
高強度なレースと練習を続けるには日々のケアが欠かせない
2008年の北京オリンピックから2021年の東京オリンピックまで、4大会連続でオリンピック日本代表を務め、全日本選手権では12度優勝、アジア選手権では10度優勝。世界の第一線で長く活躍を続けた山本さん。
北海道の十勝で育った幼稚園のころから自転車での遊びに熱中し、小学4年生ではじめてレースに出場。高校3年生のときには、早くもスイス・ルガーノで開催の世界選手権に初出場しています。そのレースで「ヨーロッパでプロ選手になる」という目標が明確になったのだそう。
「日本ではマウンテンバイク競技を知らない人ばかりなのに、その世界選手権では約5kmのコースにお客さんがビッシリいて、テレビで生中継もしていました。そしてコースは日本のレースとは比べ物にならないハードさで、選手たちもメチャクチャ速かった。そのすべてが僕にはカルチャーショックで、『競技をやるからには本場で走りたいし、ここで活躍できる選手になりたい』と思いました」
山本さんがメインで取り組んできたのは、マウンテンバイクのなかでも「クロスカントリー」と呼ばれる種目。そこで好成績を残すには、競技に合わせた体作りやリカバリーケアが求められます。
「レースの時間は1時間分15分から1時間半くらいで、競技中の平均心拍数は若い時期だと180を超えていました。それくらい強度が高い競技なので、しっかりと栄養を取らないとリカバリーもできませんし、質の高い練習もできません。また身体能力に関しては持久力も瞬発力も求められるため、余分なぜい肉は落としつつ筋肉も付けすぎない、バランスの良い身体づくりを理想としてきました」
栄養や休息の取り方、身体の作り方は、時期によって様々な方法を試してきたそうです。
「身体に関しては、20歳前後の僕は体脂肪率が15%程度と、選手としてはポッチャリしていて、身体の重さをパワーでカバーする走り方をしていました。フランスに拠点を移して活動していた時期は、監督やコーチに身体を絞ることを求められ、その時期は糖質制限を含めた精神的にもキツいダイエットに取り組んでいました。その後、さらに歳を重ねてからは、自分なりのやり方で体重や体脂肪の管理もできるようになり、精神的にも楽な体作り・コンディション作りができるようになったと思います」
食生活では具体的にどのような心がけをしていたのでしょうか。
「練習でもレースでも、僕らは常に激しく動いているので、炭水化物はしっかり摂るようにしていました。また若い頃はサプリメント企業から提供を受けたプロテインを摂っていましたが、歳を重ねてからは自然の食材から栄養を摂ることを心がけるようになりました。そして、『そのとき身体が求めているものを摂る』というのも意識していたこと。酸っぱいものが食べたいときは、そうした食べ物の栄養を身体が欲しているサインだと思いますし、ケータイでいろいろ検索しながら食材を買い揃えていました」
そうした食生活を含め、体作りや体のケアを意識するようになったのは、一定のキャリアを重ねてからだったそうです。
「27、28歳くらいになると、やはり疲労のとれにくさを感じるようになってきたので、そこからリカバリーケアにもさまざまな方法を取り入れるようになりました。20代前半のころは身体もとにかく元気だったので、まだ身体のケアには鈍感でフォーカスができていませんでしたね」