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2011.08.10

vol.98 「食塩感受性高血圧」って、どんな高血圧?

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高血圧の2つのタイプ

Vol.98 「食塩感受性高血圧」って、どんな高血圧? 塩分をとりすぎると高血圧になりやすいことは、よく知られています。でも、なぜそうなるのか…その仕組みはいままで分かっていませんでした。
多くの方は、「塩分をとるとノドがかわくので、水分をたくさんとる。その結果、血液量が増えて血圧が上昇する」…そう考えているのではないでしょうか。それも間違いとはいえませんが、じつは塩分と高血圧にはもっと密接な関係があることが、最近になって日本の研究者(東京大学大学院・藤田敏郎教授ら)によって遺伝子レベルで解明され、注目されています(※1)。
また、それと関連して「食塩感受性高血圧」への関心も高まっています。食塩感受性高血圧とは、どんな高血圧なのでしょうか。
高血圧には、塩分の影響を受けやすいタイプ(食塩感受性高血圧)と、そうでないタイプ(食塩非感受性高血圧)とがあります。治療面からみると、塩分をひかえることで血圧が改善されやすいタイプと、そうでないタイプということもできます。
この2つのタイプの存在は以前から知られていて、その違いを解明するためのさまざまな調査や研究がおこなわれてきました。しかし、根幹ともいえる塩分過多による高血圧発症の仕組みは、「謎」のままだったのです。
今回の遺伝子レベルでの解明によって、食塩感受性高血圧の仕組みが明確になり、2つのタイプにおける発症の仕方の違いもわかってきました。今後、高血圧の予防や治療、降圧薬の開発などに役立てることが期待されています。
自分がどちらのタイプなのかを知って、効果的な高血圧の予防や治療に結びつけるため、2つのタイプの違いについて、また食塩感受性高血圧のリスクについて知っておきましょう。

(※1)東京大学大学院医学系研究科・東京大学医学部附属病院の藤田敏郎教授らのグループによる研究成果で、食塩や肥満などの後天的な環境因子の関与による高血圧発症の仕組みを解明するものとして、2011年4月に発表されました。

食塩感受性高血圧の仕組み

塩分を多くとると、なぜ血圧が上昇しやすいのでしょうか。
私たちのからだには、血液中の塩分(ナトリウム)濃度を一定に保つ機能が備わっています。ナトリウム濃度が低下すれば腎臓で再吸収し、反対に濃度が高くなれば腎臓から排出する機能です。
ところが食塩感受性タイプの人では、腎臓でのナトリウム排出機能に障害が生じやすいのです。塩分を多くとると、腎臓の交感神経の活動が促進され、それにともない塩分の排出をになう遺伝子の働きが抑制されることで、血液中のナトリウム濃度が上昇します。ナトリウムは水分と結びつきやすいため血液量が増え、その結果、血圧が上昇するのです(※2)。
つまり、「塩分過多がひきがねとなり、腎臓でナトリウムが再吸収されることで、高血圧になる」…それが食塩感受性高血圧の発症の簡単なメカニズムだといえるでしょう。
では、塩分の影響を受けにくい食塩非感受性タイプの場合は、どのようにして高血圧が発症するのでしょうか。
これについては国内外の最新研究などから、タンパク質の一種であるアンジオテンシンⅡが血管中にとりこまれ、その作用によって血管の収縮が生じ、その結果、高血圧になるという仕組みがほぼ解明されています(※3)。
同じ高血圧とはいっても、食塩感受性タイプは「ナトリウム再吸収」、食塩非感受性タイプは「血管収縮」と、発症の主要因には大きな違いがあるわけです。

(※2)藤田敏郎教授らが解明した、塩分過多による高血圧発症メカニズムを少し詳しく紹介すると、次のような機序(順序)になります。「塩分過多⇒腎臓の交感神経活動が亢進される⇒ノルアドレナリンの放出によりβ2アドレナリン作動性受容体が活性化される⇒β2アドレナリン作動性受容体の刺激を受けて遺伝子の発現にかかわるタンパク質ヒストンの働きが阻害される⇒塩分排出遺伝子の活性が抑制される⇒腎臓でのナトリウム排出機能が低下して再吸収が生じる⇒血液中のナトリウム濃度が上昇する⇒高血圧が発症する」

(※3)このタイプは、アンジオテンシンⅡ依存型高血圧とも呼ばれます。アンジオテンシンⅡは、強力な血管収縮作用をもつ物質で、腎臓などで産生され、細胞内に取り込まれます。高血圧治療薬の1つ、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬は、このアンジオテンシンⅡの働きを阻害し、血管の収縮による血圧上昇を防ぐ効果をもっています。

食塩感受性高血圧とリスク

食塩感受性高血圧には、まだ明確な定義や診断基準はありません。そのため数値などから、自分が食塩感受性タイプかどうかを知ることはできません。
しかし、高血圧の治療を受けている場合には、減塩によって顕著な血圧の改善がみられる方は、このタイプといえるでしょう。食事療法による効果が期待できるタイプともいえますが、同時にリスクも忘れるわけにはいきません。
食塩感受性高血圧の場合、心臓や血管などにかかる負担が大きく、食塩非感受性高血圧と比較すると、心臓病や脳血管障害を発症するリスクが2倍以上になることが指摘されています(※4)。
そのため一時的に血圧が改善されても、自分が塩分に影響されやすいことを忘れず、医師の指導をきちんと守り、油断せずに減塩を続けることが大切です。
一方、高血圧予備軍や一般の方の場合には、次のような条件がいくつか該当するときは、食塩感受性タイプの可能性があるので注意しましょう。

親の両方、またはいずれかが食塩感受性高血圧である(遺伝しやすいとされています)

肥満気味である(肥満やメタボリックシンドロームの人は、食塩感受性タイプになりやすい)

中高年である(一般に加齢にともない可能性が高くなります)

腎臓障害がみられる(腎臓の機能低下と関連しやすい)

外食など塩分の多い食事が続くと、血圧が上昇しやすい(毎日の食事内容を記録しながら、家庭血圧を継続的に測定することにより、影響度を知ることができます)

欧米の人と比較すると、日本人には食塩感受性高血圧が多いといわれます。まだ詳細なデータはありませんが、日本では高血圧患者の4割程度を占めると推定されています。
もし自分が食塩感受性タイプの可能性がある場合には、日ごろから塩分をひかえる食事を心がけ、高血圧の予防に努めましょう。

(※4)国立循環器研究センター(腎臓内科)木村玄次郎氏らの調査による。この調査では、食塩感受性の判定基準について、1週間の低食塩食(1日0.5グラム)のあと、1週間の高食塩食(1日14.5グラム)を続けた結果、血圧の変化(上昇)が10%以上みられたものとしています。ただし、これは医師の厳正な指導の下でおこなわれた調査です。極端な減塩をおこなうと、気力減退や疲労などの症状が出やすいので、自己判断でまねたりせず、あくまでも参考数値と考えてください。


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