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vol.151 手の診療に活用 有用性が高まる超音波

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Vol.151 手の診療に活用 有用性が高まる超音波

布巾が絞れない、茶碗を落としてしまった、物が持てない……。とくに重労働をしているわけでもないのに手の具合がおかしいと感じたとしても、このような手のトラブルは、そのまま放っておかれがちです。しかし、「たかが手、されど手」です。手は第二の脳ともいわれる繊細で緻密な運動器。手の診療を専門とする「手外科医」というエキスパートがいるほどです。気になる手の症状は、治療ができる病気かもしれません。
手外科医で、東京逓信病院整形外科で運動器超音波外来を担当する伊藤祥三医師は、「手外科では、肘から先の部位を主に担当します。整形外科というと膝痛や腰痛で受診する人が多いですが、手の症状で困っておられる方も少なくありません。超音波では細かい組織をしっかり診ることができ、手の診療では非常に有用です」と強調します。整形外科では、近年、超音波を用いた診察や治療が行われています。機器の性能が向上し、解像度の高い機器が開発されたことなどによって、新しい分野での活用が広がり始めています。

運動器の動きがリアルタイムでわかる

超音波といえば、循環器、消化器、乳腺、産婦人科などの検査で用いられています。受けた経験がある人は、多いのではないでしょうか。体の深部を調べる画像検査には、エックス線、CT(コンピューター断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像装置)などもありますが、整形外科で超音波を活用する最大のメリットは、動くものをそのまま診察できるところにあると伊藤医師は話します。「手などの運動器は、動かしたときに問題がはっきりする場合があり、その状態を見ないと詳しいことはわかりません。エックス線、CT、MRIは基本的には静止画です。超音波を用いればリアルタイムで組織を動かしながら診ることができます」。

超音波が得意とする手の病気とは

手の病気の中で最も多いのが「ばね指」(弾発指)という病気です。指を曲げたり、伸ばしたりすることは、腱とその腱の浮き上がりを押さえる腱鞘によって支えられています。この間に炎症が起こり、痛みや腫れなどの症状が起きるのが腱鞘炎です。ばね指とは腱鞘炎が長期にわたって継続して腱や腱鞘が肥厚し、指の動きに支障をきたしている状態です。指の使い過ぎなどが原因で、一般に更年期の女性に多いといわれていますが、男性や、糖尿病、人工透析をしている人にも発症します。重症になると指の曲げ伸ばしの際に強い痛みを伴う、指が曲がったまま伸ばせないなどの症状が現れます。
治療法は、主に注射と手術があり、重症の方以外はステロイド薬の注射で治療することが一般的です。注射は非常に有効な治療法ですが、中には症状がいったん軽快しても再発する人がいます。「何回も注射を打つと腱が傷むなどのデメリットがあり、病態によっては最初から手術を提案して、患者さんの負担を減らすことも必要なことだと思います。一言でばね指といっても、超音波で診るといろいろなタイプがあることがわかります。再発しやすいタイプか、そうでないかを治療前に見極めることもできます」(伊藤医師)。

麻酔科でも活用されている超音波

超音波の活用は、麻酔科でも広く行われています。麻酔科やペインクリニックでは、痛みを止める神経ブロックという治療法があります。神経ブロックでは傷つけてはいけない危険な組織を避けながら、神経の近くに薬を注入する必要があります。この手技はこれまで経験が頼りでしたが、超音波を用いることで神経を確認しながら安全に注射針を進めることができ、薬の量も最低限にできるということです。「整形外科では、患者さんが親指のつけ根の関節(CM関節)の痛みで来院され、関節内に注射をする場合があります。指の関節は非常に小さく的が狭いのですが、超音波で診ながら注射を打つと関節に確実に薬が入るのがわかります。それにより、少ない薬で最大限の治療効果を得ることができます。可視化して確実な治療ができることは、患者さんの安全につながります」(伊藤医師)。

手の悩みは、整形外科の手外科医に相談しよう

症状が進行すると、ペットボトルのふたがあけられない、洗濯バサミをつまむだけで痛い。手の指が痛いと日常生活のちょっとしたことができなくなります。痛みがあると指を使わないようにしようと消極的になりがちですが、過度に制限しないでほしいと伊藤医師はアドバイスします。「手を使うということは、その人らしく生きられること。指を動かさなくなることで、活力の源を失ってほしくないからです。ゴルフやテニス、楽器の演奏、手芸…。好きなことをして、楽しんでください。そのために診療するのが我々の仕事です。悩みが一気に解決して、早く受診すればよかったとおっしゃってくださる患者さんもいます」。手の悩みを抱えている人は、潜在的に多いといわれています。手の症状が気になったら、手の診療を専門にしている整形外科医に相談してほしいと呼びかけています。

監修 東京逓信病院 整形外科 運動器超音波外来 伊藤 祥三先生


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