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2010.11.10

vol.89 食後高血糖と隠れ糖尿病

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隠れ糖尿病とは

Vol.89 食後高血糖と隠れ糖尿病 「血糖値は正常」のはずなのに、じつは糖尿病やその予備軍だったら…。まさか、と思われるかもしれませんが、そうした例が増えています。
なぜ、こんなことが起こるのでしょうか。
健康診断では通常、空腹時血糖値によって糖尿病の可能性を判断します。空腹時血糖値は、前夜から10時間以上絶食した状態で測定します。その結果、血糖値が高めの場合、さらに詳しい検査(ブドウ糖負荷試験など)を受け、糖尿病かどうかの診断がおこなわれます。
空腹時血糖値の測定は、糖尿病の基本的な検査ですが、それだけでは把握できないタイプがあります。それが食後高血糖とよばれるものです。
食後高血糖はその名称のとおり、食事後の血糖値が異常に高くなる症状のことです。ときどき話題になるので、糖尿病と関連があることを知っている方も多いはず。でも、自分が食後高血糖なのかどうか、どんなリスクがあるのかについて、きちんと知っている方は少ないのではないでしょうか。
IDF(国際糖尿病連合)は2007年に発表したガイドラインのなかで、「食後血糖値の測定が糖尿病の早期発見のポイントである」と明記しています(※1)。その背景には、空腹時血糖値が正常でも、食後血糖値を調べると糖尿病だったというケースが多いことがあります。
一般的な健康診断では見逃されやすいため、「隠れ糖尿病」ともよばれる食後高血糖。予防のためにも、よく知っておきましょう。

(※1)IDF「食後高血糖の管理に関するガイドライン」2007年版による。

食後高血糖はなぜ悪いのか

食事をすると、だれでも血糖値が上昇します。インスリンの働きが正常だと上昇の程度はゆるやかで、まもなく正常値(110mg/dl未満)に戻ります。しかし、インスリンの分泌になんらかの異常があると、血糖値が急上昇し、その状態が長く続きます。目安として、食後2時間たったときの血糖値が140mg/dlを超える場合、食後高血糖とされます。
ところが初期の食後高血糖では、さらに時間がたつと血糖値が次第に下がり、正常な数値に戻るケースも少なくありません。すると、空腹時血糖値の測定では、「正常」と判定されてしまうのです(※2)。
正常値に戻るならいいのでは、と思われるかもしれません。しかし、問題は、食事のたびに異常な高血糖を示し、そうした状態をくり返すことにあります。
IDF(国際糖尿病連合)は、食後高血糖を放置していると、糖尿病になりやすいとしています。
また、食後高血糖が活性酸素の発生をうながし、血管に酸化ストレスを与え、動脈硬化を促進することも指摘しています。その結果、糖尿病の合併症、とくに心筋梗塞や脳卒中のリスクが高くなるとしています(※3)。
こうした指摘からもわかるように、食後血糖値を知ることは糖尿病の予防と早期発見、そして合併症などのリスクの軽減にもつながります。

(※2)日本糖尿病学会の診断基準(空腹時血糖値)では、糖尿病型は126mg/dl以上、正常型は110mg/dl未満、その中間は境界型(予備軍)とされています。

(※3)糖尿病の合併症には、細い血管に起こる網膜障害や神経障害などもありますが、食後高血糖の場合には太い血管への影響が大きく、そのため心筋梗塞などのリスクが高くなると考えられています。

食後高血糖かどうかを知る

自分が食後高血糖かどうかを知るには、いくつかの方法があります。血糖値が正常、あるいは少し高め程度で、糖尿病の治療は受けていない方の場合、健康診断のデータにHbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)という項目があれば、その数値をみてみましょう。
HbA1cは、血液中で赤血球がブドウ糖と結びついた量(%)を示すもので、検査前1~2カ月間の平均血糖値を示していて、最近は健康診断の血糖検査でも採用されるようになっています。
HbA1cの場合、4.3~5.8%が基準値とされ、5.8%を超えると要注意、6.5%を超えると糖尿病の可能性が高いとされます(※4)。と同時に、HbA1cは食後血糖値とも関連性が高いので、もし数値が高めなら食後高血糖の可能性もあるといえます。
食後高血糖かどうかを知るためのさらに確実な方法は、病院でブドウ糖負荷試験を受けることです。ブドウ糖(75g)を飲んでから2時間後の血糖値を調べるもので、糖尿病そのものの診断にもなります。
HbA1cが高めの方はもちろん、40歳以上で肥満気味、あるいは親や兄弟姉妹に糖尿病の方がいる場合などは、空腹時血糖値が正常であっても一度、ブドウ糖負荷試験を受けておくといいでしょう。
一方、糖尿病の治療を受けている方の場合は、血糖値自己測定という方法があります。これは小型の測定機器を使って、患者さん自身が自宅で食後の血糖値を測定するものです。
糖尿病の治療では近年、食後血糖値のコントロールが重視され、治療効果を知るために医師の判断で患者さんが自己測定をおこなうケースも増えています。関心がある方は、医師に相談してみましょう。

(※4)HbA1cの6.5%は、通常の血糖値に換算すると140mg/dl程度になります。ただし、換算方法によっては、もっと高い数値になることもあります。

食後高血糖を防ぐために

日常生活のなかで、食後高血糖を予防するにはどうしたらいいのでしょうか。その基本は食事と運動ですが、とくに次の2点((1)と(2))を重視しましょう。

(1)ゆっくり食べる

血糖値の改善にはもちろん食べすぎない(カロリーをとりすぎない)ことが大切ですが、食後高血糖の予防でとくに注意したいのはゆっくり食事をすること。というのも、早食いをするとインスリンの働きが追いつかず、食後血糖値が急上昇しやすいからです。
一般に早食いの方は、食事中ほとんど箸(はし)をおかない傾向がみられます。箸をもったまま次々と口に入れる食事法だと、どうしても早食いになってしまいます。
そこでまず、ひと口ごとにかならず箸をおくことを、意識的に心がけましょう。箸をおきながら食べる…その習慣をつけるだけで、食事時間を長くすることができます。
また、食事の内容も大切です。血糖値を上げやすいものとして、炭水化物(ご飯やパンなど)が知られていますが、反対に血糖値が上がりにくいのは野菜、きのこ、海藻などです。メニューに野菜などを多くとり入れ、さらに、そうした食べ物からゆっくり食べはじめることで(もちろん箸をおきながら)、血糖値の急激な上昇を防ぐことができます。

(2)食後に運動をする

適度の運動は、血糖値そのものを下げることに効果がありますが、食後高血糖の予防では運動をするタイミングも大切です。血糖値が上がりやすいのは食後30分~1時間くらいなので、そのタイミングで運動をはじめるのが効果的とされています。食休み(食後の休憩)のあと、軽い運動からはじめましょう。
とくに、夕食後は座ったままテレビを観たり、寝転がったりしていませんか。散歩やウォーキングに出かける、あるいは家の中で体操や家事をするなど、15分程度でもいいので食後の運動を習慣づけましょう。


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