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激しい戦いに臨むための身体作りとリカバリーケア(1 ⁄ 3)

Handball National Team
Handball

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「空中の格闘技」と呼ばれるほど、コート上での接触が激しいハンドボール。ディフェンスが密集したエリアに飛び込んでゴールを狙う役割のシューターも、負傷のリスクとは隣り合わせです。屈強かつ柔軟な身体を作ることが求められます。また試合・練習後はシュートの際に大きく動く肩関節をはじめ、身体の各部のリカバリーケアが欠かせません。今回は“日本最速シューター”と呼ばれる部井久アダム勇樹さん、若手ホープとして期待の集まる蔦谷大雅さんのシューターふたりに、日々の身体作りやリカバリーケアについて話を伺いました。

ケガや疲労蓄積の防止にはまず「身体の基礎づくり」と「柔軟性」

195cm、100kgという恵まれた体格と圧倒的な身体能力を活かし、空中の高い位置から放たれるシュートは最速127km。高校時代から日本代表に選ばれ、23歳の現時点で国際試合50試合出場を達成と、すでに代表の中心を担う存在になりつつある部井久アダム勇樹さん。しかし学生時代は「大きなケガばかりしていた」とのこと。

「中学と高校で腰椎分離症(腰椎の関節間部の疲労骨折)を2回やりましたし、背中の肉離れも多かったです。ケガの大半は試合や練習中のものではなく、ハンドボールを続けることで引き起こされた慢性疲労による痛みだと思います。また肺気胸という肺に穴が開く病気になったこともありました。こちらは明確な原因は不明でしたが、痩せている男性に多いという特徴があります」(部井久さん)

日本代表に初選出された高校当時は今より体重も15kgほど少なく、代表合宿での先輩たちとのプレーでは、「ディフェンスを上手くかわしても最後のワンプッシュで倒されてしまう」「ディフェンスでも体格差でやられてしまう」という経験の連続だったとのこと。自分のやりたいプレーができないことにもどかしさを感じていました。そこで負傷や病気の予防のために、部井久さんは身体作りに励むようになりました。

「全身を大きくして、体重も増やしてからは、当たり負けも減りましたし、ケガも減っていきました。そのためケガを防止するうえで、身体の基礎を作ることはすごく重要なんだと身をもって実感できました」(部井久さん)

一方の蔦谷大雅さんは、中央大学在学中の2021年、日韓定期戦で代表デビューを飾った期待の左利きシューター。「長くプレーできないような大ケガはこれまで経験がない」とのことですが、その秘訣は柔軟性の高さにありそうです。

「中学生の頃から風呂上がりのストレッチが習慣なんです。アンダーカテゴリーの代表で『ハンドボールを長く続ける上でストレッチは大事だよ』と聞いてからは、教わった方法を取り入れて、より重点的にストレッチを行うようになりました」(蔦谷さん)

中央大学で蔦谷さんと共にプレーしてきた部井久さんも「大雅は開脚もメチャクチャ開くし、本当に身体が柔らかいんです」と話します。肩の可動域も広いため、「シュートのときはキーパーからボールが見えづらいし、いろんな方向からボールをシュートできるので、相手も取りづらいと思います」と蔦谷さん。その身体の柔らかさは、プレイヤーとしての武器にもなっている……というわけです。

「高校時代から大雅のプレーは見ていましたが、『シュートフォームが本当に綺麗な選手だな』というのが僕の第一印象でした。そのフォームの美しさや、いろいろな体勢から多彩なバリエーションのシュートが打てることは、身体の柔らかさがあってこそだと見ていて感じますね。僕もストレッチは頑張っていますが、大雅と比べると全然硬いです(笑)」(部井久さん)

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