ケガを経験して変わったリカバリーケアの意識
それでは武方選手、森岩選手は日頃どのような身体のケアをしているのでしょうか。
「練習前は、全体で15分ほどストレッチを行う時間があります。高校入学前の練習環境では、ストレッチは各自で行い、メニューも決まっていなかったので、時間をかけて身体をケアする大切さは高校で学びました。また僕は全体のストレッチの前に、ポールなどをつかって個人的にストレッチをして、練習後は痛みのある部位をアイシングしています」(武方選手)
武方選手がそうしたリカバリーケアを意識的に行うようになったのは、中学時代にケガを経験してからだそうです。
「中学3年生の頃に腰椎分離症で腰に強い痛みが出てしまい、1ヶ月ほどテニスから遠ざかる経験をしました。今は大きな痛みはないですが、違和感が多少残っています。症状が出た原因には、身体のケア不足もあったと感じましたし、それからケガを未然に防ぐためのケアに取り組むようになりました」(武方選手)
森岩選手も複数のケガを経験しており、現在はポールなどを使ったストレッチやアイシングなどを行っているそうです。
「脚にシンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)という症状が出て、走るだけでも痛みが出ていた時期がありました。金子トレーナーからは脚への負担を軽減するために、お尻を中心に筋力をアップするトレーニング方法も教わり、そうしたトレーニングを実践してからは痛みも出にくくなりました」(森岩選手)
そして柳川高校男子テニス部では今年から低周波治療器も導入。有線のものと無線のものを併用し、金子トレーナーの助言のもと、部員たちが自由に使える状態です。
「大会が近い時期や大会期間中は出場選手を中心に使ってもらっています。疲れが溜まりやすい部位は個人個人で違うので、武方であれば腰や脚、森岩に関しては故障を持っていた脚とか肘を中心に使うように指示しています。『身体が重たい』『脚が重たい』といった選手の声や、筋肉の張り具合を確認しながら使っていますね」(金子トレーナー)
様々な学校の部活動をサポートしている金子トレーナーによると、「テニス以外の部活動でも、強豪校では低周波治療器などのケアの機器を導入しているところは複数ある」とのこと。低周波治療器には、ほかのリカバリーケアの方法と比較してどのようなメリットがあるのでしょうか。
「まず、移動中や食事中など、時間や場所を選ばずに手軽に使える点が一つ。それに関連して、使用に際しての選手への負担も少ないと感じます。またストレッチでは伸ばしきれない筋肉でも、低周波治療器を使用することでほぐせる部位はあります。柳川高校の選手たちはストレッチもしっかりしていますが、それだけで取り切れない疲労を取り、ケガのリスクも減らす目的で、低周波治療器は広く活用しています」(金子トレーナー)