vol.148 最新データからわかってきた!若返る高齢者
近頃の60代は、旅行や登山、スポーツなどでアクティブに体を動かし、趣味やおしゃれへの関心も高く、人生を積極的に楽しむ人が増えています。以前は還暦になったら高齢者の仲間入りでしたが、いまの60代は若くて元気と感じていたことが科学的なデータでも明らかになっています。2015年6月に開催された第29回日本老年学会総会のシンポジウムでは、高齢者の身体機能や知的能力は年々若返る傾向にあるという声明が出され、新しい高齢者の定義について討議されました。高齢者の定義やイメージが変わりつつあります。
身体能力ばかりではなく、どんどん若くなる高齢者の意識
現在、日本人の平均寿命は、男性80.50歳、女性86.83歳。平均寿命は延び続けています。こうした中、高齢者は年々若返っていると指摘するのは、日本老年社会科学会の理事長で、福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座の安村誠司教授です。「75歳というと以前はとてもお年寄りでしたが、いまの75歳の死亡率は20年前の70歳と同じです。死亡率は元気の逆の尺度ですから、5歳長く延びて若くなっています。高齢者は弱い人、支えないといけない人というネガティブなレッテルを貼りがちですが、元気な高齢者も大変多いのです」と話します。
今年、内閣府から発表された平成26年度「高齢者の日常生活に関する意識調査」では、高齢者が元気になっている実態が明らかになっています。この調査は、高齢者の日常生活の状況や衣食住などについて把握するために実施され、5回目となる今回は、全国の60歳以上の男女を対象に3,893人から回答を得ました。
その結果、「高齢者とは何歳以上か」という質問では、「60歳代」という回答が約1割と最も少なく、「支えられるべき高齢者の年齢」は、「80歳以上」が最も高くなりました。また、「自分が高齢者だと感じるか」の質問では、5割以上が「いいえ」と回答し、意識も若くなっていることが明らかになりました。
働く意欲があり、約3割は仕事をしている現代の高齢者
働きたい年齢については、「働けるうちはいつまでも」が28.8%と最も高く、働く意識が高いことがわかりました。高齢者の就労については、内閣府の「平成26年版高齢社会白書」の高齢者の就業状況でも報告されています。これによると男性で仕事をしている人は、65~69歳で49.0%、75歳以上では16.1%。女性は65~69歳で29.8%、75歳以上で6.3%が働いており、60歳を過ぎても仕事をしている高齢者の存在が浮かび上がっています。意識調査の実施に協力した安村教授は、「平均寿命が短い時代は60歳で定年は合理的でした。しかし、いまは高齢者の約3割が働いています。身体や知的能力が衰えていないこのような人も含めて、一概に年金や医療・介護で支えられている高齢者とする見方は、間違っているのではないでしょうか」と話します。
さらに、意識調査では高齢者に将来の不安についても聞いています。最も多かった回答は「自分や配偶者の健康や病気」で、「体力の衰え」に最も不安を感じていました。また、「自主的に参加したいもの」では、「健康・スポーツ(体操、歩こう会、ゲートボール等)」が最多で健康に対する関心がとても高いことがわかりました。
「太極拳ゆったり体操」で要支援・要介護を防ごう
平均寿命が延びて人生の後半の時間が増えたことで、高齢者の生き方や暮らし方が多様化し始めています。元気で働く意欲のある人には働ける環境を、一方では身体的、精神的に弱る人もいるため、高齢者への支援はなくすことはできないと安村教授は強調します。共に生きられる社会のあり方や社会づくりが求められています。
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ABC 朝日放送「たけしの健康エンターテイメント!みんなの家庭の医学」
監修 福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座 教授 安村 誠司先生
日本老年社会科学会 理事長
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