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休む勇気が大事(3 ⁄ 3)

Yuriko Kobayashi
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痛みなく走れることほど、幸せなことはない

高校時代に故障の経験がなかったため、未然に防ぐ方法も、対処法もほとんど知りませんでした。現役を引退して数年が経過し、「一度くらいケガの経験をしておけばよかった」と思うこともありました。同じ兵庫県小野市出身で、小林さんが持つ1500mの日本記録を14年ぶりに更新した田中希実選手の活躍を見ながら、しみじみと話していました。
「田中選手は、身体の状態をトレーナーに伝えることがうまいんです。こういう動きをしたときに、この筋肉が張るとか、痛みが出る手前で対処できています。トレーナーに話を聞いても、他の選手とは伝え方が違うと。自分の身体と奥深く向き合っているのでしょうね。練習を休む勇気は大事です。私の場合は故障する前に自分から止めることができませんでした。負けん気を出し、無理して練習を消化し、その日だけで満足してしまった。それでは次につながりません。翌日は疲労感に襲われて、身体が重くなるんです。結局、点と点がつながらず、線にならない。やはり、自分との向き合い方、気持ちのコントロールも大切です」
小林さんは引退後に結婚し、いまは二児の母になっていますが、腰をケアしながら楽しく走り続けています。11月中旬に行われた取材当日も、早朝5時から走ってきたようです。現在は一般社団法人日本パラ陸上競技連盟理事など多くの肩書を持ちつつ、関西方面のテレビでも司会、リポーターでも活躍中。マラソン大会のゲストランナーで呼ばれることもあれば、ランニング教室も開催しています。
昨今、ランニングがブームとなり、市民ランナーは増えるなか、あらためて休息を含めたリカバリーケアの重要性を説いていました。痛みを抱えていれば、治療院でマッサージを受け、故障を防ぐために日頃からストレッチ、低周波治療器などを使い、セルフでリカバリーケアすることも大事です。
「低周波治療器は深部までほぐされているような感じがして心地よいです。陸上選手でも取り入れている選手は多いと思います。パッドを貼る場所さえ間違えなければ、役に立つはずです」
“休む勇気”は、年齢、レベルを問いません。
「痛みなく走れることほど、幸せなことはないです」
休息のタイミング、リカバリーケアの方法を知れば、いままで以上に楽しいランニングライフが待っているはずです。

<プロフィール紹介>

小林 祐梨子さん

兵庫県小野市出身の女子陸上競技元選手(中距離走・長距離走)
2006年1500mで日本新記録(当時)を樹立。2008年8月北京オリンピック5000mに出場。2009年世界選手権5000mに出場し、決勝進出。
現在は、一般社団法人日本パラ陸上競技連盟理事を務めるなど多くの肩書を持ちつつ、テレビでの司会、リポーターとしても活躍中。

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