかでも、自然薯には抗酸化成分であるビタミンCが15㎎、ビタミンEが4.1㎎、亜鉛が0.7㎎(いずれも可食部100gあたり。以下同)含まれています。長芋や大和芋のビタミンCは4~6㎎、ビタミンEは0.2㎎、亜鉛は0.3~0.6g※4ですから、副腎疲労を抑える成分の面でも、自然薯の方が効果的だと考えていいでしょう(前に述べた抗酸化成分のうちセレンに関しては、自然薯には微量、長芋や大和芋には1μgとされています)。
ちなみに、前に述べたDHEAサプリメントは、ヤムイモから抽出したDHEAと同じ働きをする成分です。
ほかにDHEAを増やすためにお勧めの食材で、納豆や黒豆、アボカド、魚介類を挙げる専門家もいますので、念頭に置いておきましょう。

いずれにせよ、運動とバランスのとれた食事、十分な睡眠はDHEAの味方です。自分の体の中で自然にDHEAを増やすことができるよう、生活習慣を再確認してみましょう。

※4 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」文部科学省 より


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