指導者の考えを押し付けない
佐藤監督は独学で勉強しながら専門家の意見を聞き、試行錯誤を繰り返しています。体重の乗せ方に目を向け、歩き方、走り方も修正。縦横のステップワーク、バランスよく止まる練習、上半身と下半身の連動させる動きなど、メニューもブラッシュアップさせています。
「良いものは残しつつ、常に新しいものを取り入れてチャレンジするようにしています。現状維持はマイナスだと思っています。たとえ、チームが優勝しても、次も同じ方法で成功できるとは限りませんから。むしろ、一度壊すくらいの覚悟を持っています。今いる選手たちとともに新しいものをつくり出していきたいです」
熱血漢の指揮官が先頭に立ち、旗を振っていたのも今は昔。今年の12月で44歳を迎える佐藤監督は、苦笑しながら過去を振り返っていました。
「昔は良かれと思い、指導者の考えを選手に押し付けるような指導をしていた時期もありましたが、今は逆ですね。トレーニングの意図をしっかり説明し、本当に理解したときに背中を押すようにしています」
すべてを管理することは止めました。よく話すのは、時間のマネジメントについて。1日24時間をどのように使うかは選手次第。自らに考えさせて、自主性を促しています。監督としてはコンディションが悪ければ、試合に起用しません。評価は公平にしますが、出場機会まで平等ではないです。頑張っている選手の見極めはします。選手たちが自主的に取り組む過程で壁に当たったとしても、手を差し伸べずにあえて我慢します。
「失敗するのを待っているところもありますね。自分で壁を超える方法を知らない選手にはなってほしくないんです。こちらからヒントは出しますが、答えを教えることはしません。『オン・ザ・ピッチ』と『オフ・ザ・ピッチ』が共有しているのも高校の良いところです。設定したハードルをクリアできたときには、『よくやったな』と褒めます。そうすると、選手たちもちゃんと見てもらっていると思うものです」
管理はしませんが、放任ではありません。時代とともに選手へのアプローチが変わるなかでも、変わらない哲学もあります。
「すべてはチームのため、そして選手のためを思って、指導しています。選手の反応は必ず見ています。仮に結果が出たとしても、その選手にとって、本当に良かったのかどうか。『この指導で間違っていなかったのか』と自らに問いかけています」