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2003.12.10

vol.6 アルコールが好きなら肝臓をいたわろう

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アルコールと肝臓障害

Vol.6 アルコールが好きなら肝臓をいたわろう 日本の歴史のなかで、現代ほどアルコールがたくさん飲まれている時代はないといわれます。最近の30年間でも、日本人のアルコール総消費量は1971年の約516万キロリットルから、2001年の約1010万キロリットルへと2倍に増えています。成人1人当たりでは年間 99.3リットルも飲んでいる計算になり、缶ビール(350ミリリットル)に換算すると284缶にも相当します(国税庁発表の酒税課税数量資料より)。
その背景には経済的な豊かさだけでなく、ストレス社会のなかで、気分転換などの理由から日常的にアルコールを飲む人が増えているためと考えられています。
その一方で最近の研究から、日本人はアルコールに弱い体質の人が多いことがわかってきました(*1)。それだけ肝臓がダメージを受けやすく、実際にアルコール性の肝臓障害を起こす人が少なくありません。生活習慣病のなかで肝臓病は、がん、心臓病、脳卒中に続いて死因の第4位を占めているほどです(*2)。
とくに年末年始はアルコールに親しむ機会が多くなります。体調をくずさないように、健康的な飲み方を知っておきましょう。

(*1)アルコールは肝臓で2段階に分解されます。はじめはアルコール脱水素酵素によって毒性の強いアセトアルデヒドに、そしてアルデヒド脱水素酵素によって無害化されて酢酸になり、体外へ排出されます。日本人の4割以上が、2段階目のアルデヒド脱水素酵素の働きが弱いため、悪酔いや二日酔いを起こす人が多いとされています。

(*2)肝臓病の原因は大別すると、C型肝炎などにみられるウイルスによるものとアルコールによるものがあります。このうちアルコールが原因の肝臓病は、生活習慣病の典型的なもののひとつとされています。

「アルコールでは太らない」は誤解

アルコールが原因となる肝臓障害のなかで、もっとも多いのが「脂肪肝」です。肝臓には通常でも細胞の10%程度に中性脂肪が貯蔵されていますが、それが30%以上になった状態が脂肪肝です。
アルコールをとりすぎると、脂肪酸から中性脂肪が大量に合成されて肝臓の細胞に蓄積されるため、脂肪肝が起こりやすくなります。余分な中性脂肪はさらに血液中にも流れ込み、高脂血症や動脈硬化の原因ともなります。
よく「アルコールはエンプティ・カロリーなので太らない」と思っている人がいますが、それは誤解です。前述のように中性脂肪を合成するため、たとえ体重が増えなくても、内臓脂肪型の肥満の原因となるのです。
脂肪肝の状態をほうっておくと、アルコールが分解されるときに発生する毒性物質のアセトアルデヒドや活性酸素によって、次第に肝臓の細胞が壊され、「肝硬変」へと進みます。さらに放置していると、「肝不全」や「肝がん」にもなりかねません。
しかも肝臓は「沈黙の臓器」ともいわれるように、痛みやきしみといった症状をなかなかみせません。そのため気付かないうちに、脂肪肝から肝硬変へと進んでしまうことが多いのです。悪化すると、だるさ、食欲低下、黄疸などの症状がみられることもありますが、脂肪肝の段階ではほとんど自覚症状はありません。それだけにアルコールをよく飲む人は定期的に健康診断を受け、脂肪肝の疑いがある場合には早めに治療を受ける必要があります(*3)。

(*3)アルコール性の肝臓病では、血液検査をするとγ(ガンマ)-GTPの数値が高い傾向がみられます。γ(ガンマ)-GTPは肝臓などにある酵素のひとつで、肝臓に障害が起こると血液中の量が増えます。また、中性脂肪値も高い状態が続く傾向がみられます。

アルコールとリスク

アルコールをどれくらい飲むと、脂肪肝になるのでしょうか。ひとつの目安として、日本酒3合(ビールなら大瓶3本)程度の量を、2~3年間毎日のように飲んでいると、脂肪肝になりやすいとされています。
ただし、これはアルコールに比較的強い人の場合であって、弱い人だと、アセトアルデヒドの影響が5倍からときに10倍にもなるといわれます。つまり弱い人にとっては、1合の日本酒が5合以上に相当するのです。とくに下戸といわれるような弱い人が習慣的に飲み続けていると、肝臓病だけでなく、口のなかやノド、食道などに多重がんが発生しやすいことがわかっています(*4)。
また、女性もホルモンなどの影響から、男性より少量かつ短期間で脂肪肝を起こしやすい傾向があります。
ではアルコールに強い人は心配ないのかといえば、決してそんなことはありません。アルコール性の肝臓障害を引き起こす基本的な要因は、飲酒量と飲酒期間にあります。たくさんの量を、長い間飲み続けていれば、当然リスクは高くなります。
「肝臓病は、治療法は簡単だが、実行がむずかしい」といわれます。治療法の第一は、禁酒(断酒)です。しかし、この禁酒がなかなかむずかしいのです。それだけにアルコールが大好きで、よく飲む人ほど、日ごろから飲みすぎに気をつけ、肝臓をいたわってやる必要があります。

(*4)国立がんセンター東病院の調査(2001年)によるものです。アルデヒド脱水素酵素の働きの弱い人が飲み続けていると、強い人の18倍も多重がんを起こしやすいとされています。

健康的な飲み方とは

アルコール性の肝臓障害を予防するには、健康的な飲み方を知っておくことが大切です。

●飲みすぎない

悪酔いや二日酔いをしない酒量、つまり自分の適量を知っておきましょう。アルコールに弱い人は、酒席では早めにウーロン茶などに切り替えることが大切です(*5)。女性の場合、生理前はホルモンの関係で酔いやすくなるので、酒量を控えめにしましょう。

●ゆっくり飲む

飲むペースが速いと、それだけ肝臓に負担がかかります。肝臓がアルコールを分解する速度は、日本酒1合(ビール大瓶1本、ワインならグラス2杯)に3~4時間とけっこう時間がかかるからです。日本酒1合を30分以上かけて、ゆっくり飲むようにしましょう。

●おつまみを上手にとる

空腹状態でアルコールを飲むと、吸収が速まり肝臓には大きな負担となります。また、肝臓がアルコールを分解するときに、たんぱく質やビタミン類、ミネラル類(とくに亜鉛)が消費されます。そのため、おつまみで大豆食品(豆腐料理、枝豆、煮豆、おからなど)や野菜・果物、ナッツ類を食べ、上手に栄養補給をしましょう。果物に含まれる果糖には、アルコールの分解を助ける働きもあります。
アルコールには食欲増進効果があるので、つい脂っこいものを食べたくなりますが、脂肪の多い食品も肝臓には負担となります。

●肝臓を休ませる

肝臓はけっこうタフな臓器で、脂肪肝になっていなければ、2日間くらい休ませると機能を回復するといわれます。よく飲む人でも、週に2日はアルコールを飲まない「休肝日」をつくることが大切です。脂肪肝の疑いのある人は、意識的に節酒して肝臓を休ませてください。

(*5)自分がアルコールに弱いことを知らずに、つい飲みすぎる人が少なくありません。強いか弱いかを知るには、消毒用アルコールをガーゼにしみこませて腕の内側に貼り、7分たったらはがし、その後10分間様子をみます。ガーゼを貼った場所がすぐに赤くなるのはとても弱い人で、赤くなる時間が速い人ほど弱く、反対に強い人はほとんど色が変わりません。


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