プロ・実業団アスリート

世界のトップは自分のできることにこだわる(1 ⁄ 3)

Yuka Kurosaki
Soccer

目次

本場のアメリカ、ヨーロッパでプレーを続けている女子プロサッカー選手の黒崎優香選手にトップアスリートの視点から身体づくり、ケガ予防、リカバリーケアについて聞きました。後編はアメリカの大学からヨーロッパに羽ばたき、いまも挑戦を続けている話です。

白夜で寝られず、睡眠の重要性を知る

23歳の冬。アメリカのオクラホマ大学で最後のシーズンを終えると、人生の岐路に立たされました。最も望んでいた将来は、アメリカのNWSL(アメリカ女子サッカーリーグ)入りすること。ただ、現実は厳しかったと言います。インターナショナル(外国籍)枠でドラフトにかかるほど、個人、チーム成績ともに特別に目立っていたわけではありません。それでも、日本に戻る考えはなかったと言います。海外挑戦を続けるためにはどうすれば良いのか――。新たな進路を模索しているときでした。
「ちょうど良いタイミングでFCヴァッカー・インスブルック(オーストリア)からオファーが来たんです。まずはそこで経験を積もうと思って。日本代表歴もなく、何の実績もない選手が、いきなり名門のバルセロナ、レアル・マドリード(ともにスペイン)に移籍したいと言っても難しいですからね。一歩ずつステップアップして行こうと思いました」
2021年1月、アルプスに囲まれた街でプロとしての第一歩を踏み出しました。ヨーロッパでの目標は、最高峰のUEFAチャンピオンズリーグ(欧州サッカー連盟主催大陸選手権大会)に出場することでした。そして、オーストリア1部の女子ブンデスリーガでは1年目から8試合に出場し、4ゴールをマーク。その実績が認められて、半年後にはステップアップします。ノルウェーのアルナ・ビョルナーへ移籍。2021年9月からは北欧の地でプレーしました。リーグには170cmを超える長身の選手がズラリとそろい、大柄な選手ばかり。サッカースタイルも違いました。苦労したのは新しい環境でのコンディションの維持。悩まされたのは睡眠でした。
「夏は白夜で夜中の2時くらいまで明るいこともありました。冬は9時半頃に日が昇り、15時過ぎくらいから日が沈みます。うまく寝ることができなかったんです。それまで自分はどこでも寝られるタイプだと思っていましたが、違いましたね。時間の感覚が狂ってしまい、本当に身体がしんどくて……。最初はなかなかコンディションを上げることができませんでした」
状況を改善するために試行錯誤を繰り返しました。アイマスクの使用も一つの方法でした。効果的だったのは、自分に合った枕を見つけることでした。疲労回復に気を使うアスリートにとって、睡眠は重要事項の一つ。黒崎選手の場合、最低でも8時間は寝ます。疲労度に応じて、長いときは10時間近く眠ることもあります。質の良い睡眠の確保は、コンディションに直結してきます。

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