低周波治療器は固くなった筋肉をほぐし、身体をケア
食生活以外の部分では、どのような方法で身体のリカバリーケアに取り組んでいたのでしょうか。
「基本的なこととしては練習前後のストレッチです。また世界で戦っていた時期は定期的にマッサージも受けていました。ただ、遠征中はケアをしてくれるスタッフが常に帯同しているわけではないので、セルフケアの方法もいろいろと試しました」
身近なモノを使った方法から、本格的な機器を使ったものまで、さまざまな方法を試してきたそうです。
「簡単なものだと、ゴルフボールを使った足のマッサージや、木製の棒を使って全身をほぐす方法も試しました。あと激しいレースのあとは、冷たい水に入って身体を冷やすこともしていましたね。電気的な刺激でリカバリーや筋力強化をできるデバイスを使っていた時期もありますし、足を圧迫して血流を促進させる機器を使っていた時期もあります。いろいろな国の選手達がチーム内にいた時期もあったので、それぞれの選手のリカバリーケアの方法を見て、同じ方法を取り入れることもありました」
ではマウンテンバイクの競技選手はどんな部位を重点的にケアしているのでしょうか。
「僕の取り組んでいたクロスカントリーは全身運動のスポーツです。特に脚は太ももの前部分に疲労が溜まるのはもちろん、裏側のハムストリングやお尻の大殿筋、それに腰周辺もケアしたい部分です。上半身もハンドルを常に握っているので、やはり腕を中心にかなり疲労します。また腰を痛めてしまい、そのケアに取り組んでいる人も多いですね」
起伏の激しい地形を高速で走り抜け、順位を競うスポーツのため、大きなケガのリスクも常にあります。
「転倒は自動車の交通事故並みの衝撃を受ける場合もあるので、大きな怪我につながります。転び方によって怪我する部位は変わりますが、鎖骨を折る人は目立ちますし、骨折しなくても打ち身になったり、強い襲撃で首周辺を痛めてしまったりすることもあります」
山本さんも2014年のワールドカップで胸骨の剥離骨折と脱臼という大きな怪我を経験しています。そこからはトレーニングにもより工夫を凝らすようになったと語ります。
「ケガによって僕の身体はバランスが大きく崩れてしまったので、自重やゴムを使ったコアトレーニングは重点的に行いました。コアトレーニングで細かなインナーマッスルも鍛えることは、身体の様々な動きをスムーズにする効果もありますし、疲労をためにくい身体を作る効果もあったと思います」
そうやって様々なケアを行うなかで、低周波治療器も活用してきたのだそう。
「低周波治療器は、海外の選手のあいだで流行っていたこともあって使い始めました。最近もまた積極的に使っていますが、以前のものより軽くコンパクトになりましたし、ケータイをいじっている時とか、テレビを見ている時とか、ボーッとしてリラックスしているときにも使えるのがいいですね」
山本さんは低周波治療器を、主に疲労回復のために使っています。
「自分の手やプロのマッサージでも動かせない部分まで、筋肉がほぐれて柔らかくなる感覚が気持ちいいですね。骨と筋肉が離れる感覚というか、固まっていた筋肉がほぐれて綺麗に整ってくれる感覚があり、その後に脚を動かすと筋肉の状態がいい感覚があります」
使うタイミングは「練習やレースの後が主」なのだとか。
「身体を動かした後で使っておけば、ある程度は筋肉のハリも落とせて、身体の状態は整うと思うんですよね。それで翌日はウォーミングアップなどで身体に刺激を入れて、ベストのコンディションでバシッと走れるのが僕の理想です。身体を動かす前にケアを熱心にやりすぎると、筋肉が緩みすぎて身体がダラッとしてしまう。ケアはやればやるほど良いというわけではないと感じています」