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vol.168 新たな方法で研究が進む「希少がん」

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Vol.168 新たな方法で研究が進む「希少がん」

「希少がん」を知っているでしょうか。患者数が多い五大がん(胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、肝臓がん)に対して、少数であることからこのように呼ばれています。まれに発生する病気であるため、治療や研究が進まず、対策は遅れていましたが、平成24年の第2期がん対策推進基本計画に希少がんが盛り込まれ、平成26年6月、国立がん研究センターに希少がんセンターが開設されました。最近では、従来の臨床試験を見直した新たな方法での研究が動き始めています。

希少がんとは

希少がんは、年間の発生数が人口10万人当たり6人未満と定義されています。この中には、聞いたことのある脳腫瘍、悪性リンパ腫、皮膚がんの一つであるメラノーマ(悪性黒色腫)などがあります。小児のかかるがんも頻度が少ないことから「小児がん」として希少がんに含まれます。
また、肉腫(サルコーマ)も悪性腫瘍であり、希少がんです。肉腫は骨に発生する骨肉腫のほかに、脂肪や筋肉、神経などの軟部組織からも発生します。部位も顔、腕、脚、胸、背中、子宮などさまざまで、全身に生じます。消化器にできるGIST(消化管間質腫瘍)も肉腫の一つで、人口10万人当たり2~3人に発生する非常にまれな病気です。この他には、原発不明がんなどがあります。希少がんには、このような病気が190種類以上あるといわれています。

希少がんの問題点と課題 

希少がんは、それぞれの発生率はごく少数です。しかし、これらをまとめるとがん全体の15~20%を占め、乳がんや肺がんの罹患者数にも匹敵します。そこで、改善に向けた対策に注目が集まっているのです。
希少がんについては、診療体制が十分に整っておらず、患者と医療者の双方からいくつもの問題や課題が指摘されています。患者が抱える悩みは、「なかなか診断がつかない」「どこで診療を受けたらいいか分からない」「専門の医療機関や医師にたどり着くまでにとても時間がかかる」など。医療を提供する側では、「診療のための科学的な根拠が十分でない」「病気に詳しい医師が少ない」「薬の開発や研究が進んでいない」などが挙げられています。

活躍が期待される腫瘍内科医

がん研有明病院 化学療法部総合腫瘍科の仲野兼司副医長は、腫瘍内科医の立場から、こうした現状に対して「どこで診てもらったらいいのか。誰が担当するのか。そこから腫瘍内科医は、希少がんに関わっていくべきではないか」と指摘します。
腫瘍内科医は、主にがんの薬物療法を担当する専門医です。抗がん薬や分子標的薬、免疫阻害薬などがんの治療薬に精通し、幅広い臓器に対して薬物療法ができます。専門性の高い腫瘍内科医には、診療の窓口となる役割が求められていると話します。

新たな臨床試験が行われている

また、希少がんは、新しい薬がなかなか開発されません。これは患者が少数で、薬の臨床試験さえ困難という状況があるからです。通常、新しい薬が承認されるためには、第Ⅰ相、第Ⅱ相、第Ⅲ相という臨床試験を積み重ねます。第Ⅲ相で、多数の患者を対象にした比較試験を行って薬の有効性と安全性が確認されてはじめて使用が認められます。希少がんは従来の臨床試験ができないため、この壁を超えるべく新たな方法が考え出されています。「その一つがバスケット試験です。バスケットとは、籠という意味。ここにがんの種類を問わず、特定の遺伝子に変異があるがんを集めて、希少がんも加えます。これらの腫瘍に対して、変異を標的にした薬の効果を調べるのです。実例では、BRAF(ビーラフ)遺伝子に変異があるがんに対して、メラノーマに承認されたベムラフェニブという薬の効果を調べたところ、ランゲルハンス細胞組織球症/エルドハイム・チェスター病という極めてまれな疾患に対し、18人中6人に効いたという結果が得られています。治療については、こうした科学的根拠を積み重ねていくことが腫瘍内科医のもう一つの役割だと思います」(仲野副医長)。
ランゲルハンス細胞組織球症とは、組織や臓器の中にいる白血球が増殖する疾患の総称です。白血球の一種であるランゲルハンス細胞が異常に増えてこぶを作ったり、骨を破壊したりします。エルドハイム・チェスター病は、非ランゲルハンス細胞による組織球症で、世界でも500人ほどしか報告されていない病気です。

困ったときはまず電話相談を

希少がんについては、病気の正しい情報が不足し、理解や周知が進んでいないことも指摘されています。そこで、国立がん研究センター中央病院では、患者や家族をサポートしようと「希少がんホットライン(03-3543-5601)※」を開設し、専任の看護師が電話相談に応じています。相談は国内のみならず、海外からもあり、肉腫についての相談が多いということです。「まれながんといわれた」「診断がつかない」「病理診断が難しい」「治療法がわからない」など、希少がんについて困っているときは、まずは電話で相談することをお勧めします。

※ 平日9:00~16:00(通話料がかかります)

監修  がん研有明病院 化学療法部 総合腫瘍科 副医長 仲野 兼司先生


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